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リラ・ペンシル②


「それで……そのヒロインと主人公は最終的に親の反対を押し切って駆け落ちするのよ。その駆け落ちでハッピーエンドだと思うじゃない?」


「ハッピーエンドじゃないと言うの……!?ここまで来て!?……はっ!!!って事はバットエンドなのね……!?」


「それはねぇ……」


ゴクっと固唾をのむ音がその場の空気を支配する中、何とも気の抜けた返事が別方向から返ってきた。


「その主人公、二股かけてたんだよねぇ。そんでヒロインの方が浮気相手だったっていうか……結局女の子二人に崖から落とされて、主人公が死んじゃうっていう話。二股かけてた主人公が悪いんだろうけど、崖から落とすほどの事かなぁぁぁ???」


なぜこんな状況に至っているかと言うと、その後本好きという共通点が判明し意気投合したリラとサチが仲良くなってしまったからなのである。

しかも話題になっているのは巷で流行りの恋愛小説について。

オビは二人の勢いに押され、その場のノリというものについていけていなかった。


そしてどこから持ってきたのか、書架の前には可愛らしい意匠の花が彫られたイスがあり、丸テーブルを囲んで3人で円卓会議さながらの真剣さで本について語るというシュールな構図。

※女子会に男一人が混ざっているという居心地の悪さ。オビは内心早く席を立ちたい気持ちでいっぱいだった。


「何言ってるのよ!二股なんてサイテーじゃないの!オビはまるで女の子の気持ちが理解出来ないのね!ね、リラ」


「そうねサチ。どうかヒロインの立場になって考えてみてほしい。故郷を離れた先で愛した男性に裏切られたのよ?女の敵じゃない!主人公の男」


「ええぇ……俺が悪者ぉ???じゃー俺だったら何回も女の子に刺されて死んでるかも……こわぁ〜……」


オビは震えた。

ヤバい。身に覚えがありすぎる!と。


「ん〜でもさぁ……そろそろ現状についてまとめてほしいかなぁなんて……」


オビが飽きるのも無理はない。

というのもあれからずっとトークに花を咲かせていたリラとサチの話は止まらず、3時間は喋りっぱなしだったのだ。それを一言の邪魔をせず、じっと耐えていたオビはかなり耐えた方ではないだろうか?

その女子トークに無粋にも口を挟んだのは、このトークが終わりそうになかったからである。


「あら。これからが本番だったのに……まぁ、いいでしょう。では名残惜しいけれど、話を戻しましょう」


「ん。そうしてぇ〜〜……」


「んじゃ、順番すっ飛ばしちゃったようだから私から自己紹介からでいいかな?」


●リラ・ペンシル

今年、中央図書館に就職したばかりの新人司書。

本がめちゃくちゃ好きで業務中にこっそり本を読み漁り、業務そっちのけで仕事をサボっていたためマック・レガー館長に呼び出され解雇通知をもらいそうになった。

乱入してきたキュティ・ガーナーによって禁書庫の担当を代わりに受け持つ事が決まり、クビの皮一枚繋がったリラ。

次に同じ失態をすれば館長に本当にクビを切られそうなので、真面目に働きたいと思います。


●サチ

中央図書館の禁書庫に棲む大精霊。

だいぶ前から図書館に入り浸っているので、最古参。館長とは旧知の中。

本と本の隙間で寝る時間が好きで、一度寝ちゃうと次に起きるまでが長くなる傾向にある。

精霊は余程の事が無い限り、人前に姿を現す事はないと文献に記されているが、実際は人間側の魔力量が足りていないか精霊ゆかりの者でないから見えないというだけ。

少し人見知りな所もあるが、打ち解けてしまえばもうお友達も同然。無害な大精霊ちゃんです。


●オビ・クレバー

禁書庫の担当になって7年目のベテラン(?)先輩司書。

ここ最近は仮眠室でうっかり寝過ぎて、一カ月と一週間ほど仕事を放棄していた。

要領よく仕事はこなすタイプだけれど、見た目通りでちょっとチャラい。女の子が大好きでよく図書館を抜け出し、下町などに遊びに出掛けている事が多い。

館長にはバレているが、仕事も出来るので黙認されている。

サチと早速仲良くなったリラには驚いたが、俺とも仲良くしてくれると嬉しいな。無害(?)な先輩だヨ!


と、

この場にいる全員の自己紹介が終わり、各々考え込む。

何せ禁書庫に追加人員が寄越されるなんて、創設依頼無かった事。

(実際はリラが初ではなく、キュティが前任者であったが、ここ一カ月は図書館を彷徨っていただけで仕事をしていないからノーカウント)サチ談


「ん〜、館長から仕事内容については聞いてるぅ?リラちゃん」


しばらく黙り込んでいた面々だったが、口火を切ったのはオビからだった。


「いや……あっ、いいえ……行けば分かるとだけ聞かされて来ました。最初は禁書庫内の掃除から始めるべしとだけ、言われましたが……」


「そっかぁ〜〜……あ〜〜……館長丸投げかぁ〜〜……ひでぇ〜〜……。あ、そうそう、俺先輩だけど、こんな感じだからさ、タメ口でいいよぉ。その方が俺も楽だし〜〜」


「あ、そう……じゃあそうさせてもらうわ」


「って切り替え早ぁぁ〜〜、リラちゃん大物……???」


一人が話し始めるとどんどん話が進んでいった。


「私もさっき禁書庫の担当者がそっちに向かったから。としか聞かされていないわ……マックったら、私たちが困るのを分かっててやってんのかしら?今度会ったら顔に落書きしてやるんだら……」


オビとサチは「あの館長だからなぁ〜」と諦めた顔をして、上の書庫とは異なる常識の通用しない禁書庫内のルールについて語ってくれた。




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