第3話:たった20年前のことよ!
更新〜
◇
ふと、側に誰かいると感じたので瞼を開く。まず最初に、『知らない天井だ…』まさか自分がこの台詞を使う日が来るとは思わなかった。そんなどこか他人事の様な感想を思い浮かべながら右を向くと…倒れる前に見た綺麗なエルフさんがいた。
エルフさんと視線が合うと彼女はただでさえ大きな目を更に大きくして硬直した。
「おはっ、よっ。ゴホッ。エルフ、さん」
思ったよりもちゃんと声が出なかった。かなり喉が渇いているみたいだ。生唾でも飲み込んで早く水を恵んでもらおうと考えているとエルフさんは慌てた様子で部屋の扉を開けて「あの子が目を覚ましたわ!公爵達とダグナー先生を呼んできて!」と叫んでいた。
その叫びの後、部屋の外が少し騒がしくなった気がしたがエルフさんはベッドの横まで戻ってきてもう1度こちらを見てきたので見つめ返していると安心したのを表す様に大きく息を吸ってからため息をしつつ座り込んだ。
「良かった〜…。あなた3日も目を覚まさなかったのよ?あっ、倒れる前のこと覚えてるかしら?」
「みっか、も?ゴホッ。ごめん、な、さい。まずはおみずが、ほしっ、いっ」
「あっ、そうよね!この子に飲み水をお願い!」
綺麗なエルフさんが誰もいない右上を見ながらお願いすると目の前に大きな水の玉が現れた。そこから小さい水の玉が分裂し、俺の口の方へと向かってきた。凄い。これが魔法か。…俺には縁が無いけどね。口を開けて迎え入れると舌に触れた途端弾ける様に水が口の中に広がった。
「ゴクッ。…ふぅ。おいしい。ありがとう、エルフさん。いまのは、なに?」
「今のは水の精霊の力。滅多に味わえない極上のお水よ!この子達があなたを助ける様に私に伝えてきたの!」
「そうなんだ。みえないけど、ありがとう、せいれいさん。ありがとう、きれいなエルフさん」
「ふふっ♪自己紹介がまだだったわね?私は…、長いからティアで良いわよ♪」
「よろしく。ティアさん。おれは、……」
「…どうしたの?」
「おもい、だせないんだよ、ね…」
「えっ?それって『コンコン』「失礼するよ」あっ!ダグナー先生!」
タイミングが良いのか悪いのか白衣を着た二十代後半くらいの男性が入ってきた。どうやら医者らしい。
先生がベッドまで来る間にティアさんが俺を端まで移動させて上半身を起こして座らせてくれた。…まだ身体が上手く動かせないみたいだ。
目に光を当てたりや口の中を覗いたり身体の色んなところを動かしたり手で触ったり小さい木の棒みたいなので軽く叩いたりしながら頷いたりして最後に一息つくと「峠は越えたみたいだね。身体も栄養面以外は大丈夫そうだ」と言いその言葉にホッとしているとティアさんの方が嬉しそうに喜んでくれた。
先生にお礼を伝えていると部屋の扉が開いてぞろぞろと装飾の凝った服を着た人達が入ってきた。
「ダグナー先生、どうでしたか?」
「公爵閣下。身体に異常は無いので少しずつ食べる量と運動をしていけば元気になるかと」
「ははっ、そうか!それは良かったわい!これでこのエルフに殺されなくて済むわ!!ワッハッハッハッハ!!」
「ちょっと公爵?人を道理を弁えない野蛮人みたいに言わないでちょうだい!」
「まぁこのエルフのことは置いておくとして「ちょっと!?」良かったな、助かって」
「このような、じょうたいで、しつれいします。こうしゃくさまの、ごこういの、おかげで、ぶじ、いきのびることが、できました。まことに、ありがとう、ございます」
「「「「「「「「……」」」」」」」」
「…ヴァネッサ、黒髪で王家の血を引く者なんていたか?」
「………いませんわね。交易相手の砂漠の国の者達なら黒髪はいますがあちらは日差しが強い大陸なのでここまで肌が白いのは有り得ないかと」
「もしかして向こうの王家の不て「あなた?それ以上はダメよ?」はい」
「公爵、人払いを頼めるかしら?」
「お前さんは心当たりがあるのか?」
「確証はないけど!でも念のため」
「…分かった。全員外で待っていてくれ。問題無さそうなら後で伝える」
公爵の一言でメイドも執事も家族も素直に部屋から出ていった。残されたのは俺とティアさんと公爵のみだ。
「それで?」
「えぇ。この子は【精霊の愛し子】の可能性があるわ」
「…なにぃ?それは誠か?」
「さっきも言ったけれど確証があるわけじゃないわ。でも私がこの子を助けたのは契約している精霊達にお願いされたからなのよ。あんなに慌ててたのは初めてだったから大雨の中ついて行ったら…」
「この子が倒れていたわけか。…お主、名前は?」
「…わかりません」
「なに?」
「さっき自己紹介した時も分からないって言ってたわね?記憶喪失かしら?」
「ちがう。そうしつじゃなくて、けされた」
「えっ…」
「誰に?」
「めがみに」
「「っ!?」」
「【穢れた魂】か!ティア!お前はなんて者を!!」
「待って公爵。落ち着いて聴いてほしいの」
「これが落ち着いていられるか!?この者を匿えば教会に目をつけられるどころか殺されるぞ!?」
「落ち着いて公爵。【穢れた魂】の条件は?」
「んん?確か〜、女神が不浄なる存在として祝福も無く早く死ぬのを願い、死ぬことによって浄化される存在、だったか?」
「そう言い伝えられてるわね。それと人間界で確認されている共通点として【記憶を一部消されている】【死にかけの状態でこの世界に来る】残りは?」
「そして【スキルが無い】だろう?…もしかして」
「えぇ。この子はスキルを持ってる可能性がある」
「どっちにしろ前代未聞じゃねぇか!聞いたこと無いぞそんなもの!?」
「でもこの子最後の倒れてそのまま死ぬ瞬間に言ってたことがあるのよ。…あなたは覚えてる?」
「ううん。でも、きになってたことを、いったのと、クソったれってのは、おもってた、きがする」
「クソったれ…。なんかこんな小さい子が言うと変な感じするわね」
「それでお前さんは自分で何を言ったのか覚えているのか?」
「…おぼえてないです」
「ダメじゃないか!」
「ねぇ、試しに私の目をしっかり見てくれない?最後の瞬間に目が合ってたのよ」
「…わかった。………ティアさん、きれいで、はずかしい」
「ガキが一丁前に照れてんじゃねぇ!!状況分かってんのか!?」
「あっ…、ちょっとまって」
「…何か見えた?教えてくれる?」
「おい、ティア。何を「しっ!黙って見てて」…おう」
最初は照れて目を反らしてしまったが、その後ずっと見続けると目の前に文字が浮かんできた。
武器適性:弓C(限界値C)・片手剣D(限界値D)両手剣G(限界値G)双剣E(限界値A※ただし右が大きめで左が小さめの場合)
「ティアさんって、かたてけんも、つかえる?」
「っ!えぇ。昔、故郷で訓練させられたわ」
「もしかして、りょうてけんも、つかったことある?うまくなさそうだけど?」
「うっ。うん、重すぎて扱えなかったのよ」
「お、おい。まさか…」
「うん。恐らくこの子には人の武器適性を見定める力があるわ」
「……滅茶苦茶凄いじゃないか?」
「滅茶苦茶どころじゃないレベルで凄いわよ。だってその人にとって1番強くなれる武器が見るだけで分かるんだもの」
「こんなに凄いスキルは祝福されてないと有り得ないだろ…」
「でしょ?だから【穢れた魂】って断定するにはまだ早いのよ」
「そういえばね?このせかいに、おちてくるときに、クソめがみとはちがう、やさしそうなこえに、あやまられて、あたたかいものに、つつまれたよ?」
「「……」…ね?」
「いや、ね?ってティアも知らんかっただろう?」
「そうね!でもこれで分かったわ!この子は確実に祝福もされている。だから公爵にこの子の保護を依頼します。それと前に言ってたスカウトの話を期間限定で受けます」
「交換条件ってか?一度断っておいてそう都合よく乗るわけが「良いのかしら?」あん?」
「保護してくれないならこの子を連れて私は別の場所に行きます。それが違う国だった場合、この国はどうなるのかしらね?」
「くっ!?このっ!王家の血筋を持つ公爵家当主を脅すとはな!!分かったよ畜生!!こき使ってやるからなぁ!?」
「ふふっ♪そう簡単に言うこと聞くわけないじゃない♪なんてったって変わり者のエルフですから♪」
「まだ根に持ってるのか!?もう20年も前のことだぞ!?」
「たった20年前のことよ!」
「ふふっ、なか、いいね?」
「「よくない!」わよ!!」
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