第16話:このせかいに、おこってる
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ということで俺達はタレの実を扱っている店に来た。分類としては野菜屋さんで、お店にいるおばちゃんに聞くとどうやらタレの実は海沿いで育つヤシの実みたいな感じっぽい。
バスケットボール並みの大きさで1つの木に1~6個くらい実り、木の寿命が無くなるまで何度も実るらしいが木に近い方のみ取るのだとか。この実は海に向けて実が付き、海側が丸い実でしょっぱくなり、その後ろに出来る実は少し凹んでる状態で育ち甘めになるみたい。
肉に合うのは後ろの実で適度の潮風を浴びて育つと甘しょっぱくなるのだとか。そのため海側の潮風に当たりっぱなしのしょっぱい実は基本的に使われることが無く、捨てられるらしい。
俺はここでちょっとした予感がある。そう!もしかして捨てられている方が醤油みたいな味なのではないかと!おばちゃんに1つの木に実ったタレの実全てを味見してみたいから売り先を教えてもらえないかと聞くとレベッカさんがいるし大丈夫だろうと悩んでいたが教えてくれた。
少し距離があるらしいので1度お屋敷に戻り、馬車に乗って向かう。育てている人の家に向かい、到着すると公爵家の馬車を見たご家族一同、作業を投げ出し慌てて馬車の前に跪いた。レベッカさんはそれを見て慌てて馬車を飛び出して立ち上がらせる。何度か確認をした上でようやく立ち上がってくれた。
「それで公爵家のお嬢様方がこのような人波外れた家にどのようなご用件で…?」
「実はウチの弟、になる予定のこの子がタレの実に興味を持ってどうやら1本の木に実る全部をほしいみたいで野菜屋さんのおばちゃんに無理を言って教えてもらったんですよ!」
「はぁ…?公爵家の皆様には良い統治をしていただいておりますのでこんなんで良ければ差し上げますが…、海側に実ったやつはしょっぱいのであまりおすすめ出来ませんがよろしいので?」
「うん。あじみしてみたいの」
「分かりました!すぐに用意しますんでお待ちください!母さん、あの木にしよう」
旦那さんが指差した木を奥さんが鎌を口に咥えながら登っていき、下にいる旦那さんに声をかけて切り始め、落ちてきた実を旦那さんが衝撃を殺すようにジャンプしながらお腹で受け止めていた。これを全部で6回繰り返してその間に子供達がそれを軽く布で拭いて馬車の荷台に乗せてくれた。
レベッカさんが金貨1枚渡したら旦那さんは目ん玉飛び出しそうになるくらいビックリしており、受け取った奥さんは固まっていた。奥さんの手を両手で包みながら2人に対してレベッカさんは「無理を叶えてもらった礼と感謝の気持ちだ。あなた方の仕事は沢山の人の笑顔につながっているから誇りを持って続けてくれると嬉しい」と伝えると感動したのか泣きながら何度もお礼を言っていた。挨拶をしてその場を去り、屋敷に戻ってそのまま厨房に連れて行ってもらう。
丁度手が空いていた料理長が自らそれぞれの実から少しずつ小皿にタレを出してもらい、順番に味見をすることに。レベッカさんにだっこされながらまずはクレアさんが持っている透明なやつから。透明なやつも稀にあるって言ってたもんね。ペロリ。
「…………これおすだ!」
「オス、ですか?」
「うん。これ、さかなにあうよ」
「そうなの!?え!?ちょっと誰かー!タレの実を育ててる方達に伝令おねがーい!!」
「レベッカ様。全ての味見が終わってからの方がよろしいのでは?」
「た、確かに!」
「さしみってある?」
「あるよ!ちゃんと内臓を取り除いてるしこの辺の魚は魔物がいる環境に適応しているせいか逞しくて寄生虫とかいないんだよね。確認はちゃんとするように徹底してるし、何かあったらその店の責任になるからそういうのに当たった人はいないのよね」
「いいね。あと、おこめってある?」
「お米?あるよ?」
「あるんだ!?いままででたことないよね!?」
「うん。あんまり美味しくないから」
「………え?」
先程の豚の角煮の話を覚えているだろうか?そう。この世界の料理はとりあえず全て一緒にブチ込んで茹でまくるものが多いということを!つまりそういうことだ!べちゃべちゃ過ぎるお粥みたいな食べ方しかないらしい…。この世界の雑な料理に対して思わずレベッカさんの腕をポカポカと叩く。
「ど、どうしたのリヒト?痛くないけど!どうしたの!」
「このせかいに、おこってる」
「あらあら、ふふっ♪それまた壮大ね♪」
「ティアさん。おいしいおこめたべたことある?」
「え?う~ん、無いかも?べちょべちょだったり嵩増しに入ってる印象かな?」
「『ポカポカポカ』いたっ!くないけど!落ち着いてリヒト!」
「ふー!…つぎのやつ!」
「ん。これも前から出たやつらしい」
ノーマさんに差し出された小皿は明るい茶色の液体だった。ペロリ。
「……え、みそだ!」
「みそ?クラブの脳みそみたいな?あれ癖あるのよね~」
「これもすててんの?」
「う、うん。しょっぱいし色もちょっとアレみたいで…『ポカポカポカ』あっ、ごめんって!」
「これもすごくおいしいのに…」
「このみそ?は何に合うの?」
「これだけでスープになるしほかにもおにくにからめてもおいしい。わかめとかもずくとかのかいそうといっしょのスープとかやさいとおにくをいれたスープもおいしい」
「え?…これが?『ポカポカポカ!』ごめんってば!さっきより強くなった気がするけど全然痛くない!」
「じゃあこれは?気になってたタレの実の前列はこれで最後だけど…」
ティアさんに差し出された小皿にはパッと見醤油で匂いもちょっと酸っぱい気がする?期待値を上げながらペロリ。
「……………なんで」
「ん?どうしたの?」
「なんですきやきのたれなのー!!」
「わっ!今までで1番声が出たわね!それですきやきって?」
「うすいぎゅうにくとやさいといっしょにいれるとおいしいんだけどちがうじゃん!ながれてきにしょうゆじゃん!これあまいじゃん!」
「醤油がほしかったの?あれはダンジョンでしか出てこないわよ?」
「あるの…?ダンジョン、ドロップ?」
「そうだよ?確か公爵家の領地内にあるダンジョンでも出たはずだけど」
「それたかい?」
「価値が無さ過ぎて安いわね。酸っぱすぎて喉渇くしわざわざ拾って帰る程の物じゃないから」
「んー!!!」
「『ポカポカポカポカ!!』あー!リヒトが今までで1番怒ってる気がする!部下に取ってこさせようか?」
「おねがいしてもいい?むりしないでほしいからけがするくらいならがまんするけど…」
「低層で手に入るから平気よ。そこまで軟弱な兵士はいないわ。ペトラ!すぐに醤油の実を腐らない範囲で取ってこさせて」
「畏まりました。ベテラン2人と新人4人の計6名選出します」
「うーん。きょうはかいせんどんはたべれないか~」
「残念ね~」
「ちがうやつたのんでもいい?ものがあればだけど」
「いいわよ?冷氷室も見る?」
「うん」
厨房の隣の倉庫部屋に地下へと向かう階段がありみんなで移動した。勿論俺はレベッカさんにだっこしてもらって、ではあるが。
話を考えているだけで普段どれだけ楽に食事できているのかを再確認しました。
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