第15話:ティアさん待って!!落ち着いて!!
気候の変化ががが…
◇
席を外していたレベッカさんがお皿にとても小さく切った果物と普通に切った果物を乗せて持ってきてくれた。同時にクレアさんとノーマさんが戻ってきてクレアさんが寝ている俺に食べさせてくれることに。俺用に切った小さいサイズの物を一口。食感がリンゴなのに味はミカンだ…。美味しいけど違和感が拭えない…。名前はリカンと言うらしい。
リカンを食べながら先程のことを話す。ティアさんの契約精霊がいなくなったと伝えると流石にみんな驚いていた。本人は新しい戦い方の訓練に集中出来るからと楽しそうに話しているが発端の身としては申し訳がない。とはいえ今の俺には1人で移動することも出来ない。…将来の自分に任せよう。タイミングがあれば感謝の気持ちと共に何か出来る時がくるさ。たぶん。
そう思い過ごすこと早1ヶ月。レベッカさんのお屋敷で世話されながら少しずつ食べる量を増やしていると肉付きが良くなったので自分で歩く練習を始めた。と言ってもまだ細めで骨が見えなくなってきた程度なのであまり長く動けないが。
最初の頃は何度も転んではティアさんやメイドの2人に支えられ、時には顔から豪快に転び涙を流したこともあった。…大泣きじゃないよ?ホントだよ?我慢したもん。
しかし我慢しても涙は止まらない。初めて涙を流した時はむしろ他のみんなの方が凄かった。
「こんな時に何故光の精霊がいぬぁいんだぁ!?ちょっと連れ戻しに行ってくる!!」
「ティアさん待って!!落ち着いて!!」
「あああああっ!!リ、リヒトぼ、坊ちゃまが涙を!?」
「落ち着いてクレア。子供は転ぶもの。それに頑張って耐えてる」
「は〜い♪ばあばが診てあげるからねぇ〜♪うん〜♪ぶつけただけだから大丈夫!泣くの我慢して偉い偉い〜♪」
「先生。リヒト坊ちゃまが可愛いのは理解致しますが落ち着いてください。あなたの孫ではありません」
「パトラさん?あなたも私と同じ年齢ならこの年くらいの子供を可愛いがるのは当たり前でしょ?」
「分かります。しかし先生。急に性格が変わってリヒト坊ちゃまがビックリしていますよ?」
「…あら本当。とにかく我慢して偉いわね〜♪」
「…はぁ。皆様、落ち着いてください」
こんな感じだった。そんなこともありつつ、無事歩けようになった!…まだ誰かの手を繋いでではあるけどね!
歩けるようになった俺に快気、はしてないが快気祝いに何か欲しいものややりたいことはないかと聞かれたので市場に行きたいと強請り、行けることになった。流石にまだ人混みを歩くのは危険なのでレベッカさんに抱えられながら移動することに。なお、レベッカさん曰く「確かに少し重くなったけどまだまだ軽いよ?もっと食べて寝て運動しなきゃね!」だそうだ。
そんなわけでレベッカさんに抱っこされながら市場を歩いているとそこら中の人達から声をかけられる。レベッカさんとほぼ同じ位置に顔があるのでみんなに良い笑顔を向けられているのが分かる。
「おっ!?最近見ねぇと思ってたら遂にレベッカ様にご子息が!?」
「違うよ!新しい弟だよ!!」
「なにぃ!?ヴァネッサ夫人また子供産んだのか!?これはお祝いしなきゃな!?」
「それも違うわよ?養子で弟になる予定なの」
「うおっ!?こっちには美人と名高いエルフの別嬪さんまでいるじゃねぇか!!」
「ふふん♪まぁ私はエルフの中でもかなり綺麗と言われていたから当然ね!!」
「はははっ!納得だなそれは!」
「レベッカ様ー!あそぼー!」
「また今度ね!ちゃんと良い子にしてる?」
「うん!ちゃんとシスターの言うこと聞いてるよ!」
「それならまたご馳走を教会に贈っておくからみんなで仲良く分けるのよ?」
「わーい!!今日はご馳走だ!みんなに知らせてくる!ありがとうレベッカ様ー!!」
「気をつけて帰るんだぞー!」
「レベッカ様!見てってくださいよ!」
「お?今日は大漁みたいだな?」
「おかげさまでこの通りでさぁ!海の魔物も間引いてくれてますし、巡回の兵士も多いしで我々は安心して漁業が出来てますよ!どうですか?この魚なんて新鮮で良いと思いますが!?」
「あんたんところの魚は手荷物になるでしょ!レベッカ様!こちらのパンは丁度今出来上がった物です!良かったら食べていってくださいな!」
「それならウチの串焼きを食べてってくだせぇ!!1番美味しいランニングダックのプリプリの太腿だ!!」
「みんなありがとう!今日は弟の気になる物を見に来たんだ。また今度いただくよ」
「絶対来てくださいよ!?そう言って全然来ないんだから!!」
「分かった分かった。またすぐに来るさ」
「ねぇねぇレベッカさん」
「お?気になる物でも見つけた?」
「くしやきのおじさんのはなしききたい」
「お?串焼きが気になるのか。大将!ちょっといい?」
「あいよ!もしかして坊っちゃん!ウチの串焼きを食べてくれるのかい?」
「もうすこしおおきくなったらたべたいからおじさん、はんじょうさせてね」
「ははっ!そりゃ頑張らないといけないな!任せとけ!坊っちゃんが大きくなってもここで元気に売り続けるさ!」
「あのね、ききたいことあるの」
「おう!なんでも聞いてくんねぇ!」
「このタレってどうやって作ってるの?」
「これかい?これはタレの実ってのがあって毎朝ウチの串焼きに合う味を選んでんのさ!それを複数混ぜて味を整えてんだ!」
「タレのみ?えらんでるってことはあじがまいかいちがう?」
「微妙にな!でもそこはおじさんの優れた目利きと舌でほとんど同じなのさ!」
「なるほど。おじさんはてんさいだね」
「え?そ、そうかい?おじさん、照れるなぁ」
「クソじじいが照れてんじゃないよ!気持ち悪い!!」
「うるせぇ!ババァ!!てめぇだって若い兄ちゃんに褒められたら無駄にしなって気持ち悪いんだよ!!」
「なんだとぉ!?ウチの女房が気持ち悪いってのか!?」
「お前にはピッタリだよ!!」
「へへっ!まぁな!」
「けっ!それで坊っちゃん、聞きたいのはそれだけかい?」
「タレのみってぜんぶこういうくろちゃいろ?」
「ん?そうだな。稀に透明の酸っぱいやつが混じったり甘ったるいやつが混じったりしてるらしいが基本的に甘辛い感じだな!」
「おじさん、いいセンスしてる。ありがとう」
「おう!坊っちゃんが大きくなるのを楽しみにしてるぜ!」
屋台から離れ、広場にある果汁100%のジュースを売っているお店の飲み物を頼み、休みながらみんなで飲む。俺のはリカンだ。いただきます。…濃厚だ。
「それでリヒト。さっきの屋台のおじさんに熱心に聞いてたように見えたけどタレの実がどうかしたの?」
「ぼくがしってるおいしいものがたべれるかもしれないとおもって」
「「ガタッ」」
「レベッカ様。ティア様。はしたないですよ」
「しかしクレア!お前も覚えているだろう!?本邸で美味しそうなぱんけーき?とやらの話しをされたのを!?話しだけでも美味しそうなんだぞ!?」
「パンケーキとはちがっておにくとかにあうやつだよ?」
「「ガタッ」」
「ノーマ。それにレベッカお嬢様は2回目です」
「だってクレア!肉だって!」
「あっ。そういえば前にレベッカの屋敷でタレの実を使った料理が出た時にリヒト、質問していたわよね?」
「よくおぼえてるね?」
「ふふん♪まぁねっ」
そう。実は前に夕食で同じ匂いを嗅いだことがあるのだ。その時の料理はタレの実で煮込んだオーク肉。1番近い料理名で言うと豚の角煮だ。横から見ても美味しそうだったので分けてもらったのだが、本当にタレにぶち込んだだけの肉だったのだ。惜しい!あまりにも惜しい!!味濃いし!!臭みと苦味があって勿体ない!!
イメージとしては鍋に豚肉を入れてソース等を鍋の半分までドバドバ入れて煮込むだけらしい。話しを聞いて両手で顔を覆った俺の気持ちは分かるだろう?入れすぎだろって…。しかも灰汁を捨てないのである。苦くなるからそれ以上に濃い味で打ち消して食べるのが普通らしい。かなり昔は香辛料とかそういう使い方をされていたらしいけど!限度があると思います!
俺のスープは野菜がメインで肉は数切れのみだったのでまだマシであったがあの苦味がキツい。子供の舌のせいか苦味が強く感じるのだ。だがこっちの人からしたらあの味の濃さや苦さが当たり前らしい。
しかし!まだ少量ではあるがそろそろみんなと同じものを食べることになった以上我慢出来ません!リヒト、いきます!
リヒト君、我慢の限界




