第11話:あれ?おかしいな?部屋の空気が冷たくなったような?
今日も投稿〜
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みんなで頭を悩ましていると訓練場の入口に1人のメイドがやってきた。それを見てアンナさんが「皆様。食事の用意が出来たようです」と告げなからヴァネッサ夫人の席の後ろに回って立てるようにタイミングを合わせて椅子を引いていた。他のメンバーは自分でさっさと立ち上がり、俺はまた夫人に抱き上げられで移動することに。
どうしてメイドを見ただけで分かったのか?と聞いてみると全員の担当や名前と顔を把握しているのは当たり前と言っていた。流石メイド長。夫人の付き人をしながらメイド長としての仕事が出来るのも納得だ。
食事をする部屋に入ると、所謂お誕生日席に閣下。右にヴァネッサ夫人、レベッカさん、ティアさん。左にアレクさん、クリスさん、そして俺が座ることになった。まだ1人で食事は出来ないので側にはクリスさんとノーマさんがいて前掛けを着けられた。
全員が席に着くと恐らく厨房と繋がっているであろう扉の無い出入り口の隣の部屋から食事を持ったメイド達が7人出てきた。それぞれの前に料理を置いて足早に厨房部屋の方に戻っていった。
お皿を覗き込むと今朝よりも具の量は増えてはいるがまだまだほぼ水のようなスープ。少しガッカリしていると目の前にパンが置かれた。ビックリしているとどうやら食事はまだ運ばれている最中だったようだ。
今度こそ配膳が終わったみたいで閣下が咳払いをしてから皆を見渡して話し始める。
「それじゃあみんな。食事を始めよう」
「いただきます」「大地の恵みに感謝します」
「リヒト。イタダキマスって何?」
「え?しょくじをするまえのあいさつ。ティアさんのは?」
「私もそうよ?食材って大地の恵みが無ければ食べれないでしょ?森に住んでいるエルフ達は恵みを分けて貰えることに感謝してから食べるのよ。本当はもっと長いんだけどね?他の種族がいると気を使わせたり食事が冷めちゃうから今のは省略パターンよ」
「…お前さんがちゃんと言っているのは特別高い酒が出た時しか見たことないんだが?」
「それに酔っ払いながらだったわよね?結局途中で飲みながら寝てたし」
「だって感謝の言葉って長いのよ?せっかくの美味しいご飯が冷めちゃうじゃない!?」
「リヒト、感謝の言葉よりも食い気を優先するエルフは一般的には変わり者だ。覚えておけ」
「わかった」
「ちょっと!適当なこと教えないで!」
「それでリヒトちゃんの〜、イタダキ、マス?にはどんな意味があるの?」
「え?え〜っとなんだっけな?ぜんぶにかんしゃ?」
「ぜんぶ?そんなにたくさんあるの?」
「ごはんをたべれることをかんしゃ。りょうりをつくってくれたひとにかんしゃ。はこんでくれたひとにかんしゃ。おかねをだしてくれたひとにかんしゃ。しょくざいをそだててくれたひとにかんしゃ。このしょくじのためにいのちをささげられたどうしょくぶつへのかんしゃ。みたいにこのめのまえにあるしょくじをたべるためにかかわったすべてにかんしゃ。ってかんじだったきがする…。ふかいいみをしらずにかんれいにしたがっていってるだけのひともいればいわないでたべるひともいたけどね?ぼくもふかくはしらないし」
「そ、そんなに沢山の感謝がその、【イタダキマス】に…?」
「なんか今の話を聞いた後だといつも通りの食事のはずなのにどこか高尚な物を食べている気分にならないかクリス」
「そうだね兄さん。なんだかいつもより背筋が伸びる気がするよ」
「あれ?ナイフってどう使うんだっけ?」
「落ち着きなさいレベッカ」
「もともとはいのちをいただくっていみあいでいただきます。っていってたんだっけ?なんかいろいろないみあるらしいけど、しょうじきなにがただしいかわからない」
「でも良いわね!イタダキマス!同族がいない時は私もイタダキマスにするわ!」
「ちなみにたべおわったら『ごちそうさまでした』だよ」
「それは分かるな。馳走になったを丁寧にした言い方だからしっかり食べきった!みたいな感じだろ?」
「うん。きれいにたべきるのがれいぎだった。のこしたりすてたりそまつにしたらおこられるかんじ。だからちゃんとたべられるところはすべてたべる」
「…すべて、ですか」
「クリスさんにがてなやつあるの?」
「…あぁ。恥ずかしながらね。苦味の強い山草とかが少し。残すようなことは無いが毎回気合を入れて食べてる。」
「たべれないならそもそもりょうりにいれない。かわない。さいしゅしなければいい。むだにすることがだめ」
「…なるほど。それは盲点でした。料理長、僕の料理には苦い野草は無しで!」
「ダメよ。ちゃんと好き嫌いせずに食べなさいクリス」
「…はい。母上」
「ちなみににがいやそうたべたらたおれたりする?」
「いや。そこまでじゃない。ただただ苦いのが苦手なんだ…」
「そう。よかった」
「…リヒト。食事で倒れたりする原因は分かるのか?」
「くわしくはしらないけど、アレルギーとか?」
「「「「あれるぎー?」」」」
「ひふにぶつぶつがでたり、はだがあかくなったり、はれたり、こきゅうができなくなったり、すききらいじゃなくて、からだになにかはんのうがあるならそれアレルギーのかのうせいあるからぜったいにたべちゃだめ。じゅうどのひとはへたしたらいのちにかかわるよ?」
「「「「「「えっ!?」」」」」」
「そこまでのレベルなのか!?」
「…はっ!?確かに王都の学園で甘酸っぱい果物を食べたら身体が痒くなる学友がいた!」
「かんきつるいアレルギーじゃない?そういうけいとうのくだものぜんぶだめとか。おとなになったらよくなったりずっとだめだったりって、ひとによってちがうからまわりがむりにたべさせたら、だめ」
「父上、その学友に手紙で教えても?」
「それくらいなら良いだろう。誰から聞いたか尋ねられたら港にいた交易商人から人伝で聞いたとでも答えれば問題ないだろう」
「分かりました」
「あとはどうぶつアレルギーとかの人はクシャミがとまらなくなったり、ハチとかゆうめいでにかいさされるとしんじゃうとかね」
「ハチの死者はそのアレルギーが原因だったのか!?」
「ハチのしゅるいにもよるけどね?だからハチミツとかとるときはぜんしんハチがはいってこないしさされないとくべつなふくそうをしてあんぜんなばしょでちゃくだつすればだいじょうぶ?だったはず」
「ホーキンス」
「はい。すぐに手配致します」
「もしかして、ハチミツたかい?」
「あぁ。だがリヒトのおかげで安定供給出来るかもしれない。ありがとう」
「やくにたてたならよかった。ハチミツでパンケーキとかおいしいよね」
「リヒトちゃん?パン、ケーキってなぁに?」
「パンと、けーき?聞いたことありますかティアさん?」
「聞いたこと無いわね?リヒト、それってどういう食べ物なの?」
「うすめのやわらかいせんようのパン?があってハチミツとバターをのせてたべるとおいしい。よのなかのじょせいほとんどがすきなレベル。あまいのすきなだんせいもあまったるくないからすきってひとおおいイメージ」
「「「「ゴクリ」」」」
「ふつうのパンことかじゃなくてせんようのやつでしかつくったことないからあれがなにでできているかわからないんだよね」
「えぇ〜!?そんな美味しそうな物教えといて食べれないだなんて…」
「な、生殺しだわ…」
「でもパンケーキにはいいところとわるいところがある」
「…何かしら?」
「いいところはおいしくていっぱいたべちゃう。ハチミツはからだにいい。わるいところいっぱいたべると、ふとる」
「「「「「「「「うっ」」」」」」」」
「うん?」
厨房部屋の方を振り返るが誰もいない。気のせいか。
「たっ、確かにぃ?太るのは問題よね?ティア?」
「あっ。私全然太らないから平気!」
あれ?おかしいな?部屋の空気が冷たくなったような?
「……そう。レベッカはどうかしら?」
「私も動いているのでそんなに…。全部身体の栄養になってるので…」
うっ。なんか胸が苦しい。なんだこの圧は!?一体誰が…。あっそうだ。
「あと、あまいのいっぱいたべるとむしばになっちゃうよ」
「それは困るわね!」
「抜くしかありませんからね…。子供の頃あれは痛かった…」
「そう♪ならパンケーキは諦めるしかないわね♪」
あれ?圧が無くなった?
「あっ、そういえばあかちゃんのときははちみつはおなかゆるくなるからよくなかったはず」
「え?そうなの?」
「う〜ん、うるおぼえだからわからないけど」
「一応ウチでは気をつけておきましょう」
そんなこんなでお昼ご飯と食休みが終わり、みんなそれぞれ部屋に戻るかと思ったら談話室に全員集合した。
「あれ?みんな仕事は?」
「「「「「…」」」」」「私は無いわ!」
「ティアさんはなんとなくわかるけど、こうしゃくけのみんなは?」
俺の話を聞くだけでも楽しいのもあるが、どうやらそれぞれ部下達の適性を見てほしいみたい。問題は誰からにするかなのだが。
「我が公爵家の使用人達からするべきではないか?」「いえ、兵士達の適性を見るべきです。早く訓練を積まなければ実戦で…」「それを言うなら内政官からでしょう?常に仕事がありますし適切に配置すればもっと効率良く…」「商人適性のある人を見つけたいわね。港を任せられる人材が欲しいのよ」「あの、みんな?落ち着いて?」
今はまだお互い、冷静に伝えているがこのままだとヒートアップして喧嘩になりそう。レベッカさんが落ち着かせようとしていたのだが聞く耳を持ってもらえず慌てている。語気が少し強くなってきた。
俺もその光景を見ながらどうしようと考えていたらティアさんが俺を抱き上げてレベッカさん以外のみんなに鋭い視線を向けられていた。ティアさんの腕の中にいる俺にもしっかりその姿が見えてしまう。つい、子供の様にティアさんの胸の中に隠れてしまったのだが、それを見たのかタイミングが重なったのかは分からないがティアさんから初めて聞いた低い声を聞くことになった。
「リヒトは魔導具じゃないわ。それに元気に話してはいるけれど、まだ体調を良くするために頑張っている子供なのよ?…頼る場所を間違えたかしら?レベッカ、クレア、ノーマ。行くわよ」
返事を聞かずに歩きだすティアさん。すぐに公爵家の皆に一礼して追いかけてくるノーマさん。それを見て悩んでから同じ様に一礼してからこちらにくるクレアさん。唯一落ち着いていたレベッカさんはため息をしながら「みんなのそういうイヤな貴族っぽいところ。見たくなかった」と言い、目の端に涙を浮かべ、耐えきれなくなったのか顔を伏せながらこちらにきた。彼女の胸元が涙で濡れ始めていた。
部屋を出て扉が閉まる隙間に見えた男性陣のやっちまったという表情とその場に座り込んでしまい、アンナさんに支えられているヴァネッサ夫人のこちらを見ながらゆっくりと首を左右に振りながら焦って弁明したそうな顔とこちらに伸びる右手を尻目に無情にも扉が自重で閉められた。一際大きく聞こえたその音はこちら側とあちら側をハッキリと隔てられた気がして少し寂しくなった。
その日、俺達は公爵家を出た。
それっぽいこと言ってます。本当の説はご自身でお調べください。
なんか書いてたら予想してない雰囲気になったな…。




