第9話 アタリが出たら、自動召喚
「う~~ん(クチクチ)」
朝食が終わったあとの食堂。
多くの団員は各課へ散っていき、広いホールにはぽつぽつと人影が残るだけだ。食器の片付けも一段落し、今は一番静かな時間帯である。
俺がグルト辺境三等騎士団食堂課に配属されて、気づけば一週間。
その間に緊急出動だの非常呼集だの、そういったイベントは一切発生していない。
……つまり。
特になにも起きていない。
よしよし。
最高じゃないか。
辺境とはいえ騎士団。もう少しバタつくかと思ったが、ここは驚くほど平和だ。
うるさい上司もいない。定時で帰れる。休日は完全オフ。
俺の理想にかなり近い。
さて、食堂課のほうだが朝めしにインスタントスープを導入した結果、評判は上々である。
「朝が楽しみになった」「パンが進む」など、うれしい声がちらほら。
さらに手を加える余地はあるが、焦らずゆっくりでいいだろう。
それよりも……昼食だな。
朝と同じく、いや正直それ以上にう~~んな内容である。
はっきり言ってマズイ。
朝めしも大事だが、昼もある程度うまくないとなぁ。そもそものやる気が出ないだろう。
俺は考え込むように顎を動かしながら、手元の袋から一本取り出した。
「さて、どうするかな……(クチクチクチ)」
「ああぁ~先輩、それなんですか?」
俺が昼食メニューをうんうん考えていたら、メガネをクイっと上げてミーシャが俺の手元をガン見してきた。
「おう、ミーシャもどうだ(クチクチ)」
俺は袋から一本取り出して、ミーシャに手渡した。
自分用にも新しいのを出して先端をかじる。
最初は硬いが、噛んでいるうちにじわっと旨味が広がって自然と口元がゆるむ。
「ふぁ……な、なんか噛めば噛むほど味が出る!? これ美味しいぃ~♪」
そう俺とミーシャがクチクチ噛んでいるもの、それはさきいか(スルメ)だ。
裂きイカのスルメ、普通にうまい。
「お昼のメニュー考えてるんですか?(クチクチ)」
「ああ、そうだな(クチクチ)」
噛む、噛む、また噛む。
顎を動かしていると、不思議と頭の中まで整理されてくるから不思議だ。
有名な某漫画家さんも創作中はさきいかをかじっていたらしいし。
「「……(クチクチクチ)」」
……まあ、俺の目の前のメモ用紙は白紙なんだが。
さきいかだけが順調に減っていく。
「タケオさん♪」
「おっすタケ~~」
「タケオっち!」
聞き覚えのある声に振り返ると、ルリアとスリーナにゴンスの3人がいた。
どうやら休憩時間らしい。
ルリアとミーシャは手を合わせてキャッキャウフフしている。
俺の部屋に来た時とは大違いだな。まあ似たような歳だし、仲良くなるのは時間の問題だったというわけだ。
「むっ……お二人も先輩のお知り合いなんですか?」
ミーシャがスリーナとゴンスにけん制するかのような目を向ける。
ああ、たしかに2人に会うのは初だったか。またルリアとの初見のようなことになるのかと思っていたら。
ちょっと様子が違った。
「わあぁ~仲間ですね~♪」
ミーシャがスリーナの胸元を見て、ぱっと表情を明るくする。
「なんこいつ、ムカつくんだけど……」
即座に空気がピリッとした。
いや、何が仲間なのかは深く考えないでおこう。
ミーシャはなんでも口に出しちゃう癖がある。これに関しては、いい時もあれば悪い時もある。
ふむ、さきいか食っとけばスリーナの機嫌も良くなるだろう。
俺は現代フード召喚で、さきいかの袋をポンポンと出す。
3人とも「なんだこれ?」みたいな顔でおそるおそるスルメを噛んだ。
「わぁ~~おいしぃ~~♪」
「なんこれ、手が止まんないんだけど!?」
「噛み応えがあるな……あごの筋肉が鍛えられるぜ!」
よしよし、反応は上々だ。スリーナの機嫌も良くなった。
さきいかの力は偉大だな。
なんか他のも食いたくなってきたぞ。
よっしゃ、現代フード連続召喚―――!
「いかくんもあるぞ~~」
「ほ~~らこっちはタコくんだぞ~~」
「「「「こっちもいい~~!!(クチクチクチ……)」」」」
そしてお次は、「おっちゃんいか」だ。むかし駄菓子屋で買った定番のやつ。
「んん? タケ~なんかこれ、ちっちゃいけど……」
「たしかに、子供のお菓子?なんですか」
ふふ……駄菓子だと侮る事なかれ。そいつのポテンシャルはすげぇぞ。
「んん……酸っぱい! でも……なんか食べちゃうぅう~~♡」
ぐふふ、この酸っぱさはジャンク性を秘めているのだ。
いくたの少年少女がこいつに堕とされたんだよ。かくいう俺もだが。
「先輩~~この袋の先端にある黒い部分はなんですか?」
「ああ、うらがえしてみ」
「はずれ? って書いてますけど……」
「そうだクジがついてんだ」
そう、ワクワクドキドキのあたりつきだ。
1個しか買えなかったとしても、もしかしたら……
「タケオさん! これ!」
ルリアが裏返したビニールには「あたり」の文字が。
その瞬間―――
フッとおっちゃんいかが一袋、ルリアの前に落ちた。
「え? これ?」
「あたりをひくともう一袋だ」
そう、俺の現代フード召喚をなめてもらっちゃ困る。
あたりが出れば自動召喚でもう一袋、ちゃんと出てくるのだ。
「せ、先輩!」
ミーシャがグッと手を伸ばしてきた。
しゃーない。
まあたまには大人買いしてもいいよな。
こうして俺は、ゆる~~い午前を満喫したのだった。
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