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第7話 後輩ちゃん(メガネっ子美少女)、粉末インスタントスープによだれをたらす

 ムチムチ団長への挨拶を終えた俺たちは、そのまま寮へと行き一日が終わった。


 いやぁ~フカフカのベッドでぐっすり眠れたよ。辺境と言えども王国最大組織の拠点だからな。

 こういった施設の充実は本当にありがたい。これが冒険者業だと上位クラスにならないと、なかなかこうはいかない。

 安定した生活ってのはやはり重要だ。こう、心にしみるものがある。


 さて、ぐっすり眠った翌朝。

 俺は赴任先である三等騎士食堂課へと向かう。


 ちなみに他の3人はというと、ルリアは魔法支援課、スリーナとゴンスは揃って騎士課へと配属されたらしい。

 いや、まあ全員騎士だろって話なんだが、でかい組織には多数の部署がつきものだ。それに基礎訓練なんかは合同でやったりする。



 さてさて、新しい部署への初出勤だ。

 寮から歩いて5分ほどで、本庁舎横に建つ平屋の建物へと着いた。


「……ここが食堂か」


 外観は質素。派手さはないが、清潔で悪くない。

 中に入るとちょうど朝食の時間帯とあって、そこそこの人数がテーブルを占めていた。


 さーて、俺の上司殿はどこに。


 ムチムチ団長からは食堂に行けとだけ言われていたが、事務室らしき小部屋には誰もいない。

 なら厨房を覗くかと、足を向ける。


 厨房では長い口ひげを胸元まで垂らしたじいさまと、ぶかぶかのコック帽を深くかぶったヤツが一人。

 二人とも黙々と手を動かして食材を切ったり煮たり、とにかく集中している。

 こりゃ挨拶どころじゃないな……と踵を返しかけたその時だ。


 ぶかぶかコック帽が、ガバッとこちらを振り向いた。


 そしてズンズンと迫ってくる。


 え? なに? こわっ!!

 ていうか絶対その帽子、サイズ合ってねぇだろ!


「タケオ先輩~~! 待ってましたよ~~!」


 ん?


 この声……聞き覚えが……?


 ぶかぶかコック帽が外されると、中から若草色の髪がふわりと揺れた。

 小柄な体で元気に両手を振り、ときおりメガネをクイッと上げる仕草―――


「おお、ミーシャじゃないか!」


 そう、彼女は前部署である本部庶務課で一緒だった後輩だ。

 数か月前に異動したとは聞いていたが、剣姫の呼び出しで俺が振り回されてる間にいなくなっていた。


「なるほど、ミーシャの配転先はここだったのか」


「えへへ~~また先輩と一緒の職場だ♪」


 緑色の瞳を揺らしてその場でぴょんと弾む美少女。たしか歳は17だったか。

 いやぁ、知った顔がいるってのはちょっと安心するな。


「なあ、ミーシャ……」

「先輩~まずは朝食を食べててくださ~い♪」


 課長の居場所を聞き出そうとしたのだが、可愛い後輩が朝食の載ったトレイを手渡してきた。

 うむ、たしかに焦ってもしゃーないか。配属先の食堂を知るためにも良いだろう。

 俺はナイフとフォークを手に、トレイに視線を向ける。


 トレイに載っているのは、パンにスープとベーコンを焼いたもの。


 ベーコンは、うむ。まあ……まあまあか。

 パンは……かたい……いや、まあこの世界の標準ではあるので、この食堂がどうというわけじゃない。


 そしてスープ……


 むぅうううう……パンがすすまん。


 これはミーシャやじいさまが悪い訳じゃない。むしろ良く頑張っていると言えよう。


 この異世界の食文化レベルは低い。

 うまいものも稀にあるが、食えたもんじゃないものの方が圧倒的に多い。


 そしてこの朝食も―――


 まあ硬いパンはやむを得ないとして。

 このスープなぁ……


 テーブルについているまわりの連中も、特に喜ぶわけでもなく淡々と口に運んでいる。


 ……よし、決めた。


 せっかく食堂課配属となったたんだ、ちょっとぐらいは良くしてこうじゃないか。改革なんてだいそれたことは言う気はない。

 ちょっとした「うまい」があってもいいと思うんだ。


 ふたたび厨房へと戻った俺は。


「……現代フード召喚」


 俺はポンっと手元に現れた箱をあけた。

 なかには小袋がいくつも入っている。


「先輩、なんですかそれ?」

「これはな、魔法の粉だ」


 俺はスープの器に粉を入れて、お湯を注いだ。

 ふんわりと立ち込めるクリーミーな香り。


「ええ! お湯入れたらスープ出来てる!?」

「むふふ、凄いだろう。さあ飲んでみてくれ」


 俺がだした黄色いスープをひと口含んだ瞬間、ミーシャの頬がゆるんでその小柄な身体がぴょんと跳ねた。


「せ、先輩……なにこの粉!? すごいんですけど!!」


 そう、俺の召喚した現代フードは粉末インスタントスープだ。

 ミーシャが飲んでいるのはポピュラーなコーンスープ。この世界にもあるかもしれんが、現代の味の方がはるかにうまい。

 無口なじいさまも調理の手を止めて、その長い髭をピクピクさせてスープをがぶ飲みしはじめた。


「だがこんなもんじゃないぜ」


 俺は次々と新たな箱を召喚した。


「パンプキン味だ~」

「やん、これもおいしい♪」


「そらそら~コンソメ味もあるぞ~~」

「だめ~~もうこれ以上は! メガネ曇りっぱなしぃい~~♡」


「フリーズドライもあるぞ~~」

「なにこれ、具材もお湯かけたらでてきた~~!?」


 クハハ~どうだ! 現代フードの底力を存分に味わうがいい。


 こうして、あらたなスープを加えた朝食がふるまわれる三等騎士食堂。


「お、おい。今日の朝飯……」

「ああ……これは……」


 テーブルについてたやつらの目つきが変わる。

 口に入れた瞬間、食べる速度がみるみる上がっていった。


 無表情だった目が、ギンギンに輝きを帯びていく。


 よしよし、これでみんなにも朝食という楽しみができたな。

 朝イチで気分が良くなるってのは大事だ。1日の始まりなんだから。

 全ての食事を召喚するのは流石に魔力が足らんけど、ちょっとしたことぐらいならできるんだぜ。


 あと、俺の魔法は隠さず使うことにした。

 本部だとうるさいやつらが寄って来るが、ここは驚きはすれど、むしろありがたがるやつが多い。純粋に美味いものを食いたいってだけだ。そんなんなら俺も警戒せずに力を使ってもいいかと。

 まあ見せびらかすことはせんけど、隠すのもメンドクサクなってきたってのが本音だがな。

 隠し事って疲れるのよね。


 おっと、そうだった。肝心な事を忘れてた。


「ところでミーシャ、課長はどこにいるんだ? 食堂課の事務室らしき部屋にもいなくてな」

「え? ここにいますよ?」


 マジか……


 まさかこの長髭のじいさまが!? 


「違いますよ?」


 え? じゃ、じゃあ―――


「み、ミーシャ。お前が課長だったとは……」


 ここにいるって、そういうことだったのか。

 これは予測不能だったな。まさかの展開だ。


「なに言ってんですか? タケオ先輩が課長じゃないですか」



 ―――はい?


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※本作はカクヨムにて先行公開中です。


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