第9話 【困惑】幼馴染からの愛が重くて困ってます
■東京都:渋谷区内
数日後。
「正午になりました。ニュースをお伝えします。ここ数年、世界中に出現していたゲートの増加は、『東海X-2』の確認を最後に停止しました」
画面に『東海X-2』のマップが表示される。
「全国のゲート内のダンジョンは、概ね調査が完了。地元探索者らによる対処により安定しています。ただ、最後に出現した、東海X-2では、先日の集団昏倒事件に加え、『正体不明の強力な武装集団』が内部に拠点を築き始めたとの情報があります」
配信者が撮影した、黒い服を着た眼光鋭い男の画像が表示される。
「これを受け、政府は、東海X-2の危険度指定を『推定B級』から『推定S級(攻略推奨、Aランク探索者以下立ち入り禁止)』へ引き上げるとともに、地元住民に避難も呼びかけています」
最後に総理大臣のインタビュー映像が流れる。
「我々は、この事態を重く受け止めており、対策の検討を加速することを検討しております」
カフェでそれを見ていたケンタは、テーブルに突っ伏して絶望した。
「嘘だ……せっかく資格取ったのに、Aランク以下は立ち入り禁止!?僕の管理ちゃんが遠のいていく……!」
■地下迷宮「ユリカゴ」第15階層(上層):吹きさらしの荒野
一方、ダンジョン内部。
【1日目:リザレ視点】
私は日課の巡回をしていた。
今日はサクラモチに加え、たまに遊ぶ、巨大な銀色の大きな狼も一緒だ。
「ん~、いい天気。モフ、そこ掘っちゃダメだよ」
のどかな散歩。
第15階層の広大な空き地に差し掛かった時、私は足を止めた。
「……ん?」
空き地に、見慣れないものがあった。
「資材?」
石材、木材、鉄材が山のように積まれている。
そして、黒装束たちが、せっせと石を運んでいる。
「……何これ?」
私が近づくと、汗だくの男が振り返った。
ザイルだ。
「リリ!邪魔をするな。今、忙しい」
「リリ言うな!……何してるの?」
「見ての通り、拠点を建てている」
「……は?」
私は目を疑った。
「拠点?何のために?」
「お前を守るためだ」
ザイルは真顔で答えた。
「デヒメル様の聖地を守護する(というのは名目で、お前の近くにずっと居るための)拠点が必要だ。組織の許可も取った」
「……勝手に決めないで」
「もう遅い」
ザイルはそう言い切ると、再び作業に戻った。
ここは魔物も出現するし、寝泊まりするには厳しいところ。
(……まあ、現実見てすぐ諦めるでしょ)
私は呆れて、その場を去った。
【2日目:リザレ視点】
翌日、また巡回に来ると。
「……嘘でしょ」
拠点の骨格と壁の一部ができていた。
黒曜石のような黒い石で作られた、重厚な壁。
「早すぎない?」
私は目を丸くした。
ザイルたちは、不眠不休で作業を続けているようだ。
「……本気なんだ」
私は、少し不安になってきた。
【3日目:リザレ視点】
そして、3日目。
「……は?何これ」
完成していた。
そこには、数日前まで影も形もなかった、立派なアジトが建てられていた。
「……仕事早すぎない?」
私は頭を抱えた。
ギギギ……と重厚な音がして、黒い重厚な扉が開く。
中から、数十人の黒装束の集団を引き連れたザイルが現れた。
「待っていたぞ、リリ」
ザイルは満足げに腕を広げた。
「これより我々は『黒の監視団・迷宮支部』として、この聖地を警備する」
「……リリ言うな。ていうか、もう建てたの?」
「組織の総力を挙げて運んだ」
「総力を注ぐところ間違ってるから」
ザイルは真顔で続ける。
「害虫駆除は任せてくれ。お前を困らせる不届き者は、一匹残らず俺たちが処理する」
「……はぁ。好きにしたら」
リザレの理想とする「静かな隠居生活」は、幼馴染の重すぎる愛によって、少し遠のいたのだった。
【地球側:ネットの反応】
『ダンジョン内に謎の拠点キター!?』
『黒い軍団、マジで何者?』
『管理ちゃんの親衛隊キタ』
『物騒になっていくwww』
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【現在のダンジョン状況】
■人類到達領域
第35階層:地下雨林(中層)※ただしザイル
■友好関係
・サクラモチ(E級 ピュア・スライムLv58→63)
・オハナ(S級 古竜Lv91)
・藍野アスカ(C級探索者、チャンネル登録者10万)
・ゴズ・ヴェン(C級 よろず屋Lv30)
・ザイル・ヴェルンブラ(S級 暗殺者Lv67→68)
・モフ(S級 巨狼Lv89)
■BAN対象(永久追放)
・狭間キョウヤ(D級探索者)
罪状:スライムへの執拗な虐待
・臼井クロト(B級探索者)ほか4名
罪状:冒険者達への陵虐
■BAN対象(装備ロスト)
・城嶋ジャック(B級探索者)ほか103名
罪状:上司の機嫌を損ねたため
■管理者コメント
壊してもいいかな
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Q. 3日で拠点が建ちますか?
A. 愛があれば建ちます(黒き監視団調べ)。
どんどん賑やかになるダンジョンですが、次回はついにあの子が「凸」します!
ブクマ・評価で、アスカちゃんの潜入を応援してあげてください!作者が無駄に覚醒します!
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