表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョン管理者の私、迷惑系配信者をデコピン一発でBAN(物理)しただけなのに地球でバスってた件  作者: セキド烏雲


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/30

第7話 【特番】管理ちゃんは「脅威」か「女神」か

■東京都内:カフェ『ブルームーン』


「ふざけんなよ……!」


 大学生のケンタは、スマホの画面を睨みつけ、怒りで震えていた。

 画面に映っているのは、報道特番『ニュース・アワー ~「東海X-2」集団全裸昏倒事件の真相 ~』。


『――俺は……ただ平和的に調査をしてただけなんです。魔物を刺激しないよう、慎重に……』


 VTRの中で、包帯姿の男が涙ながらに語っている。

 かつてリザレに「BAN」された配信者、キョウヤだ。


『なのに、いきなりあの女が現れて、笑いながら暴力を……!装備やドローンも壊されて、心に深い傷を負いました……』


 映像は巧みに編集され、キョウヤがスライムに残虐な拷問を行っていたシーンは全カットされていた。

 これではまるで、善良な冒険者が理不尽な暴力に遭ったようにしか見えない。


「キョウヤがスライムいじめてたカット流せよ!完全に偏向報道じゃねーか!」


 ケンタが叫ぶが、テレビの中の議論は止まらない。


『言語道断ですな』


 スタジオでは、眉間に皺を寄せた軍事評論家・タドコロが熱弁を振るっていた。


『この「管理ちゃん」なる個体、映像を見る限り、その戦闘能力は戦車一個小隊に匹敵します。もし彼女がゲートから出てきたらどうするんです?』


 タドコロは地図に示された日本列島の中央付近を指し棒で叩いた。


『東海地方は火の海になりますよ。彼女……いや、あの悪魔は人類の敵だ』


『で、でも待ってください!』


 ゲストコメンテーターのコスプレイヤー・アイナが食い下がる。


『皆さん、他のダンジョンの探索者死亡率をご存知ですよね?毎日のように死者が出ています。でも、彼女はあれだけの力がありながら、これまで「誰一人として殺していない」んです!』


 アイナは必死に訴える。


『今回の件だって、装備は壊されましたけど、全員命に別状はありません。彼女には知性があって、無益な殺生を避けている証拠じゃないですか!』


『甘い。それは気まぐれに過ぎない』


 タドコロは冷たく切り捨てた。


『猛獣がたまたま人を噛まなかったからといって、安全だと言えますか?これは国防の問題だ。即刻、ゲート周辺の地域に国防軍を投入。完全包囲し出入りを禁止する。そして、奴を仕留めるため、政府がレイドを招集し、全国の探索者を……』


『そ、そんなこと!』


 その時、これまで黙っていた若手の社会学者・カナメが手を挙げた。


『ちょっと待ってください』

『......どうぞ、カナメさん』


 司会者が促す。

 カナメは、冷静な声で語り始めた。


『皆さん、そもそも「管理ちゃん」が何のために存在するのか、考えたことありますか?』

『......どういうことです?』


 タドコロが眉をひそめる。


『彼女は「管理者」と名乗っている。つまり、あのダンジョンには"ルール"があるんです。そのルールを破った者だけが、BANされている』


 カナメは手元のタブレットを操作し、画面に映像を表示した。


『実は、ネット上ではすでに活発な考察がされています。「ダンジョン探索Wiki」や各種SNSで、BANされた事例を分析した結果、いくつかの共通点が見えてきました』


 画面に、整理された表が表示される。


《BAN事例の共通点》


 ・スライムへの陰惨な虐待キョウヤ

 ・異界人への凌辱的暴行(クロト他)

 ・商人への集団強盗行為(ジャッカル他)


『全員、"何かをやらかしている"んです』


 カナメは強調した。


『一方で、その他大勢の探索者は一度もBANされていません。つまり、彼女は"秩序の執行者"なんじゃないですか?』


 スタジオが、一瞬静まり返る。


『私たちが守るべきは、彼女のルールを理解することです。脅威と決めつける前に、対話の可能性を探るべきでは?』


 アイナが目を輝かせた。


『そうです!カナメさんの言う通り!』


 だが、タドコロは首を横に振った。


『理想論ですなぁ。ルールがあるとして、それが我々人類にとって受け入れられるものだとは限らない。もし彼女が、管理権をこちら側まで主張し、人間は全員出ていけ」と言ったら?』

『それは……』

『だからこそ、先制すべきなんです』


 議論は平行線だ。


 ネット上では『テレビ局の捏造だ』『カナメさんが正論』『アイナ可愛い』『管理ちゃんを守れ』という声が上がっているが、テレビしか見ない層の間では、確実に「恐怖」が広がりつつあった。


「クソッ……。せっかく資格取ったのに……」


 ケンタは項垂れた。

 このままでは、「東海X-2」に入場規制がかかるかもしれない。

 憧れの管理ちゃんが、遠のいていく。



■地下迷宮「ユリカゴ」第35階層(中層):霧深い雨林


 同時刻。


 ダンジョンの中層は、冷たい雨に包まれていた。

 鬱蒼と茂る木々の間を、一人の男が泥まみれになって逃げ惑っている。


「はぁ、はぁ……ッ!くそッ、しつこい……!」


 諜報組織「黒き監視団」に潜伏していたスパイ、セルヴィ。

 だが、逃げ場など最初からなかった。


 ヒュッ。


 風を切る音もなく、彼の目の前に「黒い影」が降り立つ。

 フードを目深に被った組織の執行者、ザイル。

 息一つ乱していない。


「……終わりだ」


 ザイルの冷徹な声が、雨音に混じる。


「死で償え」

「ひっ、た、助け……!」


 命乞いは届かない。

 ザイルは無慈悲かつ迅速に、逆手に持った短剣を振り下ろした。


 ドスッ……


 狙いは心臓。的確に貫く。苦しむ暇も与えない、プロの仕事。


「――排除対象外……か」


 凛とした声。


「……ッ!?」


 気配は全く感じない。油断したザイルは目を見開く。


「用が済んだら帰ってくれない?」


 頭に桜色のスライム(サクラモチ)を乗せた、銀髪の女性――リザレはその一部始終を見ていた。


 ザイルは動けなかった。

 それは畏怖や恐怖からではない。目の前の彼女から目が離せないのだ。


 見た目は少し違う。

 だが、彼の直感が警鐘を鳴らしていた。


 その顔立ちに背格好。

 気配の消し方。

 雨音に紛れる呼吸のリズム。

 そして何より、彼女の腰にぶら下がっている、あの「下手くそな手彫りのオカリナ」。


 ザイルの喉が、引きつったように震えた。


「……まさか。……リリ?」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【現在のダンジョン状況】


 ■人類到達領域

  第35階層:地下雨林(中層)※ただしザイル


 ■友好関係

 ・サクラモチ(E級 ピュア・スライムLv52→58)

 ・オハナ(S級 古竜Lv91)

 ・藍野アスカ(Cランク探索者、チャンネル登録者10万)

 ・ゴズ・ヴェン(C級 よろず屋Lv30)


 ■BAN対象(永久追放)

 ・狭間キョウヤ(Dランク探索者)

  罪状:スライムへの執拗な虐待

 ・臼井クロト(Bランク探索者)ほか4名

  罪状:冒険者達への陵虐


 ■BAN対象(装備ロスト)

 ・城嶋ジャック(Bランク探索者)ほか103名

  罪状:上司の機嫌を損ねたため


 ■管理者コメント

  めんどいのが来た

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 地球側:「人類の敵だ!国防軍を出せ!」

 迷宮側:「用が済んだら帰ってくれない?(塩対応)」

 この温度差を楽しんでいただけましたら、★で評価願います!作者が寒空のしたで歓喜します。

 さて、次回。

 クールな暗殺者ザイルの「キャラ崩壊」まで、あと1話……。


★カクヨム様にて先行配信しております。

 https://kakuyomu.jp/works/822139843894075364

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ