第19話 【旅回】政府「災厄が電車で来るわけない(呆れ)」 私「駅弁うま〜(ストゼロ9%)」
【ネットの反応】
配信は、世界中で大盛り上がりだった。
『ウラマ、天才か』
『ダンジョン外なら勝てる』
『北陸S-1wwwまさかの地元www』
『2日後か。仕事休も』
だが、考察勢のスレッドでは、疑問の声も上がっていた。
スレッド:【速報】ウラマvs管理ちゃん、2日後決戦
1:名無しの探索者
ウラマが管理ちゃんに宣戦布告
場所は北陸S-1
2:名無しの探索者
まさかの地元www
有給取ったわ
3:名無しの探索者
でも、管理ちゃんがあっさり了承したのが気になる
4:名無しの探索者
>>3
確かに怪しい
5:名無しの探索者
いや、業務日誌とか怒られるとか言ってたぞ
管理ちゃん、中間管理職説
6:名無しの探索者
>>5
そんなわけないだろ
あれだけの力持ってるのに
23:名無しの探索者
いや、マジで中間管理職かもしれん
あの「筆圧MAX」発言、リアルすぎる
24:名無しの探索者
>>23
草
67:名無しの探索者
どっちにしろ、管理ちゃんが最強なのは変わらん
68:名無しの探索者
>>67
それな
■岐阜県内:ホテル・アリオット(客室)
「うわ、めっちゃ書いてある」
ケンタは、ふかふかのソファに沈み込みながら、スマートフォンを高速でフリックし、5ちゃんのスレで管理ちゃんアンチとレスバしていた。
彼らが留め置かれているのは、政府が用意したスイートルームだ。
食事はルームサービス、ネット環境は最強。
「リザレとのパイプ役」というだけで、彼らは国賓級の扱いを受けていた。
「ケンタ、静かに。教授の声が聞こえない」
隣のデスクでは、ユウキがヘッドセットを装着し、ノートPCに向かって大学の講義をリモート受講していた。
政府の手回しにより、彼らのために大学側が特別にオンライン環境を整備してくれたのだ。
「ごめん。でも今、重要な局面なんだ」
ケンタは鼻息を荒くして書き込む。
スレッド続き
234:名無しの探索者
管理ちゃんとか言ってるけど、所詮魔物だろ
ウラマが勝つに決まってる
235:名無しの探索者
>>234
は?
管理ちゃんが勝つに決まってるだろ
236:名無しの探索者
>>235
根拠示せ
237:名無しの探索者
>>236
アクノシンが一瞬で倒されたこと、ザイルがドローンを一瞥で破壊したこと、そして何より、管理ちゃんが『うっさい』の一言で全員黙らせたこと。これ以上の根拠が必要?お前ら分かってないな。彼女にとって場所なんて関係ないんだよ。ダンジョン内だから強いんじゃない、彼女がいる場所がダンジョンになるんだよ。ウラマ如きが小細工したところで、純粋なステータスの暴力で粉砕される未来しか見えない。だいたい業務日誌云々も、彼女の几帳面で真面目な性格を表していてだな、そういう健気なところも推せるポイントなんだよ。理解できたか?
これ以上の根拠が必要?
238:名無しの探索者
>>237
長文乙
「くそっ……!反論できないからって『長文乙』で逃げやがって!」
ケンタは歯噛みした。
真実を知る者は孤独だ。
その時、部屋のドアベルが鳴った。
「失礼します」
入ってきたのは、いつも連絡係をしている政府の役人だった。
その顔は深刻そのものだ。
「Eランク探索者のケンタ君、ユウキ君。折り入って頼みがある」
ユウキは講義の音声をミュートにし、ヘッドセットを首に掛けた。
「何ですか?」
「2日後の決戦についてだ。リザレが北陸S-1へ移動する手段について、重大な懸念がある」
役人は脂汗を拭った。
「彼女が地上を移動するとなれば、大規模な警備が必要になる。だが、彼女は我々の接触を拒んでいる。君たちから、彼女の『移動手段』と、絶対に移動中、地球側に手を出さないことを確約させてほしい」
ケンタとユウキは顔を見合わせた。
確約も何も、連絡手段すらない。次にどう動くかも知らない。
(どうすんだ、ケンタ!?)
(しっ!ここで「知りません」なんて言ったら、このVIP待遇が終わる!それっぽい嘘で乗り切る!)
「……わかりました。ユウキ、リザレさんはなんて言ってる?」
(クソっ!結局俺に無茶振りかよ!!)
ユウキは心の中で絶叫しながら、何かないかと慌ててスマホを操作した。
そして震える手で、政府役人にスマートフォンに表示された経路検索画面を見せた。
「え、えーとですね、これみたいです」
役人が画面を覗き込む。
「は?ワイドビューひだ?」
「え?」
「……特急電車で行くというのか?あの災厄が?」
(ユウキ!!そんなわけないだろ!)
ケンタは心のなかで猛烈なツッコミをしながらも、冷や汗を隠してユウキを擁護するしかなかった。
「そ、そうです。管理ちゃんの迷宮ツアー動画見ましたか?実は彼女、旅行が好きなんですよ(多分)」
「り、旅行……?」
「ええ。観光ついでに決戦場へ向かう、それが『管理者』の余裕というものです」
政府役人達は、唸りながらヒソヒソと会話をする。
あの目、あの表情、あの声。
信じているようで信じていない。気がする。
(これは流石に詰んだか?)
すると……役人が真顔で向き直った。
「……なるほど。大胆不敵な彼女らしいと言えばらしい。連絡を取っていただきありがとうございます。ただ、いろいろと事情がございますので、我々の車で送迎いたしますよ」
「直ぐに車を手配しろ」
そう言って、嵐のように出ていった。
バタン。
「……ごまかせたか?」
「いや誤魔化せて無いでしょ!呆れてたし!ていうかユウキ、管理ちゃんが電車で行くとか、そんな訳ないじゃん!もう少しマシな返答してよ!」
「いや、ケンタが俺に無茶振りしたんだろ!?じゃあお前ならなんていうんだ?」
「ぼ、僕?!……うーんと。そうだなぁ。タクシーとか?」
残念なことに、この大学生らの想像力は乏しかった。
■岐阜県内:飛騨地方
ガタンゴトン……。
電車の走行音が心地よい。
アナウンス『次は、高山です』
アスカは、Googleマップを頼りに、リザレとザイルを連れて目的地へ向かっていた。
「やばぁ、これ美味しすぎでしょ!」
リザレが、駅弁を食べながら、うっとりとした表情で言う。
飛騨牛ひつまぶし弁当。
その濃厚な味わいに、リザレは完全に虜になっていた。
「最高なんですよ。ザイルさんはどうですか?」
アスカが笑顔で聞く。
「……うまい」
ザイルは、美味しさのあまり夢中になっている。
無言で箸が止まらない。
ぷしゅ。
アスカは、3本目のビールを空けた。
「はぁー。最高」
アスカは、少し酔った顔で笑った。
「そうだ、この前の料理動画、すごく好評だったので旅動画も撮っていいですか?もちろん編集しますから」
「いいよ」
リザレが、あっさり答える。
そして、ほろ酔いの表情でニヤリと笑った。
「ザイル、私達のカンケイ、見せてあげよっか」
「ブフォッ!!」
お茶を吹き出すザイル。
「お前、飲み過ぎだぞ」
ザイルが赤面する。
「これ甘くて美味しいんだもん?」
リザレの手にあるのは、『ストゼロ(ダブルレモン)』のロング缶。
そろそろ呂律が怪しい。
(これは……バズる)
アスカは、その二人の尊いやり取りを撮影しながら、旅動画の構成を考えていた。
ユウキからのSOSメッセージに気付く事なく。
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【現在のダンジョン状況】
■人類到達領域
第90階層:苔生した神殿(深層)※ただしツアー
第50階層:密林地帯(中層)※正規
■友好関係
・サクラモチ(E級ピュア・スライムLv65)
・オハナ(S級古竜Lv91)
・藍野アスカ(Cランク探索者、チャンネル登録者100万)
・ゴズ・ヴェン(C級よろず屋Lv30)
・ザイル・ヴェルンブラ(S級超越者Lv24)
・モフ(S級巨狼Lv89)
・北沢ケンタ(Eランク探索者)
・藤村ユウキ(Eランク探索者)
・にく(A級サイクロプスLv61)
・ユザメ(S級ラヴァドラゴンLv78)
・ベンリ(S級アラクネLv85)
■BAN対象(永久追放)
・狭間キョウヤ(Dランク探索者)
罪状:スライムへの執拗な虐待
・臼井クロト(Bランク探索者)ほか4名
罪状:冒険者達への陵虐
■BAN対象(装備ロスト)
・城嶋ジャック(Bランク探索者)ほか103名
罪状:上司の機嫌を損ねたため
■BAN対象?(常闇の世界)
・獅子堂アクノシン・ヴォルコフ(Sランク探索者)
■管理者コメント
ジュースみたい。
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ユウキ「電車です(苦し紛れの嘘)」
政府「そんなわけあるか」
リザレ「プシュッ(ストゼロ開栓)」
まさかの正解を叩き出したユウキと、度数が高いお酒をジュースだと思っているリザレに笑っていただけた方は、 ★で応援をお願いします! ★をいただけると、リザレの酔いがさらに回ります(次回、大変なことになります)。
次回、いよいよ第1章クライマックス! 「泥酔管理者 vs ガチ勢ランカー」 RTA対決の行方は!? お見逃しなく!
★カクヨム様にて先行配信しております。
https://kakuyomu.jp/works/822139843894075364




