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ダンジョン管理者の私、迷惑系配信者をデコピン一発でBAN(物理)しただけなのに地球でバスってた件  作者: セキド烏雲


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15/30

第15話 【困惑】世界は勘違いで回っている模様

【TVニュース・特番スタジオ】


「――速報です!先ほど、アクノシン氏のチューブ配信画面に、東海X-2のダンジョンボス、リザレ本人と思われる書き込みがありました!」


 キャスターが興奮気味に叫ぶ。画面には、あのコメントのスクリーンショットが映し出されている。


『来るついでに、三温糖と小麦粉買ってきて。あとバニラエッセンスも。リザレより』


「こ、これは……一体どういう意味でしょうか?専門家のタドコロさん」


 コメンテーター席に座る軍事評論家が、脂汗を拭いながら神妙な表情で語り始めた。


「……極めて具体的かつ、悪質な犯行予告ですね」

「犯行予告、ですか?」

「ええ。まず『三温糖』。これは『三つの温度ヒート』……つまり、街を焼き尽くすほどの熱波を三度にわたって放射することを示唆しています」

「なっ……!街を焼く!?」

「そして『小麦粉』。パウダーです。これは対戦相手であるアクノシン氏を『ちりにしてやる』という、明確な殺害予告でしょう」

「ひぃッ……!」


 アナウンサーは恐怖に顔をゆがめる。


「で、では最後の『バニラエッセンス』は?」

「エッセンス……つまり『抽出』。人間の魂や生命力を搾り取る、という残虐なメタファーかと」


 スタジオが凍りつく。

 お茶の間が恐怖に震える。

 SNSでは『#人類粉砕』『#三温糖の悪魔』のタグがトレンド入りしていた。


■岐阜県内:ホテル・アリオット客室


 その放送を、ケンタは頭を抱えて見ていた。


「……ちげぇよ」

「うん、違うね。ていうか、三温糖ってあれだよね」


 隣のユウキが遠い目で補足する。


「アスカちゃんが『コクが出るから』って勧めたんだよ、きっと」


 二人の前には、世話人と言う名目の監視役を任された黒服の男たちが立っていた。


「君たち。今の解説について意見はあるのですか?」


 監視役の問いかけに、ケンタは力なく首を振った。


「あの……あなた方は本当に管理地ちゃんの分析をしたんですか?」

「何がですか?」

「あれは暗号なんかじゃない。文字通りの意味ですよ」


 ケンタは画面の中に映されたリザレのコメントのスクリーンショットを指さした。


「彼女は、今ダンジョンで『お菓子作り』をしてるんですよ。多分。女のアスカと一緒に」


「は……?」

「で、材料が切れたから、これから来るアクノシンについでに頼んだんです。『コンビニ行くならジュース買ってきて』くらいのノリで」


 監視役たちが顔を見合わせ、鼻で笑う。


「冗談を。人類の存亡をかけた決戦ですよ?そんなふざけた理由で、アクノシンにお使いを頼むわけがないと思いますが」


「それが、使うんですって!!」


 二人の警告(真実)は、誰にも届かない。


 ライブ中継の画面の中で、アクノシンが東海X-2のゲートに向けて歩き始めた。

 スーパーの袋ではなく、凶悪な拳を握りしめて。



■地下迷宮「ユリカゴ」第1階層(上層):境界の洞窟


 アクノシンは2機のドローンを起動した。

 一機はガイド、もう一機は撮影用だ。

 チューブの『アクノシン・イン・ザ・ダーク』の視聴者数は、開始数秒で『1,000万人』を突破していた。


「今からリザレとかいうふざけた奴をぶっ殺しに行く!!てめぇら見とけよ!奴が泣き叫ぶサマをよぉ!」


 轟音と共にスタート。衝撃波だけでスライムの群れが霧散する。彼はガイドドローンに従い、第1階層を一瞬で突破した。


『きたああああああああ』

『完全にキレてるわw』

『速すぎwウラマもびっくりのRTAwww』

『スライムが空気になってて草』

『同接ヤバイことになっててワロ』


 コメント欄が滝のように流れる。


【第3階層】


 立ちはだかるのはゴブリンの群れ。


「邪魔だゴミ共が!」


 彼の鬼の形相に恐怖し、魔物たちが蜘蛛の子を散らすように道を開ける。


『格が違うwww』

『モーゼwww』

『流石俺達のアクノシン』


 アクノシンが怒りに燃え、世界が彼とリザレの戦いを期待し注視している。


 ――その頃。


 オーブンの予熱を待つ間、アスカのスマートフォンの使い方を教わったリザレは、ショート動画にハマっていた。


「あはは、面白ろー!猫が踊ってる!」

「ですよね、無限に時間が溶けます」


 アスカは苦笑いする。

(良いのかなぁ、アクノシン襲来に備えなくても……)


【第4〜14階層】


 コボルトの草原やフェアリーの森をひたすらに突き進むアクノシン。

 上層のF級からD級のクリーチャーは、彼の強さの尺度を測るには不十分だった。

 彼はだだっ広い吹きさらしの荒野を、ガイドドローンに従い疾走する。


 彼の鍛えられた体力は尽きることを知らない。


 その配信を見ていたウラマは、執務室で呟いた。


「怒りに振れた彼は気づいていないようだが、ここのクリーチャーは他のダンジョンのように、無謀な特攻をしない。知性が高いのか?」


 ――その頃。


 オーブンの中でクッキーのいい匂いがし始めた。


「でさー、ザイルってば、私達が5歳の頃に『将来はリザレと結婚する』って言ってたらしいの!全然覚えてないけど」

「そんな昔から?!良いなぁ。一途で素敵ですね」

「そうかなぁ。面倒くさい幼馴染でしかないけど。アスカはいるの?好きな人」

「えっ?!私ですか?!」


 2人は恋バナに花を咲かせていた。


【第15階層】


 荒野を走るアクノシンの道中、コボルトやゴブリン達は、彼の殺気を察知して背を向けて逃げていく。その時だ。


「……何だ?この甘い匂いは?!」


 彼が走り抜ける脇、あまりにも不自然な位置にある怪しげな建造物(黒き監視団・迷宮拠点)。そこから、戦場には似つかわしくない、濃厚なバニラの香りが漂っていた。


「はっ!クソバレバレな罠じゃねぇか!もう少しマシなのはねぇのか?!」


 甘い匂いの漂う館は、経験豊富な探索者シーカーの彼の目には、あからさまな『誘引トラップ(ルアー)』という地雷にしか映らない。


「クソ管理者ァ!!俺様にビビってくだらねぇ罠張って深層に逃げたかァ?!俺をパシリ扱いした罪、簡単に死ねると思うなよ!!」


 アクノシンは、リザレ達のいる拠点を全力でスルーし、次の階層へと突き進んでいった。


 ――その頃。


「くんくん……な、なんか、香ばしい匂いがしませんか?」

「あっ!ヤバっ!!やっちゃった!」


 2人は恋バナに花が咲きすぎて、クッキーを焦がしていた。

 アクノシンは、一体どこまで行ってしまうのか。次回をご期待ください。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【現在のダンジョン状況】


 ■人類到達領域

  第90階層:苔生した神殿(深層)※ただしツアー


 ■友好関係

 ・サクラモチ(E級ピュア・スライムLv65)

 ・オハナ(S級古竜Lv91)

 ・藍野アスカ(Cランク探索者、チャンネル登録者100万)

 ・ゴズ・ヴェン(C級よろず屋Lv30)

 ・ザイル・ヴェルンブラ(S級暗殺者Lv68)

 ・モフ(S級巨狼Lv89)

 ・北沢ケンタ(Eランク探索者)

 ・藤村ユウキ(Eランク探索者)

 ・にく(A級サイクロプスLv52)

 ・ユザメ(S級ラヴァドラゴンLv78)

 ・ベンリ(S級アラクネLv85)


 ■BAN対象(永久追放)

 ・狭間キョウヤ(Dランク探索者)

  罪状:スライムへの執拗な虐待

 ・臼井クロト(Bランク探索者)ほか4名

  罪状:冒険者達への陵虐


 ■BAN対象(装備ロスト)

 ・城嶋ジャック(Bランク探索者)ほか103名

  罪状:上司の機嫌を損ねたため


 ■管理者コメント

  アスカの好きな人は……

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 三温糖=街を焼き尽くす三つの熱波(Heat)

 小麦粉=人類を塵にする(Powder)

 専門家の分析、冴え渡ってますね(白目)。

 このすれ違いコントを楽しんでいただけましたら、ぜひ★ボタンを連打してください!作者の表現力広がります(嘘)!

 次回、ついに決戦?です!


★カクヨム様にて先行配信しております。

 https://kakuyomu.jp/works/822139843894075364

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