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バースデー  作者: K
16/27

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やっぱり好きだと、一樹は、遊史の笑顔を見て、そう思う。

お前のことが好きだ。

好きだ。好きだ。好きだ。


「一樹…。」

高揚した心に、遊史の静かな声が、響いた。

「遊史?」


じっと、こちらを見てる。

その表情に、何かを感じた。

「本当に、感謝してる。感情を全て吐き出した。人前で、初めて泣いた。お前にしか、出せなかったと思う。」

 謝意だけじゃない、何か他の感情があると、一樹は思った。


 何が言いたい?

 その目で、何を言おうとしている?


 一樹が不安を感じたことに、遊史は気が付いたようだった。

 視線を外して、目を少し泳がせた。

 何か、逡巡している。

 何?


 やがて、遊史は、決意したように目をあげ、一樹を見て言った。

「ごめんな。」

「?」

 何、謝ってんの?


 驚く一樹に、遊史は、少し寂し気に笑った。

「俺達、以心伝心だったよな。」

「は?」

 以心伝心?

 いつのことだよ?


 一樹が、遊史の言葉から、紐解こうとする記憶に、以心伝心というフレーズが浮かばない。

 けれども、大学に入学してから、ずっと、一樹と遊史は、お互いのことを、よくわかっていたと思う。

 お互いのキャラクターがお互いに心地よくて、理解しあえていた。

 遊史が望んでいることを、一樹は、想像できたし、一樹の望むことを、遊史は想像できていた。

 遊史の母親が死んだ時もそうだった。

 遊史が望む行動を、一樹は、想像でき、実行できていたんだと思う。

 言葉は必要なかった。

 あの時期の事を、遊史は、ずっと感謝していた。

 言わなくてもわかる俺達の関係は、確かに以心伝心だったのかもしれない。

 遊史のことを、親友以上の形で好きになってしまったあの時までは。


 一樹が、遊史を好きになってしまったことから、その関係が崩れてしまったのだ。


 一樹自身が、戸惑い、処理しきれずに、遊史を振り回した。

 遊史の気持ちを想像する余裕もなかった。なくなっていた。

 遊史が、ずっと、歩み寄ろうと努力していたこともわかってる。

 ただ、一樹の恋心は、あまりに唐突で、一樹にとっても、遊史にとっても、想定外だったのだ。


 あんな気持ちに振り回されていなければ、俺達は、ずっと以心伝心のままで、いられたんだろうか。

 俺が、遊史を好きになりさえしなければ、俺達は、ずっと一番の親友でいられたんだろうか。


 そう思い至った時、一樹は、ハッとした。


 気づかれた?


 一樹が、改めて遊史を見ると、遊史は、戸惑うように、瞳を揺らした。

 それは、気づかれたと悟った一樹の反応を理解したからだ。


気づかれた…。

一樹は確信した。


 いつ?

 バレた?


 昨日までは、バレてなかったはずだ。

 そんな素振りは、全くなかった。


 遊史自身が、そんなことに気づく余裕もない状態だったし、夢うつつで、感じたキスも、夢だと思い込んでいた。


 キス?


 キスの話から?

 夢だと思い込んでいたけど、夢じゃなかったことを、一樹の反応から、気づいたのかもしれない。

 夢じゃないとわかれば、どうして、そんなことをしたのかと憶測が入る。


 言わなくてもわかる。

 俺達は、そんな仲だった。


 一樹が、遊史にキスをした。

 そこから、遊史が、何を理解したのか、容易に、一樹も想像できる。

 きっと、この短い時間の間に、この数日の一樹の反応、すれ違ってしまった時期の一樹の態度が、全て、つながったのだろう。


 何でもわかりあえる。

 俺達は、そんな仲だったから。


 だから、「ごめんな」と言った遊史の気持ちも、一樹にはわかってしまった。


 遊史のことを、どんなに好きでも、遊史にとって、一樹は、親友以外のものにはあり得ない。

 そんなことも、絶望的にわかってしまったのだ。



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