第9話 日本語も英語も人類の共通語ではありません
短編拡充版ラストです。ちょっと設定を変更しました。妹を高校生のままにしておくとネタを増やしやすいといいますか。なお、この回は"cross the line"をBGMにして書きました(謎)。
ふたりとも一生仕事しなくても暮らせるほどのお金を得た俺達は、それを隠して過ごしていた。
いやだって、バレたら見覚えのない親戚や友達が湧きそうじゃん?討伐しても報酬出ないよ?
今までの人間関係もおかしくなりそうだし。両親と親友でそうなったら異世界に戻るしかない。
「ホントにバレてないのかなあ。なんか、友達のあたしを見る目が変わったような…」
「お前、ラノベ主人公だったんだな」
「なにそれ?」
妹のイケメンっぷりが尋常じゃないほど向上している件。
男っぽくなったというわけではなく、頼もしくなったというかそんな感じ。
帰還直前の2か月ほどは、ずっとダンジョンで魔物狩りまくってたからなあ。
「んー、運動部の助っ人するようになったせいもあるのかな。体動かしたくなってるし」
「剣道部はやめとけよ?下手すると、相手がマジで死ぬ」
「わかってるよー。でも、いつの間にか魔力が漂ってるんだもん」
そうなのだ。日本、というか、地球に戻っても、俺達は魔力操作できてしまった。
加えて、本当に『魔剣』も習得してしまっている。竹刀でも魔力をまとうとヤバい。
更に言えば、小さい魔石を使えば生活魔法も使え、便利なことこの上ない。
「あたし、こないだお母さんにベッド移動するとこ見られちゃった。うまくごまかせたけど」
「ありえない現象は『気のせい』で押し通せるしな。証拠だけは残さないように」
「反射的に魔力や魔法を使うのクセになっちゃってるんだよねー。うーん」
そういうわけで、しばらくして俺は大学の近くにある、そこそこのマンションを購入した。
表向き、これまでの通学代+バイトで知り合いから安く借りれるから、ということにして。
2年後には妹も同居する予定だ。俺と同じ大学に入学するため、成績向上を画策中。
「といっても、何もしなくても成績上がってるんだけど。授業聞いただけで結構わかる」
「異世界で『観察』してきたクセも残っている上に、討伐で集中力も養われたんだろうなあ」
「こないだの定期試験の後、また更に友達の視線がおかしくなったような…」
という友人関係の変化のせいか、週末はよく俺のマンションに来ている妹。
ここなら、気兼ねなく魔法を使いたい放題というのもある。
「こうしてふたりで過ごしていると、異世界で暮らしていた頃を思い出すねー」
「じゃあ、寝室はひとつでいいか…痛い、やめ、やめて」
「魔力量はあたしの方が上なの忘れたの?」
◇
ちょうど妹がマンションに来ていたある日の午後、またあの声が聞こえた。
「お願いがあります…」
声にしたがって街中に出ると、いかにもあの世界から来ましたというネコ耳少女が交番にいた。
怪しまれながらも警官達には言葉が全く通じず、泣きながら見せているのは…。
「…なるほど、普通にしていればクレジットカードに見えるな」
「でも、意識して見ると…ギルドカード?」
「『紹介状』の類は持ってなかったのかな。いや、本人確認書類としてカードを意識すれば…」
寝室はむしろ増えることになるかもしれないと思いながら、俺達は交番に向かった。
ということで、短編拡充版は終了です。第2章「ギルドカードがあればなんとかなるのは地球でも同じなのか」がいつ書かれるかは全くの未定。




