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魔法に永遠を  作者: にこだ
第二章 罪と呼ばれた魔法、終わりの「約束」に続く道標
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第三十五話「七十六日目」

今日は、魔法訓練。

エーレ曰く、この前がぶっ倒れたという魔法訓練の教師は、十日ほどの療養で回復したんだと。


魔法訓練とはその名の通り、自身の魔法を自由自在に操れるようにする訓練のこと。


王家に仕えた以上、命も狙われやすい。

だから、護身用の体術だけでなく、魔法も極めることが必要なのだ。

それに、魔法も満足に使えないようじゃあ、護衛役として示しがつかない。

魔力制御を教えてくれた誰かは、クソ面倒くさい奇天烈女だったから、マシなやつだといいな。


そんな甘ったるい考えは束の間。


「それじゃあ、始めてくよー!!」


「はい、カイト……先生」


王宮の庭、エーレはベンチに、俺は教師の前に立っている。

カイト・ヴァーナー。エーレの恩師。名門な家系でここらでは有名な教師らしい。でも……。


「小っせぇ……」

「あ、ゲル。それは言ったら……」


エーレが止めようとしたが、もう遅い。

ゴンッ!! と、体中に響くぐらいのゲンコツを今食らったのだから。

ビリビリと指先まで痺れる。


「って……! 何すんだよ!! 今の絶対聞こえてないだろ!!」

「目線がうぜぇんだよ、この小童が。私は、全魔学に長け、魔法師資格を最年少で取得したカイト様だぞ。どうだ? 羨ましかろう。せいぜい、そうやって地面に這いつくばって私のことを敬うんだな」

いや、自分のことそこまでいうか?

てか羨ましくねぇし、小童って、こいつ絶対俺より年下だろ。


村の子供達と変わらない背丈、背中の真ん中ぐらいまで伸ばした癖のある髪。どこにでもいる少女だが、フリフリしたドレスがなんともうざったらしい。

誰がどう見てもガキじゃねぇか。

それも自分が天才だからと棚に上げ、自分より下のやつを見下す典型的なクソガキ。


「ゲル」


ベンチに座っていたエーレが俺の隣で囁く。


「先生はね、確かにまだ子どもで私たちより年下だけど、背が小さいのと子ども扱いされるのが嫌いなのよ。そこ、気をつけて」


教師までこんな奴とか聞いてねぇよ。

王宮にはもっとマシなやつはいねぇのか。



ああ、もう……俺の安息の地は一体どこなんだよー!!



「はい、じゃあ手始めに魔力の制御はどのくらいできるの?」

「まだ、不安定ですがこのぐらい……」

プルプルと手が震えている。

こうやって、精神を研ぎ澄まさねぇとできない。


それをカイトは何も言わずにじっと見てくる。


ハッ……どうだ? 無様だろ。

……笑いたきゃ笑えばいい。


「うん、いいじゃん。あともう少しだよ。それを他のこともやりながらできるぐらいになったら、完璧だね」


予想外の返事に、なんか一気に脱力してしまう。


「お前……俺のこと罵ったり、馬鹿にしたりしねぇのな」

俺の言葉に目を見開く。

「え……何? ゲルくんって、そんなクールな顔してるのにマゾなの? でもごめん。私、君の特殊性癖に付き合うつもりは……」

「んなわけねぇだろ!!」


村のやつらより会話は多少できるとして、所詮はガキだ。

これだけで疲れる。


どっかの誰かさんみたいにな。



「するわけないじゃん。頑張ろうって、やってやろうって努力してる生徒に、そんなこと言ったら教師失格だもん」



当たり前って顔をしているが、そんなものなのか?

確かにエーレに初めて魔力制御の仕方を教えてもらった時、あいつも俺のこと馬鹿にしなかったな。

エーレの方に目をやると、フッと微笑んだ。


「……」

「あと、エーレちゃんから聞いたよ。君のこと」


俺の前にフワリと立ち、髪とドレスが舞う。



「過去にそんなトラウマがあってもなお、立ち向かう君は本当にすごい。そんな生徒を持つことが出来て、私は心の底から嬉しいよ」



あいつ、俺のことペラペラと……!


でも、そんなこと言われて悪い気はしねぇな。


「お前って実は結構まとも……」

「ってことで!!」


どこから出したのか、それとも魔法で出したのか、いつの間にか握られていた杖の先で鳩尾を刺される。

なんとも言えない痛みが全身を駆け巡る。



「いい? ゲルくん。こちとら『先生』なんだよ。敬語を使えや、アホンダラ」



前言撤回。


こいつは、どこまでもクソガキだ!!



「あらら、派手にやられたねぇ」

「笑ってんじゃねぇよ!  殺すぞ!」

「それは保留案件でしょー」

あのスパルタ教師の訓練が終わり、魔力制御が大分できるようになった俺は、あいつにつけられた傷やら痕やらを、エーレに治療してもらっていた。

「あいつ……バカスカ殴りやがって……お前にもこんなだったのか?」

「んいや、私には優しかったねぇ」

「はあ!? っんだよそれ! 贔屓にも程があるだろ!!」


この魔法訓練は明日もあるんだ。

今でもこんな体がボロボロだというのに。


「そのぐらい、先生はゲルに期待してるってことだよ。あんな熱心になってる先生初めて見たもの」

え、あれがか? あの少しでも出来なかったら、容赦なく魔法をぶつけて、体で覚えろとか言ってくるあれが?

じゃあ、もうちょっと教え方というものがあるだろう。

まあ、でもそれを自分でやれって言われても無理な気がするが。

それぐらい、俺は魔力制御ができない。


「もう無理だ!! 明日もあるとか冗談じゃない! 絶対逃げ……」

「あ、訓練が終わった後、先生が言ってたんだけど……」



『最近ね、新しい魔法を見つけたんだ! 是非ゲルくんを実験体に……』



「わかりました。潔く受けます」

「よろしい」


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