第十七話「最初で最後の始まり」
第十七話です。
ではどうぞ。
「私が君を助ける。そして君は私の犬になるの」
そういい手を伸ばし、輝くほどの銀髪を靡かす少女。
俺にとってはまるで―――――。
悪魔との契約のようだった。
俺の母は魔法使いだった。
この世界では基本魔法使い同士の間では子供はできないが、ごくまれに生まれることがある。
もし生まれてしまった場合、その子供は、一家に災いを呼ぶとされていた。
なぜなら、魔法使い同士の子供は強力な魔力が得られ永遠の命を手に入れることができたからだ。
こんな人間を人は「死神の子」というらしい。
なんとも皮肉めいた名前なのだろう。
俺は魔法使い同士の間に生まれた子供だった。
両親はそんな俺を捨ててどこかへ行ってしまった。
俺は行く当てもなく、そこらの家で捨てられているゴミなどを漁って何とか生き延びていた。
そのとき俺の歳がいくつだったかはわからない。
ほとんど餓死寸前。歩く力もなく道の端に座っていたところにその少女は現れた。
歳は俺より少し上だろうか。腰まで伸ばした髪を髪留め一つで綺麗にまとめ、その髪留めの飾りである金属の造花が銀髪の髪をより美しく彩っていた。ヒラヒラのドレスだが、そんな豪華なものではなく、簡素なもの。
しかし今俺が着ている汚物同然の服とはわけが違う。見た目だけでもその差は歴然であった。
俺と彼女では住む世界が違う。
そして、その少女の後ろには真っ黒なスーツを着こなした女性が歩いていた。
どこぞのお嬢様とその執事。
誰がどう見ようとそんな雰囲気を纏う二人。
こんなところへ何をしに来たのか。
ふと少女と目が合い、俺に気付いたのか近づいてきて。
「ねえ君、こんなところでなにしてるの?」
ただそう一言そう尋ねた。
遠目では見られなかったものが近くになるとよく見える。
雪のように白い肌、全てを見透かすようなどこまでも赤い瞳。そしてふわりとあたりの空気を漂う花の匂い。
それだけで自分とは育ちの違いが感じられる。
「もしかして……捨て子?」
そう言い少女は俺に手を伸ばす。
「触るな!!」
反射的に少女の手を思いっきり振り払った。
あたりにパンッ! という乾いた音が響く。
「ッ! あなた……」
「いいのよ。ミシェル」
後ろの執事が駆け寄ろうとしたが、少女は振り払われた手を挙げ、執事の動きを止めた。
「ごめんなさい。説明が足りなかったわ。ここは貧民街。私は偵察に来ただけなの」
俺は人という生き物に対して信じることができない。
当然だ。母に捨てられ、なんとか食料を手に入れようと盗みを犯し、その挙句暴力を振るわれるのだから。
この少女もその類だと思った。
「ねえ。拾ってあげようか? 君のこと」
やはり、人という生き物は信じられない。
俺はキッと少女を睨んだ。
そう、これは―――――威嚇だ。
獣が自分より強い相手を脅かすのと同じ。
「お嬢様、それはできません。どこの馬の骨かわからぬような者を招き入れることなど……」
「大丈夫よ。あとでお父様に自分から伝えるから」
執事の言葉に笑顔で答える。
「このままだと君は餓死するだろう。でもこの手をとれば君は生き延びることができる。その代わりに私の世話兼護衛をしなさい。どうかな?」
俺の目の前に細くて長い指がある。
これは好機だと思った。
今まで憎々しくて堪らなかった人という生き物に復讐ができるのだから。
俺は少女の手にゆっくりと自分の手を重ねた。
「私が君を助ける。そして君は私の犬になるの」
意地悪く浮かべた笑み。口から見える八重歯。
そして先ほどより少し黒みを帯びた瞳。
ほかの人から見るとおそらく天から舞い降りた天使のようなのだろう。
だが、俺には黄泉の世界へと誘いに来た悪魔のようにしか見えなかった。
俺はなんともいえない喜びで心が包まれていた。
そんな俺を支配し、翻弄し、利用し……そして突き放す。
その本人が彼女になるなど、この時の俺はまだ知らなかった。
第十七話どうでしたか。
この第二章が本作品において、作者が一番書きたかった内容なので、少しでも「面白い」と感じてくれれば、作者としてはこの上ない喜びです。
これからも執筆頑張りますので、是非ブックマーク、評価ポイント、リアクションよろしくお願いします。




