第十八話「1日目」
第十八話です。
ではどうぞ。
連れてこられたのはまさかの王宮であることにまず驚きを隠せなかった。
「私はエレストリア。気軽にエーレって呼んでくれていいからね」
俺は少女が昼食用に持っていたという一枚のパンをもらい、それをかじりながら少女の話を聞いていた。
少女の名前はエレストリア・エギナ。王家エギナ家の長女である。
そして先ほどの執事の名前は、ミシェル・ラート。王族に雇われた人間で、エレストリアの世話をしているらしい。
上手く現実を受け止めきれない。
さっきまで死にそうだった俺を助けてくれ、連れてこられたところが王宮? そして助けたのは、王家の人間で……。
……って普通の人間はそう思うところなのだが、俺は考えを放棄していた。
そんなこと考えても仕方ないと判断したからだ。
けど一つだけ。
俺を拾って、助ける代わりに自分の世話をしろって……世話をする人間はもういるのに、なんで必要なんだ?
「そういえば、君の名前を聞いていなかったね」
俺の……名前?
微かに覚えている。俺が生まれたとき、そして母が俺を捨てる前。
置き土産としてつけられた。
憎き母が……与えた名前。
「……ゲルデッド」
俺は誰にも名前を呼ばれたことがない。
母が俺を生んだ時の一回だけ。
だけど。
「……ゲルデッド。ようこそ、王宮へ」
そうやって俺は王宮での生活が始まった。
「それじゃあ、ミシェル。あなたは、まずゲルデッドを浴場に連れて行って、綺麗な服を用意してあげて。あと、この長い髪も切ってね。そのあとはシェフに料理を作るよう命じて」
「かしこまりました」
「その間私はお父様と話をしてくるから」
俺とあまり歳が変わらない少女が大人を駒のように使っている。
本当に王族の人なのだと改めてわかる。
「ねえ」
急に話しかけられ体がビクッと反応する。
目の前のエーレが俺の目を覗く。
近くで見るときれいな瞳だ。
真っ赤な……深紅色の瞳。
「ゲルデッドって嫌いな食べ物とかある?」
俺は首を横に振った。正直食べることができればなんでも良いのだ。
「そう、よかった。じゃあそういうことで、また大広間で会おう」
「ゲルデッド様。こちらです」
浴場に行ったはいいものの、一人で洗わさせてはくれず2、3人の使用人たちに体の隅々まで洗われる。
ほぼ、されるがまま状態だ。
ただ、王家の長女が拾っただけの人間をここまで丁重に扱うものなのか?
全体を洗った後、無駄に広い風呂に肩まで浸かる。
気持ちいい……。
風呂ってこんなに気持ちかったっけ?
最後に入ったのいつだったかもう……覚えてない。
浴場を出て、体を拭いてもらった後、髪を切る。
うざったらしく伸びていた前髪を切ったおかげで、視界が開ける。
今まで見えなかった部分が見えるようになって、視界の情報を脳が処理しきれず思わず目を細める。
「わ!! 綺麗になったじゃん! 髪もさっぱりしたね」
奥の部屋からヒョコッと顔を出し、俺の姿を見るなりタタタッと駆け足で寄ってくる。
広くなった視界でもう一度彼女を……エーレをじっくり見る。
やはり王家の人間だからか容姿も整っているが、なにより顔の造形が素晴らしく美しかった。
もし、俺がエーレを殺した時彼女はどんな顔をするのだろう。
すでに白いこの肌が更に青白くなり、体温はさがり、藻掻き苦しむ姿をするのだろうか。
人間に復讐したいがため、エーレと契約したがまさかの王家の人間とは……そんな人間を殺したらどうなる?
俺はそれが見たくて堪らない。
―――――そして、それは俺だけのものになるのだ。
ああ……早く、俺の手で歪んでいくその顔を間近で見てみたい。
彼女が大広間に食事が用意されてるからと言い、俺はその後をついていった。
第十八話どうでしたか。
「面白い!」「続きが気になる!」と思った方は是非ブックマーク、評価ポイント、リアクションよろしくお願いします。




