第十二話「不老不死」
第十二話です。
ではどうぞ。
部屋の真ん中にある机。入口からみて右手に私たちが座り、左手にはチャームが座っている。チャームはコーヒーを優雅に飲んでいる。
私たちはチャームの言葉を待っているのだ。
なんでそんな状況になっているのか。それはチャームが、
「研究員は私とあなたたちしかいません。ですので研究も急ぐ必要はありません。今日はちょうどみなさん集まってもらっていますから少し教会についての話をしましょう」
なんていうから、私たちはこうして待っているのだ。
「話の前に一つ聞いていいかしら?」
「はい」
「今から話すことに嘘偽りはないのよね?」
「そうです」
「なら、それはあなたに利益はあるの? それは私達への一方的なことで、あなたにはどういう利益があるの?」
「それは俺も気になる」
リルがキリアの言葉に賛同する。
「先ほども言った通り、私情です。私はただ教会に復讐がしたいだけです。私は生まれた時から信者になるよう育てられ、それが気に食わなかっただけです。生まれた時から運命が決まるなんて理不尽にしか感じないじゃあないですか」
なるほど。教会を裏切って私たちに情報を流すことで、教会に復讐ができると。
「……わかったわ。それではまず、教会の目的を教えて」
キリアの質問にキョトンとした顔で首をかしげる。
「それはゲットという子が教えていませんでしたか?」
「あれは嘘に決まっているでしょう。違いますか?」
ゲットがあれをいったときチャームはその場にいなかったはず。教会を通じて知っていたのか?
「まあ、嘘といえば嘘ですけどあれは半分あっていますよ。教会……いや司教様の目的はゲルデッドを見つけ、エレストリアの封印を解くことです。それはなぜか。ゲルデッドとエレストリアを殺すためだからです」
……司教様? ゲルデッドを見つける? ゲルデッドはもう存在していないはずだ。 だって200年前の魔法使いなのだから。
「このことを知っている者は司教様に仕えている者のみ。それをなんでもない人間である私がなぜ知っているのか。それはたまたま司教様が使い共に話しているのを聞いたんです」
なにも理解できない。でもこういうときは一つずつ質問すると良いって聞いたことがある。
「えっと……司教様って何者?」
私の質問に何かを考える素振りをみせるチャーム。
「正直何者かわからないんです。性別すらも」
「それは本当なんですか?」
私はそう尋ねる。
「さっきも言った通り、私はこの件に関して嘘はつきません」
「そうだとしたら、チャームさんも私達と同じで教会についての情報はほとんど持ってないのですか?」
先程まで無口だったエフィが話す。
「教会の目的等は知っています。しかし、司教様については……あ、でも名前は、聞いたことがあります。確か名前はローズ・サーテ。そんな名前でした。教会の聖書の名前は『ブルーローズ』。意味は神の祝福。おそらくそれをもじった偽名でしょう」
「そいつがゲットを殺したのか?」
済ました顔でリルはそういった。
「ええ」
「そんなことは後回しだわ。私が聞きたいのは教会の目的の詳細についてよ。今の発言に疑問があるわ。ゲルデッドは今から200年前の人物。つまりもう死んでるはずよ? そんな人間を殺すなんて……」
「いいえ。彼は今でもどこかで生きています」
その言葉でここにいる誰もが驚きを隠せなかったであろう。
みんなバカみたいにポカンと口を開けている。
「そ、そんな馬鹿げた話……」
「それではみなさんは、『死神の子』というのはご存知ですか?」
学校で聞いたことがある。確か……。
「基本的に魔法使いと人間の間にしか子どもは生まれないが、稀に魔法使い同士の間に生まれる子どものこと。強力な魔力を手に入れるかわりに永遠の命が授けられる。その子どもたちはその魔力を使って一家に、更には世界に災いをかける、ですよね」
失礼かもしれないが、勉強嫌いのアフェが真っ当に答えている……。
とういうことはつまり……。
「ゲルデッドは『死神の子』というわけですか」
私が代わりに付け足す。
「ちょっと……あなたたち馬鹿じゃないの? 『死神の子』なんてあくまでおとぎ話に出てくる子ども。そんなのが現実にいるわけ……」
「そう俗に言う『死神の子』はおとぎ話に出てくる生物。現実には存在しない。今まではそう言われていました」
ズズッとコーヒーをすすり、カチャッと受け皿にカップを置く。
「『死神の子』の存在はそう珍しくないのですよ。君たちの近くにもいます。そう、例えば彼女とか……」
チャームが見ていた先には顔をうつ伏せショートカットの髪で顔が隠されている人物の姿があった。
「あなたもそうですよね? エフィ・ナディアさん」
―――――「死神の子」
私達はそれが200年前の歴史の事実にたどり着く存在であることをまだ知らない。
『きれいな花……』
君は太陽が輝く下で、愛おしく一輪の花を見つめていた。
『ありがとう!』
満開に咲いた花のような笑顔をただ……。
守りたかっただけなのに。
『ごめんなさい』
『―――――』
『私はあなたを……』
そんな顔をさせたかったわけではなかったのに。
光すらなく濁った瞳には、私すらも映っていなかった。
私はたった一人の笑顔さえも守れなかった。
「ハアッ! ハア……ハア……」
起きた拍子に、腕が机の上のものにあたってガチャン! と派手な音がなる。
少し寝ていたようだ。
教師が学校で寝るなんて情けない。それに……。
「……またあの夢」
コンコンコン。
「学長? 大丈夫ですか? あの、すごい音が聞こえたんですけど」
おそらくどこかの学年の生徒だろう。
「あ……ああ。大丈夫ですよ。なにか御用ですか?」
「い、いえたまたま通りかかっただけなので。大丈夫なら良かったです」
「ご心配ありがとう。さあ、次の授業が始まりますよ」
「はい!」
コツコツと遠ざかる靴の音を聞きながら、先程の夢を思い出していた。
会話がドア越しで良かったと思った。
「あのとき、貴方は私に何を伝えたのですか?」
目から溢れ出る塩水が頬を濡らす。
「……貴方の声が聞きたい」
止まらない涙。
もう何年も、何十年も。
何百年も。
ずっと。
思い出せないままだ。
第十二話どうでしたか。
ついに累計ユニークアクセスが100人突破しました。
本当にありがとうございます。
本作品で「面白いな」「続きが読みたいな」と思った方は、是非エピソードの下にある「☆」をタップし「★」にして作者を応援してください。
ブックマーク、リアクションの方もよろしくお願いします。




