第16話 ルビー、使い魔を召喚する
「ん~もう・・・食べられません・・・ししょー」
「全く、本当に可愛いんだから」
あの後、お祭りを楽しみ過ぎたシャーリーちゃんは帰っている最中に眠くなり背負って現在ようやく宿に帰ってきて布団に寝かしてあげた。
シャーリーちゃんがここまで楽しんくれたのなら私も満足なのだ。
時刻は22時を回り、外も凄い暗くなり、静かになってきていた。
「ここからは単独行動開始といきましょう」
シャーリーちゃんを起こさないようにゆっくりと部屋を出た私は外へと駆けていく。
お祭りの最中ずっと拡大探知を発動していたけど、結局事件に関する手掛かりを得ることは出来なかった。
やはり今日みたいに、事件の現場に居合わせた状態でなければ正確な探知はできないだろう。
「そうすると他の方法は・・・あっ!」
魔法が使えるようになったということはもしかしたら!!
少し裏路地に入ってから人が来ないことを確認した。
すぐに手を前にかざして、詠唱を始めた。
「契約に従い、私の呼びかけに答えよ!・・・魔法発動、使い魔召喚【スピリットサモン】!!」
魔法陣が地面に描かれて、発光し始めた。
これは使い魔召喚【スピリットサモン】という高魔法の1つで、ゲーム終盤にて会得できる魔法の1つである。
自分で様々な種類の動物や精霊や、様々な生き物を自分でキャラクリしたり、ゲーム内で登場するモンスターをテイムして契約を結ぶことでいつでも呼び出すことが出来るシステムである。
(私が契約していた使い魔は全部で3つ・・・この事件で最適な子がいる!!)
その子をイメージして召喚を行うための魔力を左手に集中させた。
そして魔法陣から何かが召喚された。
煙が発生していたが、段々と納まっていく。
そしてようやく召喚された使い魔を目視することができた。
黒き毛皮に金色の雷模様が前足に刻印されている。
見た目は完全に柴犬ではあるが、ただの柴犬ではない。
「久しぶりになるのかな?私の呼びかけに応じてくれてありがとう、オウガ!」
「お久しぶりです。我が主ルビー様」
深々とお辞儀をしてくる柴犬さんことオウガ。
この子はかつてとある領域を支配していた犬タイプの魔神だったのだが、私がソロで激闘を繰り広げたところ、レアイベントが偶然発生しテイムすることに成功したのである。
「して、今回は何用でしょうか?」
「んーっとまずは事情を説明した方がいいよね・・・」
それから私とオウガは王都の少し外れまで移動した。
自分がこの世界に転生しちゃってるのではないかという内容を話した。
ここがゲームとは若干違う世界であること、私もゲームでなく本物のルビーそのものになってしまったことなどを含めて。
でもオウガも【ドラグーンハンター】のゲームの中での存在なので、どういう反応を示すかわからなかった。
「なるほど、主がこの世界に転生し自分が本来いた世界に戻れなくなっていると・・・」
「そうなの」
「それで色々あり、何とか王都までたどり着き魔法の書を手に入れて、この我を召喚したという事ですね?」
「そういうこと・・・!」
「少々無礼を働いてもよろしいでしょうか?」
「え・・・?うん」
その瞬間、オウガの身体が輝き大きさが3倍、いや5倍程大きくなった。
これが神の力を解放した状態であり、元々私が最初戦った時と同じ状態でもある。
所謂魔神モード状態とでもいえばいいのかも。
「主よ、我の一撃を防いでください」
「どういうこと・・・?」
「我は主の話を信じたい。ですが、本当に主がこの世界に転生したかどうかハッキリさせるためにも実力を見るのが一番早いと確信したのです。この我を完膚なきまで倒したのは主しかいませんので」
「ん~、わかったわ。でもオウガを傷つけたくはないから受け止めるだけだからね?」
「お願いします」
オウガの口元から膨大なエネルギーを感じる。
おそらく、初めて戦った時と同じ魔神煌撃破【デーモンズインパクト】を放つつもりなのかな?
ゲームであの攻撃を受けると即死と言われるくらいの一撃だったけど、私は魔法剣士でスキル魔神殺し【デーモンスレイヤー】を自分の剣に纏わせてそれを斬り伏せたのだ。
あの時は2本の聖剣があったけど、今はただのハイメタルブレード2本。
果たして受け止めきれるかどうか・・・。
「では参ります・・・!!」
オウガの一撃のチャージが始まりエネルギーを溜めている。
こうなったら出たとこ勝負ね!!
ハイメタルブレードに同じように魔神殺し【デーモンスレイヤー】を纏わせる。
おそらくハイメタルブレードでは聖剣と同じように斬り伏せることはできない。
ならば、一瞬だけでも受けていなしてオウガの懐に飛び込むしか避ける方法はない。
「魔神煌撃破【デーモンズインパクト】!!」
当時と同じ攻撃を繰り出してくるオウガ。
転生してる状態でこれを喰らったら本当に天国にいきそうなので、すぐに逃げ出したい気持ちだけど、オウガに自分が本物だって証明しなくっちゃ!!
放たれた光線に対して真っすぐ突っ込んで、ハイメタルブレードを交差させる。
魔神煌撃破【デーモンズインパクト】がハイメタルブレードに振れた瞬間にすぐにスライディングをしながら光線の真下を潜り抜けていく。
「何!?」
驚いた表情をしたオウガだが、もう時すでに遅し。
私はそのままオウガの喉元にハイメタルブレードを当てた。
「これで私を主だって信じてくれる?」
「・・・参りました。流石は我が主、ルビー様です」
元の柴犬サイズに戻り、私の右肩に乗ってきた。
「これからは何があろうとルビー様を信じます。なんなりとお申し付けください」
「いいの?」
「正直、すべてが真実と言われてもまだピンと来てはいません。ですが我は、いえ我の魂はすべて主であるルビー様に忠誠を誓っています。また共に戦わせてください」
「ありがとう、オウガ!じゃあ早速なんだけど、王都【スペード】内で実はとある事件が起きているの」
そして私は今王都【スペード】で起きている対象爆破事件についてオウガに話した。
「なるほど、つまり我の仕事は王都内で爆発が発生した際にその現場に残された匂いなどを追跡すればいいということですね?」
「そういうこと!」
「ルビー様、王都は既に爆発物の匂いが漂っている箇所があります。早速調査に向かいます」
「本当!?お願いしてもいい?」
「勿論です。何かあれば念話でお声がけします」
そのままオウガは一瞬で移動していった。
王都はかなり広いから、オウガがいればかなり心強いし広範囲で探索もできる。
魔法の書をやはり手に入れたのは正解だったわ。
オウガには少し申し訳ないけど、明日に備えて私も少し眠りにつくため宿に戻ることにした。




