32話 急ぎ足
「だああっるっ!足ダルっ!!ちょっと急ぎ足過ぎたって感じ?まあ、おかげで何事も無くミーシャの縄張りに戻って来られたけどさ~」
「そだね~。ん~、着いちゃうね~(´-ω-`)」
「どしたの、浮かない感じじゃん?うひ~っ!暑い!水、水!!」
山越えの疲労感から川面に顔を突っ込んで涼をとる。
「・・・二人きりが終わっちゃうな(;¬_¬)」
「ガボガボッ!!・・・びっくりしたぁっ!目の前であの時の魚が・・・」
クロールして泳いでる!そう、必死にハリを手で外そうとしていたあの魚がまるでスイミングスクールのように群れなして。
「まじまじ見ると器用なもんだな。あの手は胸ビレの進化したものか・・・よし、ちょっと試してみるか」
川岸のクレソンを少し千切って再び水中を覗くと、群れのレーンに流れるようにそいつを撒いた。
(へぇ~!草を払いのけて泳いでら!それじゃ、エサもアレで捕まえて食べるのかな?)
今度は石の裏からチョロ(カゲロウの幼虫)を流してみる。
(あ。エサはふつうに口でパクッといくんだ・・・)
なるほど・・・だから釣れたのか。もしエサを一度掴んでから口に運んでいたのなら釣るのは相当難しいものな。
「ぷはぁ!最初はびっくりしたけど案外美味いんじゃないかって思えてきた。ワタ抜きしておけばホームまでもたせられるかな・・・よし!ソントンさんに調理してもらお!」
いそいそと釣りの準備に取りかかる、筈だった。この爪!い・・・糸が結べない(T^T)
「わあああ~。俺ぁもーだめだー。俺ぁドジでマヌケでノロマな亀井さんだ~⤵⤵」
「どしたの?急に(;・д・)もしかして季節はずれの暑さでパーになっちゃったとか?( ´艸`)」
「ぢがうんだぁ~。仕掛けが作れないんだよぉ~。釣りが出来ないんだよぉ~」
「それはチョ~一大事じゃない!ケンチから釣りを取ったら残るのって・・・え~?なにかある?」
「そ~だなあ~・・・っておい!色々あるでしょうに!」
「アハハ。冗談だってば( ´艸`)私がいるじゃない!ほれ、かしてみそ?」
「うん・・・ぐすっ。その糸をソッチの糸に巻き付けてから戻して・・・」
「あれ~??お?・・・う~~ん(;・д・)?」
「いや、そうじゃなくて・・・ソッチだって!・・・あー、ゴメン。チチワでいいや・・・教えるね」
か、壊滅的に不器用だ・・・。チチワと言うより首輪だ・・・。
「あ、ありがとう」
「細々したのは無理(*`Д´*)!」
「大丈夫だよ。うん、大丈夫。ほら、ちゃんと結べてるよ?初めてでも上出来!やるじゃん、ミーシャ」
「そ・・・そうかなぁ!まあねσ(〃ω〃)」
余分な糸がベロンと出てて・・・絡まないように気をつけて釣りしよ。
「ほい!さっそくぅ!スレてないから入れ食いコースだな♪ほら、ミーシャ、やってみ!?楽しいから!!」
「え~?う~ん・・・じゃ、ちょっとだけ」
竿を渡して釣り方をレクチャーするとすぐにアタリがあった。
「ひゃあ!?びっくりして手、放しちゃった∑(OωO; )」
お約束かい!流れにのってプカプカ浮かぶ竿を追いかけチャラ瀬を走る。
「追いついた~。お?ほら!ミーシャ見てみ!?こんなにでっか・・・い・・・」
川岸から少し離れた場所に大きめのカゴが置いてあり、中にタオルケットが入っているのが見えた・・・もう、イヤな予感しかしない。中学生の頃、これと同じ物を多摩川の高架下で見つけた事がある。
「やっぱりか・・・」
中に手紙が添えてあり、ひと言
『ゴメンナサイ』
と。
「どしたの~?ケンチ~・・・わっ!!猫ちゃん??まだ小っこいじゃん!柔らかそ~♪」
「おい?」
「流石に食べませんて・・・ん?ヒトのニオイがする。誰か来ちゃったのかな?」
「いや、捨て猫だな多分・・・飼えなくなっちゃったか?一緒に手紙が入ってた・・・」
「あ(`・д・´)!?捨て・・・?ザけんな何だそれ!!子供の気持ち考えろ!スンスン・・・クソっ!辺りに気配はないか・・・居たらこっぴどくコテンパンにしてやったのに!!」
この怒り方・・・自身に重なるところがあるのだろう・・・胸が痛んで声をかけられない。。
「ケンチ!!この子連れて帰る!!私達と暮らす事にする!ダメは無い!お腹空いてるだろうから急いで帰る!ほら、早く片付て!魚持って!背中に乗る!」
「いや、気持ちはわかるよ?確かにこのまま放ってはおけない。けど、背中に乗るのはダメだ。肩のケガが・・・」
「だからリスに噛まれた方が痛い位だってゆったでしょ!!早くしろ(▼皿▼)」
猛るミーシャの背に乗るや否や疾風のごとく翔りだしあっという間にホームの入り口まで帰って来た。




