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第23 サラリーマン

「お疲れさん!どう?亀井君、()()けど付き合うかい?」


 珍しく部長から飲みに誘われた。どういう風の吹きまわしか分からないけど兎に角滅多にないことだ。寧ろ、不気味。


「あー、今日は体調が・・・いや、お供します!!」


「ハッハッハ!!おお!そうか!だと思って()()手配しといてやったよ!ガハハ」


 断ると面倒くさいヒトだからな~。その途端、目が据わって「ああ、そう。分かった。お疲れ~」とか無下に言い放ち、翌日は口もきいてくれない。自分の業務に差し支えが生じるから泣き寝入るしかない。

 飲み屋に入り『とりあえずビール』を一気に飲み干しお通しのこごみのマヨネーズ和えを口に運ぼうとした時、沙織とアミが合流してきた。


「お疲れ!悪いね~二人とも!さ、なんか頼んでよ!俺の驕りだからさぁ!」


「ありがとう御座いますぅ~!ご馳走になりま~す♪」×2


「っても、亀井君との割り勘だけどね!女性陣には払わせないよぉ~?」


「んだよ!!俺は驕りじゃないのかよ!ニヤニヤやらし~顔つきで女の子に媚売ってんじゃねえよ!!このスケベ部長が!!」


・・・って、言えたら良かったけど、無理。


「やだも~。亀井さんもゴチです!でも急にどうされたんですか?部長!いや、嬉しいですけどね?」


「いやぁ~、亀井君がさ、今日は変だっただろ?落ち込んでるっていうか、心ここにあらずっていうかさ!沙織ちゃ・・・園部君は亀井君と仲がいいだろ?元気づけてやろうと思ってさ!!ほれっ!園部君は亀井の隣に!アミちゃんは俺のとなり~♪」


「わ~。ブチョ~の隣なんてエラくなった気分ですぅ~!エヘン♪」


 ・・・元気づけ??はっ!そんなこと微塵も思って無いクセに!!かこつけて女の子と飲みたかっただけだろう?よりにもよって沙織を呼ぶなんて元気づけどころか余計に悪くなるわ!!部長は物事の上っ面しか見れないヒトだから二人が付き合ってた事も、そして振られたのも知らないんだろうけどな!!


「ははっ・・・ご心配ありがとう御座います。なんだかちょっと心と体のズレ?ってゆうか・・・そんな感じでして・・・あ、でも大丈夫です。そんなに深刻じゃなくて、寝れば治るかと」


「ほう、頼むよ~!!亀井君は我が社のホープなんだからさ!!ね!?園部君!」


「そうですねぇ♪」


「おお!これは!大将、このワカサギとシシトウの天ぷら、んまいねぇ~!!ほら!二人とも熱いうちに頂きなさい!他のつまみは適当に頼んでおいたから、あと好きなの各自頼みなさい!ガハハ」


 なにがホープだよ。アンタが都合よく俺を使ってるだけだろうが!!ただでさえなのに部長があれやこれやと勤務時間外でも仕切り始め悦に入るさまを見て、苦笑いとため息がこぼれる。


(ツマラナイな・・・早く帰りたいよ)


 そんな俺の気持ちを察し、沙織が「やれやれだね(*ゝω・*)ノ」と俺に顔を近づけ小声で言った。ぷっくりとしたクチビルに目が釘付けになりドキドキする・・・やっぱり沙織は可愛い!・・・が、さっき好きなヒトでも出来た?と聞かれたとき咄嗟にオマエだよ、と口に出せなかったのはこのドキドキがラブのドキドキでは無いと感じたからだ。

 漠然とだけど・・・俺、多分、もっと他に好きなヒトがいた気がする!


「こら~!口が半開き法典ですよぉ~?一人に見とれてるのはズルイですぅ~!コッチも向け~~!」


 グキッ アミが首を無理矢理に自分の方へ向ける。ポヤッとしたした子なのにこういうとき(酔っ払ってるせいもあるだろうけど)強引なんだよなぁ・・・可愛いから許すけど!


「ズルイです~!コッチも向け~」


 オエッ 今度は部長がアミの真似をする。オイリーな顔が近い。ああ・・・醜い。引っ叩いてやりたいゼ。


「ハハハ・・・皆さんいい感じになってきてるみたいなので、お開きにしませんか?今日はなんか俺の為にありがとう御座います!元気出ましたよ。・・・ええと・・・伝票・・・半分で一万二千・・・二枚置いていきますのでまだ飲まれるならそれでお願いします。お疲れ様でした」


 長財布をお尻のポッケから抜き取り諭吉を二枚取り出す。立ったついでにおいとましようと簡単に挨拶をして席を離れる。


「なんだあ?亀井君、もうドロンかあ?まあいいけど。はい、お疲れ~」


 部長の嫌味たっぷりの声がするが気にしない。女子二人は「え?部長と呑むの??」みたいな顔つきだったがそれも気にしない。ちょっと位は悪いと思うけど、なんだかとってもだるいんだ。パトラッシュ・・・。

 会社のある水道橋から外堀通りを歩き新御茶ノ水駅へ向かう。ちょっと歩くが夜風が気持ちいいし、なによりオレンジ色の街灯が今の俺のナーバスな気分に心地良い。


「そこの公園で缶コーヒーでも飲んでから帰るかな・・・」


 自販機でエメマンを一本。樹木を囲む円形のベンチに腰を掛け週末の天気を見るためにニュースサイトをひらくと、トップニュースにまたもや熊情報が。


「うわ!!奥多摩かよ!あ~・・・クソッ!!まだ捕まってないんだ。なんだよもう!!釣りに行こうと思ってたのに・・・。頑張れ猟友会!!俺の週末ライフのために!後五日のうちに捕まえとくれよ!?」


 とりあえず捕まる事前提でネットにてクレイジークローラーをポチる。


「オリザラもいいけどクローラーもいいんだよね~!ダバダバダバダ・・・ジュゴッ!!いいねえ⤴⤴ドーパミンジュルジュルですよ~」


 ポチった瞬間、もう釣れた気に・・・。よし!心が少し回復したかな?・・・なんて思っていたのは翌日の出社まで。


「亀井君~。この書類さあ、全部コピーとった後、スキャンして本部に送信しといてよ。よろしく~」


「え?これ・・・アミ・・・橋本さんの担当ですよね?俺、これから外廻りなんですが・・・」


「あー、アミちゃんねぇ、頭痛いってラインが来てて午後から出勤なんだ。昼前までには送りたいから君、よろしく!昨日早く帰っていっぱい寝たんだからイケるよね?外廻りは昼以降でいいだろし、兎に角早めに頼むよ」


「・・・はい。承知しました・・・」


 呑みを途中退場したことを根に持ってる。ホント小せえ部長だな。


「あー、園部君。昨日はご苦労さまね♪いやあ、ホント君、歌上手いよねえ!お蔭様で耳の奥から綺麗になったよ~!」


「ありがとう御座います!・・・誰かさんが帰っちゃったせいでいっぱい歌えましたからねー。楽しかったのに~」


 週末までこんな調子で職場が針のムシロかよという感じだった。さらにヌカッたのは


「亀井君。今日は平気だろう?明日はやすみだしな!どうかね!?」


 クイッと酒を呑む仕草を見せる。まだ午前中だというのに・・・このアル中が!


「スミマセン。明日は朝から実家の父の様子を見に行こうかと思ってまして。アルコールが残ってると運転出来ないんで申し訳ないんですけど・・・」


「ほう、君の実家は湖かね。ほら、届いとったぞ」


 小包をポンと投げてよこされ中からカチャカチャと音が鳴る。いつまでも届かないな、と思っていたら既に部長が受け取ってたのか・・・!普段ポストなんて見ないくせになんでよりによって今日は見てんだよ!


「まあ、君がそういう奴だということが良く分かったから。楽しんで来てくれたまえ」


「ははは」


 乾いた苦笑いが精一杯。そのまま逃げるように外廻りへ出掛けた。


「なんでテメェはヒトの休日まで干渉してくんだよ!!このハゲ!!ねちっこいんだよ!!ハゲ!!だからハゲんだ!この、ハゲ!!一生独身やってろ!このハゲがっっ!!」


 あースッキリした!!・・・・釣りして忘れよorz


「・・・そういや、タマの熊はどうなったんだろう?続報ないけどやっつけたのかな~??タマタマ出たのかな?んー、可愛い熊もいるけど基本的には怖え~からなぁ~」


 帰りがけの喫茶店でエスプレッソをダブルで注文。チーズケーキをひとつ。至福の時。


「ぷっ!多摩だけにタマタマってなんだよ~!それに可愛い熊ってそんなんいるのか?まー、小熊は可愛いかなぁ」


 自分で言っといて自分に突っ込む。これぞボッチの特技なり。


「ええと・・・熊情報・・・多摩・・・あった!・・・ゲロゲロ~。まじか!『目撃された熊の個体は大きく、専門家によるとツキノワグマではない可能性も』・・・おいおい。デケえのかよ。だったらとっとと始末しろってえ~の!!・・・こりゃ~ダメだなぁ。家でリールでも分解して遊んでよ~」


 ガックリときてしまい、帰宅すると直ぐに冷凍室から青い瓶のジンとグラスを取り出す。小皿にレモンを絞りグラスのふちに塗ると塩をなすりつけジンを注ぐ。パキパキと冷気を放つボンベイの瓶を眺めひと息にクッとあおる。種ありのグリーンオリーブを一粒。またクッと。・・・一粒。クッ。・・・エンドレス。

 明日は初めから親父の所へ向かう気はないし、たまにはボーッとテレビでも垂れ流して昼はカップラーメン、夜は袋麺で卵でも落とすかなぁ。自堕落バンザイ。

 そんな事を考えながらチビリチビリとやって気がついたら寝落ちしていて朝になっていた。

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