第21 すぐに謝ろうね
あれから二日程何事もなく歩みを進めることが出来た。何かあったとすれば俺が狸のぬた場で足を取られそこに突っ伏してしまった事か。
「ダイジョブ??まだ、ダメっぽい?( ̄△ ̄)」
「ありがとう!・・・ん~、もうちょい、ってとこかな?」
ミーシャが集めて来てくれる果物がありがたい。基本的になま魚生活でも平気な俺の腹も、ぬた場の泥水の前には無力だったようだ。
「ラッパもねぇ ワカモトねぇ ストッパなんてあるはずねぇ 薬草は あるけれど どれがどれだか判らねえ!!おらこんな世界イヤだ~こんな世界イヤだ~・・・ってかあ?」
「アハハっ!歌は上手いけどゆってる意味が分からないんですけど(笑)なにそれ~~ヾ(≧∇≦)」
「うん・・・歌はともかくアッチの世界のお薬達だよ!中でもラッパはずば抜けた性能の万能薬なんだけどさ、アレはきっと異世界の獣のフンなのかもって思うくらい臭うんだよね~」
「フンΣ(・ω・ノ)ノやばくない!?」
「いやぁ~!!それが効くんだよ!!・・・クッソ~!今あったらなぁ~」
俺がコッチに迷い込んだ時に着ていたフィッシングベストには、絆創膏はあっても内服薬の類いは入れて無かった・・・ふらっと釣りに行くのに正露丸ベストに入れてく奴、居る??
「・・・コッチにゃドラッグストアなんて無いしなぁ・・・」
「・・・なんか・・・やっぱり帰りたくなってきちゃったの(´・ω・`)」
「ちょ!!そんなわけっ!!あったらなぁって、ちょっと思っただけだよ!!体が弱ると心も弱るの!!・・・あっ!!そうだ!!」
コロンの毛玉ネックレス!着けてるの忘れてたや!
「あ”~~モフモフモフモフモフモフ・・・あ~これ・・・思った通りだぁ・・・バッチグ~♪」
恍惚の表情を浮かべ空を見上げる。いまにも「ケンチ様~♡」とか言ってコロンが胸に飛び込んで来るようだ。そんでスゥが「不埒な!如何わしい!!呪われろ!」って罵って、エンフェイがカンラカンラと笑って・・・脳裏に賑やかな日常が流れてニヤニヤしてしまう。
「あ~モフモフモフモフ・・・幸せだなぁ・・・僕はモフっている時が一番幸せなんだ・・・」
「・・・ねえ、ケンチ。いま、いまもの凄~~く、だらしない顔してるよ!?触り方もなんかやらしいし・・・( ̄△ ̄)」
「な!?」
「フンが効くとか変な歌とかちょっとヒクくらいキモいわ( ̄○ ̄)だいたいケンチはさ、私達の中じや一番弱っちい~からホント世話のかかるってゆーか・・・ヾ(・ω・`)」
「おまっ・・・さっきからさ!俺の事ディスり過ぎじゃないか!?確かに俺のせいでなかなか先に進めないし、腹壊しちゃうしメーワクばっかりだよ?だけどしょうがないじゃないか!俺はただの人間なの!!お前らみたいに頑丈な出鱈目人間万国ビックリショーじゃねえのよ!!」
「でたら・・・!そんな言い方ないじゃない!(-_-#)」
「そんなもこんなもその通りだろ!?」
「あ”~~も~わかった!!も~なーーんも喋らない!ヒトにもなんない羆のままでいる!!ヽ(`Д´#)ノ」
「ああ結構!丁度いいや!コッチも斜面でチラチラパンツが見えてて目のやり場に困ってたんだよ!熊のケツの方がナンボかマシだねっ!!」
うわ~・・・やっちまった・・・_| ̄|○・・・売り言葉に買い言葉!俺の度量が狭かったって頭で判ってるのに引くに引けずについ・・・いや!でもミーシャも悪い!!
・・・それからは、二人ともただ黙々と斜面を登り谷を下り木々の間を抜けて歩いた。
「ここで寝る。食べ物は採ってこないから自分でなんとかして」
ミーシャが口を開いたのは辺りが薄暗くなってきてからだった。
「蓮蓮があるので大丈夫です」
「あ、そ」
お互いかギクシャクとしてなんとなく空気が重い。俺の方から「ごめん」ってひと言いえばいいのにタイミングってゆうか、気まずいってゆうか兎に角謝れない。蓮蓮を含むとたちまちに口の中の水分がもっていかれ喉につっかえそうになり、咽せそうになったのを水筒の水で無理矢理流し込んだ。
「はあ~~・・・」
わざとひとつ大きなため息を吐きミーシャの方をチラッとみてみた。妙なBGMがソッチの方から聞こえて来るからだ。
「うっ!?・・・怖っ・・・!」
思わず声に出る。ワンワンと唸るようなBGMは蜂の羽音だった!ミーシャがお皿のような物をバリバリとかじるとそれを返せとばかりに蜂が唸るが、ミーシャは意に介さず美味そうにほおばる。身体中にたかっているあの黒い蜂は・・・クロスズメバチ!地蜂の巣を掘って来たのか!!
「こっ・・・コッチに来んなよ!」
「ふん!!誰が行きますかってえ~の!・・・あぁ~美味しかった♡さてと、蜂が鬱陶しいから水浴びしてこよ♪・・・来んなよ(*`Д´*)」
「はっ!誰が行きますかってえ~の!」
ああ、もうダメだ・・・。ちょっとのズレがだんだん開いて大きな溝になりつつあるや・・・。本当はこんなつまらないケンカなんかしたくは無いのに・・・。
ミーシャが行ってしまうと、途端に虫の声やら木々のざわめきがおっかなく感じる。辺りが薄暗くなってきたせいもあり実に心細い。くそぅ、ミーシャめ・・・自分は獣人だからって(しかも羆)こんなん平気ですぅ~!ってか?呑気に水浴びなんて・・・早く、帰って来ないかな・・・。
「もうっ!!バカケンチ!!ホントバカッッ!!なんだよもう~!ちょっと揶揄っただけじゃんか!バカバカバカバカぁ~(。>ω<。)!!」
水面をバシャバシャと引っ叩き憂さ晴らしをしてみたが、ユラユラと揺れる自分の顔を見て、やっぱり自分が悪かったと思い凹んだ。
「なんであんな事言っちゃったかなぁ・・・。ケンチ、すごい怒ってたなぁ。う”~!あ”~!もうっ!!もっと早くにごめんちゃいってゆっとけば良かった~~っ!ブクブクブク・・・うん!よし!!戻ったら謝ろ!このままじゃヤダもん!!よし!行くぞ~、行くぞ~~・・・気まずぅ(>ω<;)」
ケンチの元へ戻ると辺りはすっかり暗くなっていた。彼が此方に背を向け横になっていた為に声をかけられず、やっぱり自分も背を向けて眠りについた。
チュンチュン チョットコーイチョットコーイ ホケキョ チユッチユッホイヨーホイヨー
底冷えと鳥達の歌声で目が覚めた。ミーシャはまだ寝息を立てていたが、俺が起き上がるとその気配で目覚めたようだった。
「お~、さむ!!・・・さあて、蓮蓮にのせる草イチゴでもなってないかなあ~」
わざと大きめの声での独り言。そんな事するくらいなら「昨日はごめん」って言えばいいのに、猫の額くらいの・・・いや、アリンコの額くらいの小さいプライドがオラついて絡んで来てその一言が言えないのだ。
寝起きの一言目に謝れなかった事を後悔しながら辺りを散策するがミーシャも後を付いて来ているようだ。いつもは“ノシノシ”なのに今日は“トボトボ”に聞こえて胸が締め付けられる。なんだかんだ言っても心配してくれるんだよな・・・。今もこうして“守って”くれてるんだから・・・やっぱり謝ろう。ただ、面と向かってはちょっと恥ずかしいってゆうかなんてゆうか・・・許してくれるかどうかも分からないし・・・。
「あ~!この辺までくれば聞こえないかなあ~?独り言でゆってみようかな~!!・・・ミーシャごめ~ん!!俺が悪かった!!売り言葉に買い言葉で余計な事言って本当にごめん!!俺、ミーシャと仲悪いままなんてイヤだ!ミーシャは許してくれるかなあ~!」
我ながら情けないと思うがこれが精一杯の勇気なのよ。・・・どうだ!?伝わったか??
「ずずっ・・・ひぐっ」
ゆっくりと振り向くと「もうならない!!」と言った筈の人型になっていて顔をくしゃくしゃにして泣くのを我慢しているミーシャがいた。
「ゴベンなざい!私、ケンチがわだし達に合わせようとい”っしょうけんめーなのに、全然違う世界で頑張ってるのに、馬鹿にしてゴベンなざい~(´;ω;`)私もケンチと仲がいいままでいだいよぅ( ノω-、)」
「俺も!!本当に・・・ごめん!!もっと早く謝ればミーシャを泣かすことなんてなかった!許してくれ!ミーシャ!!」
「うわぁあん・・・ゲンヂ~~。゜+(。ノдヽ。)゜+。」
俺に飛び付こうとするミーシャを受け止めるべく、両腕を目いっぱい広げる。やっぱり俺、ミーシャが好きだ!!
その時、突然涌いた雪崩のような白い霧が俺を押し流していった。




