魔物の街 97
カウラが去ったドアを見ながらしばらく呆然と部屋を見渡す誠。額を流れる脂汗。寒い部屋とは思えないその量を見て苦笑いを浮かべるとそのまま二度寝に入る。
「なによ、まだ寝てるの?」
意識が消えかけたところで今度はアイシャの声が耳元でした。飛び起きる誠。そんな誠をジャージ姿で見守っているアイシャはシャワーを浴びたばかりのようで石鹸の香りがやわらかく誠を包み込んでいた。
「起きてますよ」
そう言って再び体を起こす誠。アイシャはタオルで巻いた紺色の長い髪に手をやりながら誠の机の上の書きかけのイラストに目をやる。
「ああ、今回のコミケは私達はお手伝いはしなくていいんだったわね」
突然そんなことを言いながら今度は本棚に向かうアイシャ。そこには堂々と18禁同人誌が並んでいるが、同じものをコンプリートしているアイシャはさっと見ただけでそのままドアに向かう。
「なんだか寝ぼけた顔ね、シャワー浴びた方が良いんじゃないの?今なら空いてるわよ」
そう言ってアイシャが何事も無かったかのように部屋から消える。目が冴えてきた誠は立ち上がると押入れの中の収納ボックスから下着を取り出した。
「おい!元気か……って。寒いからって爺さんみたいに腰を曲げやがって!」
今度は朝から要の高いテンションの声が響く。下着とタオルを手にして誠が立ち上がった。
「おう、シャワーか?今なら空いてるぞ」
「知ってます」
そう言うとそのまま誠はドアに向かう。
「なんだよ、妙に暗いじゃねえか」
廊下に出ても要は珍しく誠に張り付いている。不安な部下に対するというより元気の無い弟を見守るような表情で階段を下りる誠についてくる要。
「あのー」
シャワー室の前の廊下で誠が振り返ると要は真っ赤な顔をしていた。
「分かってるよ!早く飯食わねえと置いてくぞ!それが言いたかっただけだからな!」
そう言って食堂に向かう要。誠は彼女がちらちらと振り向いているのを確認した後シャワー室に入った。服を脱ぎ終えてシャワーを浴びる誠。まだ夢の続きのように全身に力が入らないような気分が続いていた。
「おう、お前がいたのか」
島田の声がしたので振り向いたが、すでに島田は隣のシャワーに入っていた。
彼の声で島田が嵯峨達と同じ法術再生能力の持ち主であることを思い出してはっとする誠。それがわかっても誠にどう島田に声をかけるべきかと言う考えは浮かばなかった。
シャワーの音だけが響く。沈黙が続いた。誠は耐えられずに頭のシャンプーを流し終わるとすぐにタオルで体を拭いて出て行こうとした。
「今日からが正念場だな」
シャワー室から出ようとする誠に島田の声。誠は大きく頷くとドアを開ける。そしてそこでドアに顔面を強打して倒れている要とアイシャ、そしてサラの姿にため息をついた。




