魔物の街 96
寮に誠達が着いたときはすでに日付が変わっていた。小さいくせにやたらとタフなランとサイボーグの要以外はさすがに疲れて口を開く気力もなかった。誠は黙って部屋に戻ると着替えもせずにそのまま布団を敷いて眠ってしまった。
誠の視界が開かれた。保安隊が誇る人型兵器『アサルト・モジュール』05式特戦乙型。誠の全身にアニメやギャルゲーの登場人物の描かれた灰色の機体のコックピットの中。パイロットスーツに身を包んだ誠は惑星胡州の外周に存在するアステロイドベルトでの戦闘に参加していた。
模擬戦の時と同じくテロリストの使用する地球製の旧型アサルト・モジュールM5に輸出しようのM7が数機デブリを徘徊しているのを発見する。
『神前!焦るんじゃねえぞ!』
『そう言いながら最初に発砲するな!』
戦闘でレールガンを乱射する要機。押さえにかかるのを諦めたように誠の機体の先導に移るカウラ機。
『神前、乙種出動だ。サーベルだけで何とかしろ!』
カウラの通信に頷いた誠はサーベルを抜いて法術を発動。干渉空間を展開した。
だがそんないつもシミュレータでやっていた動作に違和感が走った。全身から一度は吸い取られたような法術の力が逆流して腕から先が膨らんでいくのが見える。誠はそのまま操縦棹から手を離し手袋を見つめる。
そのケプラーと合成ゴムの複合素材の手袋が紙袋のように簡単に千切れる。それに合わせて腕、太もも、そして胸までのパイロットスーツがちぎれとんだ。
『どうしたっ……て!なんだ!神前!』
「力が!力が……!」
膨れていく自分の体。モニターに映っているのは思わずヘルメットを外して手を伸ばそうとする要、驚きで口元に手を当てているカウラ。
「うわー!」
自分の体が際限なく膨らんでいく不安と苦痛。そして額に当たったモニターの一部分がもたらす痛み。
そして……。
「痛み?」
誠は目を覚ました。布団から転がり出ていつも漫画を描いている机の脚に額がぶつかっている。そして足元に人の気配がしたのでそちらを寝ぼけた視線で見つめた。
「大丈夫か?そんな格好でいたら風邪を引くぞ」
緑の髪の女性に視線を合わせる。ドアから顔をのぞかせたカウラがそのまま上体を持ち上げようとする誠のそばに座った。
「ああ、カウラさん。おはようございます」
「とっとと顔を洗え。それと鍵は閉めておくものだぞ」
そう言ってカウラはドアの外に消えていく。それを呆然と見守りながら誠は先ほどの夢を思い出していた。
昨日の同盟本部ビルの前で画面の向こう側で膨張した肉片と化した少女。恐らくは嵯峨やシャム、ランが持っている法術再生能力の暴走がその原因であることは理解していた。本来は意識でコントロールしている体組織の安定が損なわれた結果であり、誠には無い能力だった。
「でもなあ!」
自分にはありえない事故だとしても、もしかして……。そう思うと夢の中の体が崩壊していく感覚を思い出す。誠はそのまま布団の上にドスンと体を投げた。




