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魔物の街 95

「クバルカ先任。ワシはようやっとわかったことなんやけどな。意外と隊長は情報を握っとらんような感じがすんねん」 

 そう言って明石は再びテーブルの上のそばに手を伸ばす。さすがに客が増えて蕎麦の量はすでに七割がた減っていた。

「馬鹿にすんなよ。アタシも外から保安隊に入った口だ。吉田やリアナみたいにあのおっさんが万能だなんて思っちゃいねーよ。点々と得ることが出来た情報を的確につなぎ合わせ推理してみせる妙であたかもすべてを知っているように見せる。隊長のお家芸には感心させられるがな……って!西園寺!」 

「お子ちゃまですかー。わさび食べられないのはー」 

 まじめに話をしていたランのめんつゆにわさびを入れようとして怒鳴られる要。

「ああ!クバルカ中佐達も到着したんですか!」 

「これが最後ですよ」 

 島田とサラが二つの大きなざるに蕎麦を入れたのを持って現れる。にんまりと笑いながら場所を空けた要。それなりに大きな応接用のテーブルだが、あっという間に蕎麦で一杯になった。

「しかしあのおっさん何をしているんだ?上の情報はさっき明石がよこしたのですべてだろ?厚生局が動いていて横槍を入れる機会を狙っているって話だが……今の段階でアタシ等に手を出せば自首してみせるようなもんだと言うことぐらい分かっているみたいだし……」 

 あまりの蕎麦の量に呆れるラン。それを無視して要は蕎麦に箸を伸ばす。

「つまりあの志村と言うあんちゃんの携帯端末の情報が生命線なわけか」 

 話を戻そうとランがめんつゆを机に置いて明石に話を向ける。誠はひたすら蕎麦を食べながら二人の会話に集中していた。カウラも同じようで、若干緑色になるほどわさびを入れためんつゆをかき混ぜながら明石の禿頭を見つめていた。

「まあな。今回の同盟本部ビルの襲撃。明らかに秘密主義一辺倒の相手さんのこれまでの動きとは違う意思で動いとるなんちゃうやろか?あの肉の塊にされた餓鬼とそれを刻んで見せた三人の法術師……」 

「そーか?成果は挙げたら即時解散して証拠隠滅を図る。闇研究は引き際が肝心だからな。ど派手に動いて捜査の目をそちらに向けたあとで研究の資料を処分して同時に成果の売込み。一連の動きだと思うぞ」 

 明石の言葉に首をひねるランが再びめんつゆを手にして新しい方の蕎麦に手を伸ばす。

「どうしたの?正人」 

 蕎麦を啜りながら二人の話を聞いている隊員達の中、一人島田の箸が止まっているのに気づいたサラが声をかける。

「売り込みに動くにしてもしばらく地下にもぐるとしてもこの数日間で組織の尻尾を掴まないと……」 

「綺麗に闇に消えて終わり。どちらかはアタシにゃー分からねーがそれがこの一連の事件を仕掛けた人間の筋書きだろーな」 

 そんなランの言葉。茜は苦い顔をしながら箸を休めている。

「いいんですか?それで」 

 島田がそう言うとランはきつい視線を彼に投げる。

「今、証拠の分析を行っているのは東都警察で……」 

「なんですぐ重要な資料を渡したんですか!もし内通している人間がいたら!」 

 立ち上がった島田の肩を要が叩いた。

「落ち着けよ」 

 島田はそれに従うようにしてゆっくりとソファーに腰掛けて一度伸びをする。

「なあに、動くときがくればどこよりも早く動いて見せるさ。なー!」 

「そう言うことですわね。しばらくはその時の為に英気を養うべきときですわよ」 

 ランと茜の含みのある笑みにようやく安心したのか、島田はめんつゆを手にすると次々と蕎麦をたいらげはじめた。

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