魔物の街 77
すぐにカウラは路地から国道に車を進めた。地球外惑星を代表する企業である菱川重工業の企業城下町らしく次々とトレーラーが通る国道を、車高の低いカウラのスポーツカーが走る。
「でもあれよね。乗り心地はパーラの四駆の方が良いわね」
「だったら、今降りても良いんだぞ」
余計なことを言うアイシャとそれに突っ込む要を振り返りながら、誠は次々と三車線の道をジグザグに大型車を追い抜いて進む車の正面を見てはらはらしていた。カウラはそれほどはスピードは出さないが、大型車が多く車間距離を開けている時はやたらと前の車を抜きたがる運転をする。そして駅へ向かう道を左折してがくんとスピードが落ちる。周りは古い繁華街。見慣れた豊川の町が広がる。
「あそこのパチンコ屋は駐車場があったんだが……うどん屋では?」
「ああ、パチンコ屋の立体駐車場は取り壊し中だ。いつものコインパーキングが良いだろ」
要のアドバイスに頷いたカウラは見慣れた小道に車を進めた。そして古びたアパートの隣にあるコイン駐車場に車を止める。隣には見慣れた白い乗用車と金髪と白い髪の長身の女性達が話し合っているのが見えた。
金髪の長身の女性が保安隊警備部部長のマリア・シュバーキナ少佐、そして白い髪の女性が運用艦『高雄』艦長の鈴木リアナ中佐だった。
「まあ!神前君!」
ほんわかした独特の声が響く。アイシャと要に急かされて一番に下りた誠に優しげな声をかけてくるのはリアナだった。地球人に無いつやのある髪の色は彼女が第二次遼州戦争で兵士として開発された人造人間であることを示していたが、その笑っているようなつくりの美しい笑顔はそんな来歴とは関係ないように誠の心を捉える。
「アイシャ、良いのか?私たちが来ても」
「マリアさん、大丈夫ですよ。あの件ではどうやらお世話になりそうですから」
「あの件?」
空気が読めずに誠がつぶやくとカウラが失望したような視線で誠をにらみつける。
「バーカ。ランの奴も無駄におごったりするわけねえだろ?今はライラの遼南軍と言うライバルが出来たんだ。こちらの捜査部隊も数をそろえなきゃ」
そう要に言われて誠も納得した。
「じゃあ行くぞ!」
マリアの笑顔を見ながら誠は商店街のアーケードに飛び込んだ。平日の日中と言うことで客の数は思ったよりも少なかった。
「はやってるんですかね」
誠の言葉に答える代わりに指をさすアイシャ。そこには腰に手を当てて胸を張るランが見えるが、隣にセーラー服姿の小夏の姿があった。彼女は部隊のたまり場『あまさき屋』の看板娘で、要とは犬猿の仲として知られていた。
「おい、小夏!学校はどうした!」
「へーん!今日はテストで午後は休みですよーだ!」
いつものように突っかかる要に舌を出す小夏。いつもの事ながらすぐに同レベルで喧嘩を始める要にあきれ果てたという顔のマリア。
「おう、アイシャ。やっぱり気づいてて二人を呼んだんだな」
「そうであります!中佐殿!」
そう言うとアイシャは素早く暖簾をくぐって店に消える。誠は『讃岐うどん』と書かれたのぼりを見ながら店の中に入った。




