魔物の街 74
「それは良いんですけど……皆さんなんで謹慎しているんですか?」
コントローラーを奪い返した西がようやくレベッカと並んでゲームをしながらつぶやいた。レベッカも不思議そうに誠達を見つめてくる。一応、今回の調査は極秘事項である、問い詰められた誠は冷や汗をかきながらこう言うときには頼りになる要を見た。
「東都でドジを踏んだ。それだけだ」
そう言うと要はタバコを取り出すが、すぐにレベッカに白い目で見られてため息をつくとタバコを仕舞う。
「お前に話すと部隊全員に知れ渡るからなあ」
「島田班長!そんなに僕の信用は無いんですか?」
そう言ったとたん西が画面を見つめて口をつぐむ。それを見てこの部屋を埋め尽くしている人々は皆が画面を見つめた。
『謀反!謀反じゃ!嵯峨和泉守!謀反にござりまする!』
非常事態を知らせる音楽。コントローラーを取り落とす西。何度か画面の数値を確かめたあと、アイシャが忍び笑いをもらしているのに誠は気づいた。
「やっぱりあの数値じゃ駄目なのか?」
「そうね、このゲームは忠誠度80以下だとばんばん謀反起こすから。それに隊長の義理が0だから特に謀反を起こしやすい状況だったのよ。でも凄いわね、開始4ターンで謀反て」
そう言うと再びアイシャが笑い始める。要は納得が言ったように画面を見つめる。
『神前様、鈴木様、シュバーキナ様が嵯峨殿につきました!』
バックに流れるクライマックスの音楽と共に次々と西の支配から脱して嵯峨側に寝返る部隊の主要メンバー。
「これはひどいですわね。西さんの味方は……奥さん役のシンプソンさんだけ」
同情するように茜がレベッカを見やる。レベッカは口を押さえて画面を見つめていた。
「でも兵力はこちらの方が多いから……って!城乗っ取られた!」
絶望的な西の言葉と共に画面の中で次々と自決する西家の家臣達。そして倒れる鎧武者と共にゲームオーバーの画面が現れた。
「ああ、楽しかったな。西いじめるの本当に面白いよな」
「お前、やっぱり隊長の姪だってよくわかるな」
「おい、カウラ。それはどう言う意味だ?」
いつものように要とカウラが喧嘩を始めそうになるとランが手を叩いてみせる。
「オメー等いい加減にしねーと昼めし、おごってやんねーぞ!」
そう言って立ち上がるラン。全員の視線が彼女の幼い面差しに注がれる。
「あのー僕達は?」
「西。お前はデート中だろ?」
「これはデートとは言わないような……」
西の反論を無視してランはそのまま部屋を出て行く。
「おごりって……なんだ?」
腑に落ちない表情の要の顔を見上げたランの目には自信がみなぎっているのが誠にもわかった。




