魔物の街 73
「そのーあの、皆さん。謹慎を命じられたといってもこう遊んでばかりでは……」
「良いんだよ」
コントローラーをいじる要。その様子は落ち着いていた。いつもの彼女なら壁やドアにでも八つ当たりをするのではないかと思っていた誠だが別にそう言うわけでもなくただ面白そうに画面を眺めている。
「良いんじゃねーの?」
それを見ながら隣で西から取り上げたポップコーンを口に運ぶラン。彼女なら嵯峨の副官としての仕事がこなせないことにストレスでも感じそうなところだが、そんな様子は一つも無かった。
「これでよろしいのですわ」
平然と黒髪をかき上げる茜。畳を触って汚れが無いことを確認しながら座る彼女にまるで緊張感は感じられなかった。
「そうねえ、別にいいわよね」
「そうだな。特に問題はない……と言うわけで」
アイシャとカウラもまるで仕事のことなど忘れたようだった。再びぎらぎらした視線で誠をにらみつけてくる。壁際に追い立てられてじっと息を潜める誠。
「おい、いじめもいい加減にしろよ。それと神前は納得できない顔しているけど説明するか?」
何度見ても幼女にしか見えないランがポップコーンを食べ終えて振り向いた。口の周りのかすがさらに彼女の萌え要素を倍増させる。
「ライラさんの部隊が任意の捜査を始めてまだ時間が経っていないからですか?」
思いついてすぐ口に出した言葉にランは満足そうに頷いてみせる。
「なんだよ、分かってるじゃねーか。山岳レンジャーの主要任務は敵支配地域奥深くに秘密裏に浸透、そこで敵勢力の混乱のためのデマゴーグ活動や反政府勢力の煽動なんかをやることだ。捜査活動なんかはお手の物とはいえ捜査を始めてまだ一日経っていないしな。それに同盟厚生局も指をくわえて見ているわけもねーだろ?反撃の準備、研究の再開の為のタイムスケジュールの調整。いろいろ動いているところだろーな」
そう言ってかわいい天使のような笑顔を誠に向けてきて思わず誠は萌えを感じていた。
「おい!これはまずいだろ」
要が画面を指差す。それを見てアイシャとカウラもようやく誠から離れて画面を覗く。そこには鉢巻を締めた少女の顔と能力値が表示されていた。
「知力3……一桁?おい、西よ」
哀れむような視線を西とレベッカに向ける島田。要も端末を取り出しそれを写真に収める。
「何してるんですか!」
西が抵抗するがすぐにサラと島田に羽交い絞めにされる。その武将の内政値などの絶望的数字を見て誠は冷ややかに西を眺めた。
「シャムは確かにアホだがここまでひどくないな」
模擬戦で負け知らず、遼南内戦などの実戦でのスコアーも最高のエースである、ナンバルゲニア・シャムラード中尉の姿とそれを告げ口しようと写真を撮る要にすがるような視線を投げる西。
「確かにひどいですね」
「そうだぞ!せめて……」
そう言うと要はコントローラーを操作する。知力の欄にカーソルを合わせて数値を8にした。
「これでリアルだ」
「あの、それでもかなりアホなんですけど」
誠はあきれ果てた。その視線の中には得意顔の要がいる。アイシャは同意するように頷き、ランも納得が言ったような顔をしていた。
「アホでないシャムに価値は無いんだ!」
一言で斬って捨てるランの姿はある意味すがすがしいと誠は思うことに決めた。




