魔物の街 65
そう言うと嵯峨はタバコを再び口にくわえて、足元の三上と言う指揮官を軽く蹴飛ばす。
「コイツに話を聞こうと思ったんだけどさ。まあ記憶が消されてるみたいでまるで話のつじつまが合わなくてさ。完全にマークされてるな。やられたよ」
嵯峨の言葉に要の顔が硬直する。
「じゃあこっから先の情報は……事件の糸は切れたわけですか」
そう言いながら銃口を下げるラン。
「ぷっつんだな。それにこんだけ派手に動いたんだ。相手もかなり警戒することになるだろう。一声、俺に話しとけば何とかできたかもしれねえが……もう終わったことだ」
いつの間にか外の銃声が止んでいた。そしてフル装備の茜達の陽動部隊が入ってきた。
「ああ、お父様」
明らかに茜の声は沈んでいた。察しのいい茜である。この場所に来るまでの景色で状況を理解しているように見えた。
「茜。なんなら安城さんに頭下げるか?機動隊の情報網ならなにか引っかかるかもしれないぞ」
嵯峨の言葉に茜は首を横に振った。いつも物腰が柔らかい茜にしては珍しい意固地な表情に誠は驚いていた。
「機動隊に頼めば確かに発見できる可能性は上がりますが、あちらの任務は非法術系の捜査活動に限定されているはずですわ。法術にからむ犯罪は私達の……」
「そうか。まああちらは俺達と違って暇も無いだろうしな。なら俺も手伝ってやるか」
そう言うと嵯峨は立ち上がる。頭を掻いてそのまま誠に近づくと手を伸ばした。
「なんでしょう?」
「端末」
嵯峨の言葉に誠は銃のマガジンが刺さっているベストから端末を取り出して嵯峨に手渡す。
「茜、あんまり期待しないでくれよ。俺も神様じゃねえから、情報網の幅が広いのはそれだけ人生を積み重ねてきただけ……出た」
その嵯峨の言葉に茜とランが画面を見ようと飛び出して頭をぶつけてそのまましゃがみこむ。
「あのなあ、逃げたりしないから……ほい、拡大」
そう言うと嵯峨は端末の画面を拡大してみせる。
「ゲルパルトの退役軍人支援団体ですか」
島田が画面に映る凝ったフォントが踊るサイトの表紙を見つめている。嵯峨はそれに入力が出来ないはずのパスワードを打ち込んで次の画面へと進む。
「オデッサ?」
茜が頭をさすりながら画面を見つめる。『ネオ・オデッサ機関』。ゲルパルトの戦争犯罪人として追われている人物達の互助会と言うことで誠も名前を聞いたことがあった。
「叔父貴、ずいぶんと大物が釣れたじゃないか」
目を見開く要だが、嵯峨は表情を一つとして変えることが無い。
「ああ、こいつらは関係ないよ。裏は取ってある」
そう言うと画面を検索モードに戻す嵯峨。明らかに遊んでいる嵯峨の態度に要が拳を握り締める様を誠はひやひやしながら見つめていた。




