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魔物の街 63

 その日の深夜。誠は一人、自分用にキムがカスタムしてくれたサブマシンガンを抱えて、路地裏のごみの山の陰で待機していた。

 東都租界、同盟軍第三基地。東都駐留遼南軍の基地は目の前に見える。魔都と呼ばれる東都租界の住民達もさすがに表立って軍の施設に近づくのは気が引けるようで、基地の入り口でたむろする警備兵以外の人の気配は感じなかった。

『なんだよ、敵兵が起きてるぞ。遼南軍の見張りは眠いと眠るんじゃないのか?』 

 感応通信で愚痴るのは要。光学迷彩を使用して待機している彼女の姿を当然ながら誠は見ることが出来ない。

『都市伝説をあてにするとは、腕が鈍ったんじゃないですか?』 

 裏口からの襲撃の機会をうかがっている島田の声が響く。正面部隊への対応の指揮はラン。カウラと要、そして誠が攻撃を担当する。裏門の対応には指揮は茜。それにラーナとサラ、島田が待機していた。

「寒いですよマジで」 

 そう愚痴る誠だがそこに不意に光学明細を解いた要が現れて驚いて銃を向ける。

「おい、物騒なの下げろよ」 

 実地偵察を終えて帰ってきた要は、誠を押しのけると後ろでライフルを抱えているランに声をかける。

「緊張感はゼロだ。あの衛兵達、規則どおりに銃の薬室には弾が入っていないみたいだぞ」 

 そんな要の言葉にランは右手を上げた。影を静々と進む誠達。警備兵達は雑談を続けるばかりで気づくわけも無かった。

 直前、30メートル。衛兵達はまだ気づく様子は無い。ランに二回肩を叩かれた要は光学迷彩を展開する。

 衛兵達の談笑が突然止まる。眼鏡の衛兵の首をぎりぎりと何かが締め付けていた。話し相手をしていた色黒の伍長が驚いたように銃に手をやるが何者かの足がそれを蹴飛ばす。

「今だ!」 

 ランの声に突入するカウラ。カウラがベストから取り出した薬剤を警備兵の顔面に散布するとそのまま意識を失った。

「さて、結果はどうなるのかねえ」 

 そう言いながら光学迷彩を解除して基地のゲートをくぐる要。裏手から発砲音が響き始める。

「向こうも始まった。西園寺、先導を頼むぞ」 

 ランは呆然と窒息死した警備兵を見下ろしていた視線を引っ張り上げて立ち上がる。正門の警備兵が倒されているが、裏門の派手な銃撃戦に気を引かれている基地の兵士達は寝ぼけた調子でとりあえず護身用の拳銃を手に裏門へ走っている様が見える。

「撃つなよ神前。アタシ等は見つかったら作戦中止だ」 

 先頭を歩いていた要が振り返る。誠は大きく頷いた。隊舎の建物の裏手、影の中を誠達は進む。遭遇する敵兵はいない。

「茜もやれば出来る子なんだな」 

 要は皮肉のつもりでそう言うと影の中を確認しながら裏の武器庫の隣をすり抜けようとする。

「誰だ!」 

 武器管理を担当しているような感じの士官が拳銃を向けているのが誠の目にも入った。しかし慌てずに要はそのまま士官の手に握られた拳銃を蹴り落とす。そしてすぐさまサバイバルナイフを手に士官を締め上げた。

「眠ってろ」 

 要は士官の口に薬剤のスプレーをねじ込むと噴射する。意識を失う男を確認すると、そのままラン達を引き連れて隣の別棟にたどり着いた。

「さあて、どんなものにお目にかかれるかねえ」 

 軽口を良いながら飛び出した要は歩哨を叩き伏せて入り口の安全を確保した。

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