魔物の街 58
「でも……僕達を監視しているって宣言してみせる意味が分からないんですけど」
そんな誠の言葉に落胆した表情を浮かべるのは要だった。
「あのなあ、アタシ等の監視をしていると言うことはだ。いずれこの監視をしている連中の利害の範囲にアタシ等が関わればただじゃすまないぞ、と言う脅しの意味があるんだと思うぞ。実際、物理干渉型の空間展開なんかを見せ付けているわけだからな。どんな強力な法術師を擁しているか分かったもんじゃねえよ」
頷く誠。そしてようやく吉田の手から脱出したシャムが誠の端末の画面を覗き込んできた。
「なんでこんなことしたのかな」
「アホか?今の話聞いてただろ?」
そう言うと始末書の作成に取り掛かる要。だが、シャムは相変わらず首をひねっている。
「だって、ただ邪魔をしたいとか監視していることを知ってほしいなら、直接要ちゃん達に仕掛ければ良いじゃないの」
シャムの何気ない一言にランが顔を上げた。
「そうか!カウラ、車は出せるか?」
「ええ、良いですけど……始末書は?」
「そんなものはどーでもいーんだよ!」
ランはすぐに立ち上がって背もたれにかけてあったコートを羽織る。カウラも呆然と様子を見ている要を無視して立ち上がった。
「どうしたんですか?」
心配そうな誠の声にランは満面の笑みを返す。
「そうなんだよ!アタシ等に直接攻撃を出来ない理由がある連中を当たれば良いんだ」
そう言ってドアにしがみついている楓の肩を叩いて出て行くラン。それをカウラは慌てて追った。
「なんかアタシ言ったの?」
呆然と立ち尽くすシャム。誠も要もランのひらめきの中身が何かと思いながら仕事に戻ろうとした。
「知りたいか?」
「うわ!」
誠は耳元に突然囁きかけてきた吉田に驚いて飛び上がる。それを見て笑みを浮かべる吉田。
「何か知ってるのか?」
要のいぶかしげな顔に吉田は首筋からコードを取り出して端末のスロットに差し込む。いじけていた楓と渡辺も寄り添うようにして吉田の捜査している誠の端末の画面を覗きこんだ。
「つまりだ、お前等に直接邪魔をすると困る。言い換えれば司法局に介入されると困る人が悪趣味な人体実験の片棒を担いでいると言うことはだ」
そう言う吉田が画面に表示させたのは同盟の軍事機構の最高意思決定機関の組織図だった。




