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魔物の街 57

 さすがにやりすぎたかと思いながら端末に集中しようとした誠の視界に、島田が久しぶりに見る整備班員のつなぎ姿で廊下を見ながら部屋に入ってきたのが見えた。隣にはサラがニヤニヤ笑いながら廊下の騒動を眺めているのが見える。

「ベルガー大尉。あれ、何とかした方が良いですよ」 

 そう言って隊長室の辺りを指差す島田。カウラとランが飛び出していく。誠もつられてついていって見ると要にしがみつきながら泣いている楓とドサクサ紛れに胸を揉む彼女の手をつねり上げている要の姿が見えた。

「あれは一つのレクリエーションだからな」 

 カウラはすぐに引き返して仕事を続ける。

「どうなんだ、そっちは?」 

 ひとたび呆れたようにそのまま席に戻ったランが島田に声をかける。頭を掻きながら要達の騒動を見つめているサラを振り返ると諦めたような笑みを浮かべる。

「どうもねえ。口が堅い人が多いのか、それとも本当に何も知らないのか微妙なところでしてね。とりあえず今日は独自のルートで捜査するからって茜お嬢さん達は出かけたわけですが……」 

 明らかに煮詰まっているのがわかって誠も島田に同情した。

「アタシ等も第三者に監視されている状態だしな。どこかの馬鹿が要みたいに状況にいらだって動いてくれると楽なんだけどなー」 

「不謹慎な発言は慎んでください」 

 ランの言葉に突っ込むカウラ。それを見て舌を出すランを見て誠は萌えを感じていた。

「でもこの監視している画像を撮った人は何者なんですかね」 

 誠の言葉にランは首をひねる。実働部隊の詰め所のドアにはようやく楓を引き剥がした要が息を荒げて部屋に入ってくる。

「それか?出所は在東和遼南人協会のサーバーからのアクセスだそうだ」 

 そう言って自分の席に座る要。楓は廊下で指をくわえて要に熱い視線を送っている。

「初めて聞く名前ですね。それってどう言う組織ですか?」 

 誠の何気ない発言にカウラが失望したようにため息をつく。

「遼南内戦で敗北した共和軍の亡命者が作った団体だ。主に構成員は前政権の官僚や軍の関係者が多かったが、最近では東海の花山院軍閥の関係者が多いな。一時期の人民党の圧政や経済の混乱で発生した難民の相互利益の確保を目的としていると言うのが建前だが実際のところは嵯峨朝とその後の政権の悪口を喧伝して回っている暇人の集団だ」 

 カウラの言葉に要が苦々しげにさらに話を続けた。

「表向きはそうだが実際には裏ルートでの物資の流通を管理していると言う話もある……まあ胡散臭い団体だな。近藤事件でも資金のロンダリングを近藤忠久中佐に頼んでいた資料はお前も見てるはずだから覚えておけよ」 

 その言葉でようやく誠も親胡州系のシンジケートの中にその名前があったのを思い出した。

「でもなんでそこの関係者がこんな画像を撮れたんですか?」 

「サーバーを使ったからってこのビデオの撮影をした人間が在東和遼南人協会の関係者とは限らねーだろうが」 

 キーボードを叩きながらランが突っ込む。

「無関係では無いとは思うが少なくとも吉田にそのサーバーを介して情報を流す意図を持った人物が、アタシ等の監視をしていることを印象付けたかったと言うことは間違いないだろうな」 

 要はそう言って自分の端末の画面を開いた。

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