魔物の街 54
その時、突然カウラの携帯端末が着信を告げた。取り出したカウラの前には発砲する要とそれを見ながら端末を覗きこむランの姿があった。
「中佐!大丈夫ですか!」
思わずカウラが叫ぶのを聞くとランは苦笑いを浮かべた。
「要の馬鹿がやりやがった!相手は胡州軍の駐留部隊だ」
そう言うと画面から離れてサブマシンガンで掃射を行うラン。そして全弾撃ちつくすとマガジンを代えて再び端末に向かう。
「隊長には連絡したから向こうの発砲も収まるだろうが……どうせ拘束されるから身柄の引き受けに来てくれ」
ランは通信を切った。
「何やったんだ?あの無鉄砲が」
そう言うとカウラはメロンソーダを飲み干してホルダーに缶を差し込む。そのままエンジンをかけて車は急加速で租界の入り口へ向かう幹線道路へと走り出す。
「胡州軍か。これは隊長の大目玉は確実だな」
カウラはそうつぶやくとさらに車を加速させる。瓦礫を運ぶトレーラーの群れを避けながら進むカウラのスポーツカー。再び端末に着信を知らせる音楽が流れる。
「頼む、見てくれ」
そう言われるまま手に取った端末には死んだ魚の目の嵯峨が映っていた。
「おう、駐留軍の基地に向かってるか?」
「ええ、今急行しています」
「うむ」
誠の返事を聞くと頭を掻く嵯峨。隣に目をやるのはそこに吉田がいるからだろうと推測がついた。
「同盟軍とはやりあいたくは無いんだけどな、いつかは世話になるかもしれないし。だが起きたものは仕方が無いよね。ベルガー、頼んだぞ。あくまで穏便にな」
「了解しました!」
そのまま通信は途切れた。
「理由は?なんで撃ちあいなんかに?」
「ああ、そうか。説明してなかったな」
急ハンドルを切って幹線道路に飛び出すカウラ。ようやくパトランプを点灯させそのまま租界へと向かう。
「例の志村とか言うチンピラを追って胡州軍の資材管理の部署までたどり着いたんだそうだ。今日はそこの調査に出るって話だったんだが。定時連絡ではそこで明らかにおかしい明細を提出している士官がいるって事で二人はその人物の身柄の確保に動いたんだ。だが、この状況からいてその部署どころか駐留軍の部隊長クラスが糸を引いてたらしいな」
そう言うカウラの前には租界のバリケードが見える。急ブレーキで臨検の兵士の直前で車を停止させるカウラ。バリケードの影から兵士達がわらわらと沸いて車を囲い込む。
誠は銃口を向けられながら取り囲まれる雰囲気に圧倒されて両手を挙げて周りを見渡した。




