魔物の街 43
「ああ、言っとくの忘れたけどコイツが今の上司だよ」
そんな要の一言が男の手を止めた。
「嘘……ついても意味の無いのは嫌いでしたね姐御は。で、このお坊ちゃんは?」
チンピラは挑戦的な目で誠を見つめる。
「おい三郎!店の邪魔だからとっとと消えろ!」
そう言う大将を無視して三郎と呼ばれた男はそのまま椅子を引きずって誠の隣に席を占める。
「いい加減注文をしたいんだが、貴様に頼んで良いのか?」
カウラの言葉に驚いたような表情の三郎だが、すぐに彼は品定めをするような目でじろじろとカウラを眺めた。
「なんだ、気味の悪い奴だ」
「人造人間ってのは肌が綺麗だって言いますけど、本当っすね」
そう言ってにじり寄る三郎を見て困ったように誠を見るカウラ。誠はただ周りの不穏な空気を察して黙り込んでいた。そのまま値踏みするような目でカウラを見た三郎はそのまま敵意をこめた視線を誠に向ける。
「へえ、こいつが今の姐御の良い人ですか?」
「そんなんじゃねえよ。注文とるんだろ?アタシはキツネだ」
三郎は要の顔を見てにやりと笑って今度はランを見た。
「てんぷらうどん」
ランはそれだけ言うと立ち上がる。
「ああ、お水ですね!お持ちしますよ」
下卑た笑顔で立ち上がった三郎はそのままカウンターの冷水器に向かう。
「ああ、姐御のおまけの兄ちゃんよう。姐御とは……ってまだのようだな」
ちらりと誠を見て笑みを浮かべる三郎。カウラは黙っているが、誠もランも三郎が要と肉体関係があったことを言いたいらしいことはすぐに分かった。
「私は……ああ、私もてんぷらうどんで」
カウラはまるっきり分かっていないようでそのまま壁の品書きを眺めている。
「僕はきつねで」
「きつね二丁!てんぷら二丁」
店の奥で大将がうどんをゆで始めているのを承知で大げさに言うと三つのグラスをテーブルに並べる三郎。
「おい、コイツの分はどうした」
明らかに威圧するような調子で三郎を見つめる要。子供じみた嫌がらせにただ苦笑する誠。
「えっ!野郎にサービスするほど心が広いわけじゃなくてね」
その言葉に立ち上がろうとする誠を要は止めた。
「店員は店員らしくサービスしろよ。な?アタシもそのときはサービスしたろ?」
要がわざと低い声でそう言うと、三郎は仕方が無いというように立ち上がり冷水器に向かった。




