魔物の街 30
会議室の扉の中ではすでにアイシャと島田、そしてサラが茜の説明を受けているところだった。
「ああ、いらっしゃいましたのね。ラーナさん。説明をお願いするわ」
そう言うと茜は再びアイシャ達に説明を始める。
「じゃあ、よろしいですか?クバルカ中佐」
「おー始めてくれ」
ランはすぐに携帯端末を開く。誠とカウラもすぐにポケットから手のひらサイズの携帯端末を開き、その上方に浮かぶ港湾地区の地図に目をやった。要はいつものように脳内と直結させて情報を仕入れているようだった。
「今回の捜査ですが、茜さんと私、それにクラウゼ少佐、グリファン少尉、島田准尉のチームとクバルカ中佐、ベルガー大尉、西園寺大尉、神前曹長のチームに分かれます」
「残念……と言うか要ちゃん!誠ちゃんに変なことしたら承知しないわよ!」
「誰がだ!」
アイシャの茶々に怒鳴り返す要。それを無視してランはせかすような視線をラーナに向ける。
「港湾地区のエリアですが、私達は主に陸地側と租界ラインから内側の地域を担当、クバルカ中佐達はそれより租界側と租界内部の調査をお願いします」
ラーナの言葉が当然と言うように頷く要。
「西園寺、テメーの人脈はどうなんだ?使えるか?」
小さなランの頭が要に向き直る。
「あてには出来ねえな。実際、三年前の同盟軍の治安出動でやばい連中はほとんど店じまいしたって聞くしな。それに叩けば埃が出る連中がこんな堅物をつれて回ったら何にもしゃべるわけがねえよ」
そう言って隣のカウラを見る。誠も私服を着ててもどこか軍人じみたところがあるカウラを見て苦笑いを浮かべた。
「だろーな。そうするとチームは必然的にアタシと西園寺。ベルガーと神前の組み合わせになるな」
ランの言葉にカウラをにらむ要だが、すぐに何かを思いついたように黙り込んだ。
「でもどう調べれば良いのですか?人体実験を行うプラントなどなら警察や諜報機関が察知していても良いはずなのに……そちらの情報は無いんですよね」
確認するようにカウラがラーナにたずねると、彼女はその視線を要に向けた。
「まあ諜報機関はあてにならねえな。あいつ等は上層部の意向で動いている連中だからトップが情報を出してもOKが出ない限り口は開かねえのが任務のうちだ。それに東都警察の方は手が届かない租界内部に本拠があるかも知れねえから期待はできねえ。沿岸の再開発地区の広すぎる地域をカバーするだけの警察の人手が無いのも事実だけどそれを外様のアタシ等に言いふらすほど酔狂じゃねえだろ」
要はそう言うとランを見つめる。
「それにだ。非合法とは言え明らかに先進的な法術覚醒や運用の技術を持ってる連中が相手とすれば、その情報を欲しがっている国の庇護を受けている可能性もある。そうなれば相手はチンピラじゃなくて非正規部隊だ」
そんなランの言葉に誠は握り締めていた手に力が入る。
「でもそれなら僕達でなんとか出来るんですか?」
誠の顔を見てランが不敵に笑う。
「上はそれだけのオメーを評価しているってことだ。ラーナ、とりあえず捜査方針とかは後でアタシのデータに落としといてくれ。行くぞ!こんなところでくっちゃべったところで仕事にならねーだろ?」
そう言って椅子から降りるラン。誠はそのかわいらしいしぐさに萌えを感じてしまう。
「ロリ!ペド!」
要はそんな誠の頭を軽く叩くと会議室の扉に手をかけるランの後ろに続いた。




