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魔物の街 29

「いいです!食べますよ!」 

 誠はそう宣言して口に芋虫を放り込む。

 しばらくはざわざわと口の中をうごめく感覚で口をふさぐことが出来ない。無理やり口を閉じて押しつぶす。それでももぞもぞと動く感覚が口の中に広がる。

「大丈夫か?顔が青いぞ」 

 要の声も聞かずにひたすらかみ締めて、ようやくぐちゃぐちゃになったものを喉の奥に押し流した。

「なんだ……これか」 

 スタジャンに着替えたカウラが部屋を覗き込んだ。ニヤニヤ笑うシャム、要、ロナルド。苦い顔の岡部とフェデロ。そして明らかに違和感を感じるような絶望した顔の誠がいた。

「神前どうしたんだ!」 

 すぐに駆け寄るカウラだが、誠の手の中のマグカップを見て納得した。

「そう言うことか……」 

 カウラの頬が引きつっている。

「そう言うことだ。なに、意地悪じゃねえぞ。あくまで鍛えてやっただけなんだから」 

 カウラの言葉に要は浮かれた調子で最後の芋虫を口に入れて机の端末を開いた。

「まあアタシにはいじめとしか見えなかったけどな」 

 すでに確認作業を終えて椅子から降りるラン。そこに死に掛けたような表情の楓が帰ってきた。

「大丈夫か?嵯峨」 

 ランの言葉にただ呆然とした表情のまま頷く楓。その背中をさする渡辺。

「それじゃあ、会議室。いくぞー」 

「あれ?カウラちゃんは食べないの?」 

 シャムの言葉にカウラに視線が集まる。

「それはお前へのプレゼントだ」 

 シャムにそう言って素早く部屋を出て行くカウラ。

「逃げやがったな」 

 要はその有様を見ながらにんまりと笑って、まだ嗚咽を繰り返している誠の肩を叩いた。

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