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魔物の街 3

「まずはこちらの写真はどうかしら?」 

 茜の差し出した写真に一同が目を向ける。

 ミイラ化した死体。着ていた赤いセーターの袖などが焼け焦げて無残に見える。カウラと誠はすぐにそれが何かを思い出した。

「法術暴走した適正者の死体ですか。以前、整理を頼まれた資料のものですね」 

 カウラのその言葉に要は思い出したように手を打ってそのまま茜を見つめる。

「ねえ、何のことよ」 

 資料に目を通していないアイシャは要とカウラを見比べながらそう言った。サラや島田はただそのミイラ化した死体の写真から目が離せないでいた。

「この半年あまり……正確に言うと例の『近藤事件』で法術の存在を神前曹長が全宇宙に知らしめた後ですわ。すでにこのような死体が東都周辺で7体見つかってますの」 

 そう言うと全員の顔を見渡してもう一枚の写真を取り出す。

 そちらの写真は誠も初めて見る写真だった。

「なんだこりゃ?」 

 要の言葉が全員の感想を代弁していた。そのミイラ。着ていたグレーのコートはどす黒い血にまみれている。右腕を肩の根元から切り落とされているように見えるのでそこから流れ出たのかもしれない。だがその肩からは中途半端な長さの子供の腕のようなものが生えていた。

「法術適正ってのは腕を切っても再生するんだ。便利ですねえ」 

 いつもと違う抑揚の無い島田の言葉。遺伝子検査で遼州の先住民族の血が誠より濃いが法術適正が無いとされた島田の言葉に一同が沈黙する。

「そんな、黙り込まないでくださいよ!それよりこの血はこのミイラさんのものだったんですか?」 

 サラに見上げられながら島田が写真を出してきた茜にそう言った。

「着眼点がよろしいですわね。肩の辺りの血は別として胸の辺りの血はまったく別人のものですわ。しかも発見されたときはこのコートについていた血以外は現場に同じ人物の血液は一滴も落ちていなかったそうですの」 

 しばらく食堂は沈黙に包まれた。

「最近の殺し屋は清掃業務も兼ねてるのかね、ふき取るどころか血液反応もなかったんだろ?たぶん凄い掃除機とか持ってるんだろうな」 

 要の軽口だが、ピリピリとした空気に包まれていた。要以外の全員の意識がのんびりと年末のおもちゃ屋のプラモデルコンテスト向けのプラモ作りから本来の遼州同盟司法局員としての仕事にすり替わっていた。誰もが今度はラーナが端末のモニターを開くのを注視している。

 ラーナの目の前の空間に画像が映る。それは東都南部の港地区と埋立地の租界と呼ばれる遼南難民の居住区を写した地図だと分かった。

「良いかしら。この死体が見つかったのが港地区の北川町。そして先ほどの死体が見つかったのがそこから国道を車で十分ほど租界に向けて走った川村駅のガード下。そして他にも……」 

 茜の声にあわせてラーナが端末のキーボードを叩く。先ほどの7つの死体が港地区と租界の間の幹線道路沿いに次々と現れる。

「港湾地区か……一昨年まで続いた不況でつぶれた町工場に倉庫街。それに安アパートばかりの街だな。こんな死体が落ちていたところで見向きもされないような場所だ。発見できたのが奇跡的ですね」 

 カウラはそう言うと隣で放心したように地図を見つめている要に目をやった。誠も要がこの地図が浮かんだときから黙り込んでいたことを思い出して口を開こうとする要を見つめていた。

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