魔物の街 22
いつも隣の砂利の敷き詰められた駐車場に停められているカウラの黒いスポーツカーの隣に見慣れない白いセダンが停まっていた。
「じゃあ行くぞ」
すでにランは茜のセダンの助手席から顔を出していた。
「ったく餓鬼が」
そう言いながら要もいつもどおり後部座席へ体を滑り込ませた。そしてそのまま伸びた力強い腕が誠を車の中に引き込んだ。
「はい!行きましょう」
助手席に乗り込んだアイシャの声で車が走り出す。狭い後部座席。要が密着してくるのを何とかごまかそうとするが、目の前のアイシャは時々痛い視線を送ってくる。
「そう言えば島田はどうした?それとサラ」
要の声にアイシャが振り返る。
「ああ、スミスさんが車買ってその整備ですって。にやけてサラと出かけたわよ」
「好きだねえ、あいつも」
実働部隊第四小隊隊長ロナルド・J・スミス特務大尉は車好きとして知られている。特にガソリン車の使用が認められている東和の勤務は天国のようだと誠に話す姿はまるで子供だった。
特に彼は20世紀末の日本車。しかも小型で大出力エンジンを積んだタイプの車を探していた。先日誠も借り出されてネットオークションに常駐してなんとか落札した車が近々隊に送られてくると言う話も聞いていた。
「島田の奴、今日の仕事分かってるのか?」
要のその言葉に誠は不思議そうな顔を向けた。
「ああ、お前は知らないのか?今回の発見された死体と昨日の怪物の捜査は昨日の面子で追うことになったんだと」
その言葉にアイシャも振り向く。
「なによそれ。初耳よ!」
「だろうな。アイツが叔父貴に打ったメールを覗いてさっきアタシも知ったところだ」
要は軍用のサイボーグの体を持っている。当然ネットへの接続や介入などはお手の物だった。
「でも、誠ちゃんは大丈夫なの?」
今度はアイシャは誠に向かって話す。
「いやあ、どうなんでしょうね」
頭を掻く誠に昨日その手にかけた、かつて人間だったものの姿が思いつく。
「今度の事件じゃ茜やラン、そしてコイツが切り札なんだからしっかりしてもらわねえとな」
要の言葉に頷きながら、カウラはハンドルを切って保安隊の隊舎のある菱川重工豊川工場の敷地へと車を進めた。
「でも、あんなのと遭遇したらどうするわけ?茜さんの話では銃で撃っても死なないのよ」
アイシャの言うとおりだと誠も頷いて要を見る。
「アタシに聞くなよ。なんでもキムがいろいろ持っているらしいや。アタシも銃を叔父貴に渡してて今は丸腰なんだ」
「珍しいこともあるものだな」
皮肉めいた調子でカウラはそのまま保安隊の前の警備班のゲートに車を乗り入れた。




