魔物の街 23
雑談していた警備班員が顔を覗かせる。いつものようにカウラはそれを見て窓を開いた。
「ああ、ベルガー大尉。駐車場はいま満員御礼ですよ」
丸刈りの警備部員が声をかけてくる。
「島田か?」
そのカウラの問いに隊員は頷く。
「ったくアイツ等なに考えてんだか……」
要の声を無視してカウラは車を走らせる。駐車場が見える前から野次馬の姿が見て取れた。
「おい、停めれるか?」
そう言って要が身を乗り出す。そのままゆっくりと近づくカウラの車に気づいてブリッジオペレータの女性隊員が脇によける。
そうするとそこにはタイヤを外されてジャッキで持ち上げられた小型車が見えた。
「ちょっとそこに停めろ。降りるから」
要の言葉にカウラは車を停める。ニヤニヤしているアイシャが助手席から降り、誠も追い出される。そのまま見慣れない車に近づく要。
「おう、西園寺か。見ろ凄いだろ?」
取り付けようとする新品のサスペンションを手に得意満面のロナルド。だが要はそれを無視してエンジンをいじっているつなぎ姿の島田の後ろまで行き思い切り尻を蹴り上げた。
「痛て!」
「バーカ!いちいち喚くな!痛いように蹴ってるんだよ!」
要の声に飛び跳ねるように振り向く島田。隣に立っていたサラとパーラも振り向いた。
「ここは職場だ。仕事をしろ仕事を!」
「でもまだ始業時間じゃ……」
口答えをしようとするが要のタレ目の不気味な迫力に押されて島田は黙り込んだ。
「それに昨日の件で仕事があるそうだ」
車を奥に停めてきたカウラの言葉に島田は悟った。
「おい!お前等も壊さない程度によく構造を把握しておけ!後で細かい説明はするからな」
島田は周りで彼の作業を見ていた整備班員にそう言うとそのまま正門へと走り去る。サラとパーラもそれに続く。
「あらあら要ちゃんまじめなことを言うからびっくりしちゃったわ!」
手を合わせているリアナに照れたように頭を掻く要。
「その仕事を振ってくれる人が来たぞ」
カウラは白いセダンが散っていく野次馬達の間から現れるさまを見ていた。
「そうだな。どういう指示を出すか。実に見ものだ」
そう言うと要はそのまま茜達を無視してハンガーへと急ぐ。
「要ちゃん!おはよう!」
巨大な熊、グレゴリウス13世の背中に乗っている猫耳をつけた第一小隊二番機担当のナンバルゲニア・シャムラード中尉の言葉も完全に無視して要はそのまま歩き続けた。
「アイシャ。何かあったの?」
「知らないわよ」
心配そうなシャムの質問に困ったようなポーズをとるアイシャ。誠も要の気まぐれに気をつけようと心に誓いながらハンガーを目指して歩いた。




