魔物の街 12
「成れの果てですわ。法術適正者の」
そう言うと茜はガラスの窓の隣の出っ張りに携帯端末を載せた。開いた画像には女子高生とサラリーマン風の中年の男、そして小学生くらいの男の子の姿が写されていた。
「こうなってはどうするべきか分からないけど、この三人の遺伝子データと一致するサンプルが見つかっていますの。おそらくは……」
「おい、こいつはどこで見つかった……って聞くまでも無いか」
要の言葉に静かに頷く茜。東都港湾地区と租界で発見されたのだろう。相変わらず目の前の饅頭に手足がむやみに生えたと言う物体がうごめいている。その時、誠は気づいた。手にしていた剣から熱いものが手のひらを経てそのまま頭の先まで達するような感覚を。
「神前さんは何か気づいたことは?」
そう茜に言われて自然と誠は手にした刀を茜に差し出した。
「やはり待機状態に入ったようですわね」
茜はそう言うと口元に笑みを浮かべた。その視線は誠の手と握られた刀に向いていた。
「待機状態?なにか?この法術適正者の成れの果てを見てこいつがビビルと何かが起きるのか?」
そんな要の言葉を無視して茜は開いた端末を仕舞うとさらに奥へと歩き始めた。
「まだこんなのが続くんですか?」
島田は明らかに食傷気味で手を握ってくるサラと一緒に一歩遅れて誠達に続く。
隣の部屋は完全に金属のようなものが先ほどの強化ガラスの代わりに壁面を覆っていた。
「見えないわね」
アイシャがそう言うが、茜はその中央に覗き穴があるのを指差す。すぐに覗くアイシャ。だが、茜は中には関心が無いというように誠の手の中の刀を見つめていた。
「やはりなんか感じます。でも嵯峨警視正、なんなんですかこれは?」
誠は正直中にあるだろう人であった物体には興味が無かった。いや、興味を持たないようにしていた。あれが法術適正者の成れの果てと言うならば、誠が同じ姿を晒すことになっても不思議ではない。
あえて中を見ずに誠は茜を見つめる。
「そうね、自己防衛本能が形になったようなものと考えていただければ良いと思いますわ」
それだけ言うと茜はそのまま中身を見終えたアイシャの隣の出っ張りに再び携帯端末を置く。中を見終えたアイシャと要がこの中の物体に変わってしまった人間の身元を眺めていた。
「神前、お前の番だ」
中を覗き終えたカウラがそう言うので仕方が無く誠は覗き穴に目を近づけた。
しばらく、赤いものと黒いものがうごめいているような中の雰囲気にしばらく誠は黙り込んで目を凝らした。だが、次第にその形がはっきりしていくにしたがって再び震えのようなものが体を支配していくのを感じていた。




