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魔物の街 11

 一人歩いている要。茜はわざとランやラーナを壁にして誠達の足を止める。しばらくしてふと横を向いた要。そのまま手の後ろに組んだ両手を離し、静かに後ずさる。

「おい……なんだよ……なんだよこれは!」 

 これほどうろたえる要を誠は初めて見た。要はそのまま茜に飛びついてその襟首をつかむ。

「落ち着いてくださいな。要さん」 

 それまでは『要お姉さま』と呼んでいた茜が冷静にそう言って要の頬に手をやる。要は明らかに動揺し震えた両手で茜の襟を掴んで離せないでいる。

「びびらねーんじゃ無かったのか?」 

 そう言って笑おうとするランをにらみつける要。

「このちび!知ってたな!知っててつれてきやがったな!」 

 怒鳴りつける要。その時聞いたことも無いような獣の咆哮が誠達の耳にも届いた。要はそれを聞くと耳をふさぐ。そしてまるで子供のようにしゃがみこんだ。

「茜ちゃん。じゃあ行きましょう」 

 そのままアイシャが一人歩き出す。それにあわせてカウラも誠の肩を叩く。

「これも任務だ」 

 カウラの声で気を取り直した誠は刀を袋から取り出して鞘を握る。振り返るとサラと島田が不安そうに誠達を見つめていた。

「大丈夫よ。技術者の方々も見てる代物よ。噛み付いて来たりはしないわよ」 

 そう言って進んでいたアイシャが立ち止まった。カウラは警戒したように歩みを止める。

「悪趣味ね」 

 アイシャはそう言い切ると誠を見つめて笑った。

「悪趣味ですか……」 

 そう言ってカウラの横を抜けて誠はアイシャの隣に立った。そして強化ガラスの中にある黒い塊に目をやった。

 はじめは何がそこにあるのか分からなかった。正確に言えばそれは誠の思いつく生物のどれとも違う形をしていて種類や名前という定義づけが難しいからだろう。それはあえて言えば海胆か海鼠と考えれば分かりやすいが、海胆や海鼠が吼えるわけも無かった。

 丸い、巨大な塊、肌色のその物体から何かが五、六本突き出すように生えている。その生えているものが人間の手や足と似ていることに気づくまで数分かかった。そしてその丸い脂肪の塊は細かく震えながら床をうごめいていた。その表面に見えるのは目のようなもの、口のようなもの、耳のようなもの。そしてところどころから黒い長い毛が伸びているのが分かる。

「茜さん……クバルカ中佐……」 

 その物体から目を離すことができた誠は近づいてくる二人の上官に目をやった。二人とも腕組みしたまま黙って誠を見つめていた。

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