魔物の街 13
じっと目を凝らして、そこに人影があるのを発見して大きく息をする誠。さらに集中して覗き穴を見つめる。手にした刀が熱く感じられてくる。
そこにはズボンをはいた上半身裸の男がいた。その男からは黒い見たこともない種類の煙が立ち上っている。
「見えるだろ?」
ランの言葉に誠は集中して中の男を見つめる。両手を挙げた男が、そのこぶしで自分の頭を叩いた。そのこぶしは頭蓋骨を砕いてそのまま頭にめり込む。血が吹き上げ、辺りを赤く染めた。
思わず目をそらす誠。
「何が見えた?」
再びランが聞いてくる。誠は答える代わりに再び中を覗き込む。
男の自分の頭にめりこんだこぶしが黒い霧に覆われている。その霧は頭の傷跡から血に代わって吹き上がり、すぐに頭を覆いつくした。うなり声を上げながら男が両手を差し上げるころには、へこんでいた頭の形が次第に元の姿に戻りつつあるように見えた。
そこで誠はそのまま覗き穴から目をそらして彼の後ろに立ち尽くしている茜の顔を見た。
「ご覧になりまして?」
茜の言葉。誠は感想を言おうとするが、口が震えて声にならなかった。
「あれが『仙』と呼ばれる存在だ」
ランの言葉にどこと無く悲しげな色があった。
「以前シュペルター中尉から聞いたんですが『仙』て……」
そう言って誠はランを見つめる。
「不老不死。年をとることも死ぬことも出来ない半端な生き物さ。多くは法術適正が高いから暴走すればその部屋のアンちゃんと同じようになっても不思議じゃねー。そう言うアタシもそうなんだけどな」
ランは笑った。その笑いには誠でも明らかに虚勢が見てとれた。
「若いままでしょ?良いことじゃないの」
そう言って見せたアイシャだが、にらむようなランの視線に黙り込む。
「この中の人にはもう理性も何もないんですわ。ただ壊したいと言う衝動があるだけ。鉛の壁に覆われて干渉空間も展開できず、かといって餓死も自殺も出来ない……」
茜の言葉はあまりにも残酷に中のかつて人だった存在に向けられていた。
「じゃあ、僕も……」
「おい!ラーナ!」
要がそう言うと一人端末をいじっていたラーナに詰め寄る。小柄なラーナが跳ね上がるようにして目を要に向ける。
「テメエなんで今まで黙ってた!力を使えばこいつも……」
「それは無いですわ。神前曹長の検体の調査では細胞の劣化は見られていますし、あの忌まわしい黒い霧を出すような能力は持ち合わせていないですもの」
茜の冷たい声に要はラーナから手を振りほどく。
「これは、確かに他言無用だな。まあ誰も信じる話とは思えないが」
カウラはそう言うと複雑な表情の誠の肩に手を乗せた。




