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赤い赤い赤い。


私は火の粉が散る道をひたすらに走っていた。炎を操る芸当など私が持つはずがない。炎はクラインが司る3大元素の1つ。


住民を避難させる転送魔法も炎を鎮火させる魔法も私は使えない。

ああ!まただ!!

私の魔法はすべてを無の魔法ばかり!枯らしてばかりだ!土を作り水をやり、手入れをしなければ花一輪も咲かせてやれない。


「ハーマー!!!」


「ちょっとキミ!ストップストップ!」


腕を掴まれ、ぐんっと体がしなる。

こいつは、マッシュルームの隣にいた護衛の…腕を掴まれるまで気づかなかった。


「えー、嘘でしょ。民兵は何してんのコレ。外から入ってきたら意味ないじゃん」


「離せ!」


ジタバタと暴れ、手を振りほどこうとする。しかし、掴まれた手は離れない。相当な力で握りしめているようだ。力が腕を圧迫して痛い。


「ちょっと、暴れないで。ここから先は危ない。誰かを探してるなら、心配ない。次期司祭様が転送魔法で村の住人は皆避難させたから。だから、引いて」


「離せ!」


違う!私はその先は、お前なんかにはわかるはずもない!この苦しい叫びが


「ああ!もう、キミを思って言ってるんだよ!」


「煩い!!いいから離せ小童が!」


切羽詰まった顔でそう言うと、エルムは顔を歪めた。


「っく、悪く思うなよ」


小さくそう呟くと、ぐんっと私を引き寄せた。そして、首筋に空いてる手が向かう。


強制的に言うこと聞かせるきね。なんて、野蛮な


「きゃああああ」


咄嗟に私は悲鳴をあげた。隙を狙って手を振りほどく。腕を躱し、蹴りを一発腹に入れる。

まともに食らったがエルムは少しよろけただけだった。


「ああ、くそっ!待てや嬢ちゃん!」


走り去った翡翠色の髪を追い駆け出した。






ちっ、

俺は心の中で舌打ちをする。


男はすでに力に飲まれていた。炎に包まれその体は焼け爛れている。憎しみの強さでその体をふらふらと動かしていた。


もはや、手遅れか


力に飲まれた者はその力が尽きるまで永遠の苦しみの中を生きるしかない。


力を力で止めようとすると反発して2倍の苦しみになり、憎悪は増す。


「うがぁあ!」


その力は狙いを定めたかのようにフェルベメールに炎の渦が襲う。


なんと醜いのだろう。人の心を忘れ、憎悪に狂ったその魂が同じものとは考えたくはない。


「せめてもの情けだ。哀れな魂よ」


憎悪に狂った魂がすべてを壊そうなどと万事に値する、せめて苦しまずに逝け


「光の女神の名の下に、許しを、愛を与えられた哀れな魂よ。今、女神の身元に__________」



「やめなさい!!」


ペチンッ



死者への祝福。


光属性、それも女神の加護もちのみが使える光魔法。


いわば、魂の強制送還魔法だ。世界に許しを請うこともできず、全てを無に帰す。最低最悪、胸糞悪い魔法。





彼は何をやろうとしてる?永遠の許しを得られず心が無に還るまで懺悔と後悔の念しか与えられなくしてしまう魔法。


「お前は自分が何をやろうとしてるかわかっているの!!この無知な若造が!」


こんなの死者への冒涜だ!

加護者ならこの声が聞こえないの?


「なっ、」


頬を叩かれた彼はただ呆然としていた。


「加護者ならこの声が聞こえないの!こんなに苦しんでいる魂に死の救済なんてそんなの身勝手よ!光の女神の使者なら使者らしいもっと知識を持ちなさい」


そう言い切ると私は未だ力を暴走させた彼の元へと足を進める。


「待て、行ってはダメだ!死んでしま______」


その後姿が誰かと重なった。これは、


「フェル、大丈夫かい?あ、気づいた」


顔を上げるとエルムの心配そうな顔があった。


「とりあえず、一旦ここを離れるよ」


あとから追いかけてきたエルムはへたり込むフェルにそう言った。有無を言わさず、担ごうとするエルムにフェルは言った。


「いや、ここでいい」


「…あ、そう?」


思ったよりも冷静な声にエルムは息をついた。


こいつは自分が思ってるより出来た人間じゃない。誰かが助けてやらないとすぐ壊れちまう


「よもや、私が誰かから説教を貰おうとはな」


立ち上がると、恐怖することなく進む翡翠色の後ろ髪を見つめた。


「声か…」




男の目の前に立つと手を広げた。


「ハーマー!私の声が聞こえる!!」


炎が私を襲うように繰り出される。しかし、私に当たることはない。

すべてを失ってないことに私は安堵する。


「戻ってらっしゃい!私の元に戻ってらっしゃい!!!」


『痛い、苦しい、悲しい、憎い、悔しい、死にたい、殺したい、嫌だ、許さない、許せない、守れなかった、守りたかった、褒めて欲しかった、愛して欲しかった、認めて欲しかった、兄より優れていなくても、たとえ弟であっても、除け者にされていたとしても、愛していて欲しかった、これで愛してくれると思っていたのに、誰も私を見ない、誰も私を認めない、誰も私を評価しない、優れている者が憎い、認めなかった者が憎い、愛をくれない者は嫌い、認めてくれない者は嫌い、何をしてでも、認めてもらえた、愛してくれた、彼女は、私を愛してくれた、たとえ偽りでも、答えたかった、守りたかった、彼さえ現れなければ、すべてうまくいっていたのに…、やつが憎い、憎い、許さない、』


流れ込んでくるのは、歪んだ愛の行き着いた先だった。

わかってる。彼だって望んでなったわけじゃない


「っ!私がすべて許します!!私がすべて受け止めます!今度は私が彼を愛すわ!!!だから、戻ってらっしゃい!」


私を飲み込むように、炎の渦が私へと向かう。


「うぐっ」


終わらない、終わらない深い深い闇

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