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カツン


そんな音で私は目が覚めた。

またネズミたちが隅を走り回っているのか。

それともまたお客さんか。

目を擦りながら起き上がる。

岩と岩の隙間から日の光が薄く部屋を照らす。


「ハーマー…おはよう…」


背伸びをしいつものように挨拶をするが返事はない。


「……ハーマー?」


胸騒ぎがした。

見慣れた部屋の風景だが違和感が拭えない。


闇の女神の神殿は確かに暗闇しかない。

岩でか辿れられた神殿は周りに草木が蔓延り一見女神を祀る神殿には見えない。中は暗く冷たい岩の神殿。神秘的なまでに彫られた彫刻も暗闇の中ではその美しさを発揮できない。


ヒンヤリするその闇に何か異物でも入り込んだのだろうか?盗賊や旅人が休憩という名目で恐れもせずこの神殿を使用する時がある。気づいてないのだろうけど。

何の害もなければ昨日のようにそのまま知らんぷりの時もあるがハバネロの時のように拾うこともあった。

しかし、今回異物感はいつもと何かが違った。むず痒く暖かい。だが、調子に乗って揚げ物を食べ過ぎてしまったムカムカ感と布団はあったまっているはずなのに急速に冷えていく足のような不快感を覚える。


「……げぇ、加護もちきてんの」


カエルを潰したような顔になったのは言うまでもない。


加護持ち。それは、女神から愛された者に送られる証。女神たちが産み落とした我が子たちに贈る愛の証。

愛を受けたものたちは、女神が司る加護を受けることができる。その者に力を与え時に奇跡を呼び勝利を呼び同胞たちの歓喜を呼ぶ。

しかし裏を返せば厄介な代物この上ない。女神の勝手な送りのもは時にその者の生を脅かす。

それは、私たち女神にも言えること。


「しかも、光の加護じゃん。笑えないよー…あっはははっ」


私は腰に手を当て高笑いをすると、手で目を覆い項垂れる。


光は苦手なのよねぇ……ほんのちょっとだけ





ブーツが大理石の音を鳴らす。

複数と聞こえる靴の音とカシャカシャと剣を揺らす音。

いつもと違うことは、暗闇ではなく光に照らし出された神殿の姿だ。


「へぇえ!闇の女神を祀る神殿だからもっと殺伐としたものかと思ったら、こらまた大層なもんで」


感心したように彼は声を漏らした。

光の玉が彼に映し出すのは白い大理石に幻想的に彫られた彫刻の数々。暗闇では決して見ることのできない闇の神殿には似つかわしくない風景。

しかし同時に違和感を覚える。


闇の女神は聖書では6番目の創造神の娘として綴られている。

1番目の女神が現世に降り立ち、地上に水、炎、土、風が生まれて初めて影として闇が現世に身を潜めたのだと。闇は現世に狂気を産み落とす。誰からも嫌われた死の象徴だ。

だが、この神殿は…


「光の神殿より豪華じゃん」


「エルム。滅多なことを言うもんじゃない」


「だって、本当のことじゃないっすか」


ヘラヘラした顔でフェルと隣を守るように歩く騎士がエルムと呼ばれた彼一喝する。


「ふんっ、光の神殿が劣っているだと?貴様の目は節穴か!寒く冷たい暗闇の中ではこの彫刻は生きはしないわ!!誰が見誤ってこんなものを闇の祠になど作ったのか…気が知れん!そもそも光のめ_________」


「うへぇ、また始まっ「ああ、これほどまでの彫刻は見たことがない。…少しもったいないな」…あらまぁ」


フェルが何かを褒めるなど珍しい。


「だが、女神様からの使者として仕事をしに来ただけだ。私語はいらん」


その瞳で睨まれれば誰だって黙りますよ。


「ついたな」


その言葉で重苦しかった空気が一気に感激に変わる。


祀られるのは1人の美しい女性。黒い大理石で彫られており瞳にはルビーがはめ込まれている。

真っ白い神殿に真っ黒い女神の像。しかし、両手を広げており、女神の表情は穏やかだ。


極め付けは祭壇に飾られた花束だった。それも1つではない。中央にはオレンジ色を主としたリング状のフラワーデザインから野原で摘んできたであろう花まである。その数は祭壇を埋め尽くすほどだった。

よく見ると祭壇の下に後から誰かが書き綴った魔法陣がある。察するに保存魔法だろう。


フェルは皆より一歩前に出た。そして、膝をつく。


「闇の女神よ、我が名はフェルベメール!光の女神の神言よりこの地に馳せ参じた。どうかいるのならば我が声に答えてほしい!」


読み上げられたのは、つまらない言葉。ありきたりな言葉。でもその言霊は誠意というものが伝わってくる。表裏なく言葉のままに己を役目を忠実にこなす。彼は光の女神を敬愛している。


ルビーの瞳を通して神殿を見渡す。


「ここの祠におられると聞いていたんだが…」


それにくらべて…


冷めた目で向けた先には、

立ち上がり、問いかけるように前へと進みでる。じっちゃん隊長。


わざとらしく祭壇の花を無造作に手で払いのけた。その瞬間花は無残にも黒く炭になっていく。保存魔法区域から離れたせいだろう。魔法はあの祭壇上のみ発動するらしい。


「いや、言葉と行動があってないよ!

仮にも女神の神殿を荒らすとか、敬意ってもんを払えよ!!」


みんなが私のために飾ってくれた花束なんだけどなぁあああ!!!


「光の女神の神言により、此方を訪ねた!我らは貴女様を迎えに馳せ参じたのだ!!どうか!光の女神の御身の前に!」


冷たい空気が神殿をそっと囲う。



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