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お茶会は交流の場としての役目をきっちり果たし終わりを迎えた。少しずつ人も減り、日が傾きほんのりオレンジ色になってきた頃彼は焦った様子でその場を踏んだ。


キョロキョロと誰かを探しているようだった。そして、彼女に焦点を合わせると堂々たる面持ちで近づいていく。走ってきたせいで汗が頬を流れサラサラな髪が少し張り付いている。


彼女も彼に気づいたようだ。

彼は彼女と向き合うと、真剣な顔で何かを言った。ツンとした表情をしたまま彼の言葉に耳を傾ける彼女。一言、彼に返すとスタスタと歩き出した。少し弱気に着いていく彼。


の、後ろでこそこそしながら見て見ぬ振りをしようとする2人の男女がいた。


「おやおやー?何をこそこそやっているのかなー?」


雰囲気をぶち壊すようにやってきたのは。


「静かにするっす!シーさんここは気づかないふりして見守るのところっすよ」

「そうですよ!ここは見守るのが1番ですよ」


目をキラキラさせて、ニヤけ顏が止まらないアイシャとハイロード。

ディモンシーも負けず劣らずたまらなそうな笑みでにこりと笑う。


「そうよね、見守るのが1番よね」



しばらく、歩くとふと彼女が立ち止まった。耳を凝らせばお茶会の楽しげな笑い声が聞こえてくる。


「……」

「……」


目線の先には手を掴み、男の顔で彼女を見つめる彼がいた。


「カンナ…昨日はすまなかった」


「なにがだ?」


彼女にピシャリと言い放った。睨む彼女は剣幕な表情で彼を見つめ返す。


「っ、俺はカンナと「…下界に出ることは簡単なことではない。商人ともなるとその難易度は爆発的に高くなる」


彼になにも言わせまいと、彼女が彼の言葉を止める。


「この意味をきっとお前は理解した。だから、答えられなかったんだよ。無理もない」


その目には、明らかに失望と悲しさが秘められていた。


「違う!!!」


響き渡るほどの声。彼女がびくつく。こんな彼は見たことがない、目を丸くする。


「俺の意見は俺が決める!誰にも指図はされない!!」


「……っ、うるさいっ!」


しかしその気迫にも負けず彼女は声を張り上げる。


「その覚悟を俺は決めてきたんだ!カンナ!」


「…っ」


しかし、彼の勢いは止まらない。


「1人商談をこなし、強く生きるお前に俺は惚れたんだ」


綴られる甘すぎるほどの甘々な愛の言葉。彼女は俯いてしまう。


「…きっと、今の俺はカンナにとって不満ばかりだろう。だが、それでも


俺はお前と生きたいんだ」


きっと、この場に誰かがいたら彼女たちの心臓の音が聞こえてきてしまいそうなほど。

そう、聞こえてきてしまいそうな…。





「……………………………………………………………………………

っっ、…早く、くっついちまえよお前らぁ」

「……我慢するっすよ」

「正念場ですよ」


手に汗握るドキドキ展開には…感じられない。カルーヤを知るアイシャたちにとって、カンナを知るディモンシーたちにとって焦れったい間でしかない。


なんとも緊張感のないディモンシーたちをよそに彼女が顔を上げる。


「ばかっ、バカ!!3、30過ぎのおばさんだぞ。そ、そんなこと!!」


真っ赤にした顔で、まとまらない言葉が飛び出す。


「俺はこれでも今年で104になるが、…人族とエルフでは認識が違うのか?何がそんなにダメなんだ?歳…服装が…いや、髪型か…?もしや、顔なのか?いや、カンナに限ってそれはないな。人族の男性しかも年上はこのような場合どうする。花束…いや人族だとなんだ?キスかそれともハグか?いや、流石にやりすぎか……いやまて、まだ押しが足りないということなら………」


彼が彼女に近づく。彼女は彼が近づくたびに下がる。


「カンナ…」


肩を掴まれ、硬直した彼女に彼は優しくキスをする。そう、大切にしたいという気持ちが触れた瞬間甘く伝わってしまうほどの優しいキスを。


「本気なんだ…。こんな俺では嫌か?」


カンナの顔が真っ赤に染まる。

パクパクと口を動かす。





「……………で、なんであんなラブラブなのに喧嘩したの?」


「それは、カルーヤたいちょーが意気地なしで、女心が全くわかってないのがいけないんですよ」


プンプンと怒るアイシャ。

「…あれっすよ。すぐ答えなれなかったんですよ」


「うん、なんとなく想像通りだわ」


質問に答えくれたアイシャとハイロードだが、一連の流れを見ていれば、カルーヤな乙女心をわかっていないとわかる。むしろ、少しずつ茶番が焦ったくなっている。


皆思うだろう、もう早くくっつけよ。


「……」


カルーヤの熱い視線は余すとこなくカンナに向けられていた。わなわなと口を必死に動かす。


「……外の……甘く…い」


「なんだ、よく聞こえない」


「外界の世界はお前が思っているほど、甘くはないぞ。並大抵の覚悟では生き残れないと思え!!!」


「ああ、覚悟はできている」


「エルフというだけで交渉がうまくいかないかもしれない!」


「ああ」


「全てが嫌になる時が必ず来るぞ!それでもお前は外界に行きたいと思うのか!!わ、私と!!」


「ああ」


どんな言葉を投げかけても帰ってくる言葉はYes。一瞬の迷いもない。ここからの答え。


「っ!お前のそういうところが心配なんだ!」


耐えきれなくなった彼女は瞬く間に彼から視線を外す。


「なにを心配する必要がある?むしろ、そんなことを心配してくれてたのか。流石は俺が選んだ人だ。俺のことをよく理解している」


顔を近づける彼は彼女の瞳を捕まえた。そして、


「頼もしい限りだな」


ふふん、満足げな表情だ。


「ほんとは、言いたくてたまらないくせに。カンナは恥ずかしがりだな」


さすがの、彼も彼女の気持ちに気づいたのか安心しきった顔で笑う。


「上等だぁあああああああ!!死ぬまで、一緒だからなぁあああああああああ」


ぱしっ、と彼の手を掴むといつもの男前の彼女で叫んだ。ありったけの声で。


「っ、ああ!!」


ディモンシーたちが見たのは誰も見たこともない満たされた笑顔で笑うカルーヤだった。


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