フォックスロット1APE訓練小隊
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雷太「おっ、ムナカタ遅かったな♪」
伊達「もう、こっちは始めていたぞ」
カオル「遅くなりました」
手にジュースを持ち、カオルは慌てながら、空いている席に座る。
隣にいるのは恭香、小声で
恭香「検査…大丈夫だった?」
カオル「ありがとう、全然問題無いって」
カオルは、先ほどの母達とのやり取りを飲み込み、笑顔で恭香に答えた。
ショーン「さて、カオルも合流した事だし、議論は後回しにして、あらためて乾杯を♪」
カオル「議論?」
エレノア「それは後で、乾杯しましょ」
ミカ「そうだね♪」
カスミ「待ってたんですよ♪」
ヒロノブ「その割には、ほとんど食べちゃったけど(笑)」
伊達「気持ちの問題だよ(笑)」
赤磐「よし、乾杯の音頭はショーンがやれ!」
ショーン「おっ、了解です」
ショーンが高々と紙コップを掲げる。もちろん、未成年なので酒類ではなく、ファストフード店のソフトドリンク。
単なるジュースではあるが、今の彼らには、ささやかではあるのだが、
それでいて自分の転機を祝う、記念の乾杯だ。
ショーン「国連軌道宇宙軍、任官を祝いまして…かんぱーい!!!」
「かんぱーい!!!!」
それぞれがそれぞれに、手にした紙コップを掲げ、任官を祝う。
和やかな雰囲気ではあったが、それぞれの顔には、任官に対する緊張と不安、
そして「兵士」としての覚悟が見え隠れする…。そんな複雑な想いを誰もが胸に秘めていた。
カオル「ところで、議論って何の事?」
赤磐「俺は細かい事ぁ気にすんなって言ったんだけどな(笑)」
豪快に笑う赤磐を尻目に、エレノアがカオルを真剣に見詰める。
エレノア「カオルの意見が聞きたかった。この任官、…おかしいと思わない?」
カオル「えっ?」
カスミ「何故我々だけ任官されたのか?って、ちょうど話題になってたのよ」
カオル「だって、リスキー・ビスキー所属だから…じゃ?」
伊達「答えが出ない疑問は、討論すべきじゃないって、エリーに言ったんだけどね」
苦笑する伊達を遮るエレノア。
エレノア「多分、重要な事だと思うの。何か…そう感じるのよ」
エレノアが主張している疑問とはこうだ。
何故、四日市東高校の生徒だけが選抜されたのか。
何故、四日市東高校の中でも、優秀な奨学生がたくさんいるのに、一年生の比重が大きいのか。
そもそも、何故、護衛艦リスキー・ビスキーの人手不足を、幼年兵で補充するのか。
年はとっても、熟練の退役軍人が「腐るほど」いるはずだ。
そして…、
エレノア「私の情報だと、護衛艦リスキー・ビスキーには、APE1個小隊が配備された。
コールサイン、【ジュリエット2】小隊。亜宇宙戦術空母群旗艦、キング・アーサーの精鋭部隊が」
カオル「ふわぁっ」
カスミ「良くそんな所まで調べましたわね」
エレノアの情報量に感嘆するカオル達。
しかし、エレノアは誉められているにもかかわらず、
それを無視しながら言葉を続ける。
エレノア「本来、私達みたいな幼年兵扱いは、実戦部隊の補助やサポートを行う役目」
伊達「そうだな」
エレノア「だけどカオル、私達それとは全く関係の無い、独立部隊で編成されるのよ」
カオル「ど、…独立部隊?」
伊達「私とエリーの二人は、リスキー・ビスキーの【CIC】要員として既に、レクチャーが始まっている」
CICとは、亜宇宙戦術空母にも組織されているCDCの、戦艦や護衛艦バージョンである。
「コンバット・インフォメーション・センター」略してCIC。
空母はCDC、戦艦はCIC。呼び名が違うだけで、内容は同じ。
ブリッジなどの操船部門とは完全に独立させた、情報知能部門であり、
艦隊運用上では、そこに艦隊司令部や作戦総司令が設けられる部所の事である。
エレノア「そこで聞いちゃったの」
伊達「機密漏洩に抵触するから、私はエリーを止めたんだがな(笑)」
エレノア「カオルが!みんなが心配なの!
幼年兵だけで組織された訓練小隊なんて、おかしいと思わない!?」
カオル「僕ら?僕らだけで小隊が組織されるの?」
コクリとうなづくエレノア
エレノア「…【フォックスロット1APE訓練小隊】。ここにいるみんなの小隊よ」




