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3話 怖すぎた初めての救急

<登場人物>


*浄南病院研修医1年目*

・纐纈桜:主人公.A大学出身.北山田高校出身.

・箕浦健史:A大学出身,桜と一瞬恋愛関係になりかけたが桜に振られた.北山田高校出身,桜と同じ塾出身.

・秋間拓弥:A大学出身,高校時代桜と塾も一緒だった.西又高校出身.

・藤原琴海:B大学出身,北山田高校出身.言い方がキツくて桜は苦手.

・大輪田祐之:C大学出身,西又高校出身.第一印象よりは気さくだけど内弁慶.


*浄南病院研修医2年目*

・長瀬菜子:やる気なし系で病院で韓国ドラマ見るくらいの人.

・角田遊星:髪を脱色しているほどチャラい.


*その他*

・美絵里:桜の大学の親友.

研修医の仕事って,何が1番必要だと思う?


救急外来で来た人に最初に話を聞いたり検査を入れたりすること!


それを,ファーストタッチって言うんだけど,これが救急での研修医の全ての仕事と言っても過言ではない.


逆に言えば,救急以外の仕事はほとんど大したことがなかった.


「今週から4週間,消化器内科のローテーションさせていただきます纐纈桜です!よろしくお願いします!」


研修医は全ての診療科に回って,そこから最終的に研修医を終えてから決定していくこともあって,ここでサボっても意味がない.

私は消化器内科からローテーション(ローテ)することになっていた.


消化器内科の1番の仕事は,"内視鏡"の仕事,所謂"胃カメラ"や"大腸カメラ"を行うこと.

消化器内科ってさ,外科っぽいこともやるけど,内科だし,内科のことを勉強しないといけなくて.手技もどの科の先生もやれないくらい難しい,けどやりがいがある仕事だと思ってる.

正直,私も憧れてはいるんだけど…


「纐纈さんね,よろしくね」


すごく優しい先生ばっかりだ…!でも,逆に言うとなんか…


…菩薩?そうしてないと仕事なんてできないよとでも言わんばかりの疲れ?

私の体力ではできそうにないと思うんだけど,どうなんだろう…


消化器内科の先生方はみんな優しいけど,研修医を構ってる暇はないって感じで,私には見向きもしなかった.


「自主勉強していた方がいいかもしれないな…」


医局に戻って,前に買った参考書を読もう!





そんなこんなで今日が初めての準夜勤の日.一緒にやるメンバーが…


角田先生と,外科の加藤先生.


研修医枠,完全にハズレじゃない?でも,あくまで私よりも1年も先に働いてるし,"先輩"として,聞かないといけないことは聞かないと.

外科の先生は,香水の匂いがプンプンしている系の,どちらかというと角田先生に似た感じの雰囲気.他の人からは『チャラい見た目の割には真面目だよ』とは言われてたけど…

とりあえず,救急外来に着いたら,看護長?っぽい人が前に出てお話しするところだった.


「今日は4月20日,当直帯,主直医は加藤先生で研修医は角田先生,準夜勤で纐纈先生です.看護師はホワイトボードにある通りです.引き継ぎはウォークインで1人,45歳男性の発熱です.検査は大体済んでおり,帰宅の方針になると思われます.病床は10床空いていますので,入院となる患者さんの受け入れ制限は不要です.」


引き継ぎってこんな風にやるんだ,へー.


「角田,発熱患者帰しておいてー」

「ういっす」


加藤先生と角田先生は結構仲が良さそう.私も,初対面の加藤先生に挨拶を…


「今日,準夜勤として入ります纐纈桜です!よろしくお願いします!全く救急に入ったことがないので何もわかりませんが,教えてください!」

「はーいよ」


…うん,軽いね!ノリが!


そんなこんなで,30分後くらいに救急車の電話がかかってきた.


『38歳男性,ラーメンを啜っているときに頸部痛を発症.』


「若い頸部痛だってよ,受けるから纐纈さんがみてよ」

「は,はい!」


え,頸部痛?

救急外来が全くと言っていいほどわからないから,この2週間弱でできるだけ救急外来の本で勉強してきたつもりだった.でも,頸部痛なんて項目,私が読んだまでのところには載ってなかったよ?


「つ,角田先生,こう言う時にどうすればいいんですか?」

「え,それは自分で考えてみなよ.初めての患者だろ?」


そんな答えなんて求めてない!!!

それに,本に載ってないようなリアルな医療とはまた別だと思うから,ちゃんと何をやってるか勉強したいのに…


「ほら,とりあえず問診が大事.カルテは少なくとも『主訴』『現病歴』『既往歴』『内服』『バイタル』だけでも書かないといけないからね」

「は,い…」


救急隊からの電話が来て10分くらいしてから,救急外来に入ってきたその患者さん.

かなり痛そうだけど,痛みで話せないくらいじゃなさそう.


「えっと,初めまして,私は救急の医師の纐纈と申します.聞きたいことがあるのですがいいですか?」

「あ,はい.イデデデデ」

「あの,今日首が痛いってことでしたが,どのタイミングで痛くなりましたか?」

「ラーメンを啜った時からです.別に首は動かしてないんです」

「えっと,このようなことは初めてですか?」

「初めてです…」

「今までに大きなご病気をされたことはありますか?」

「腎動脈解離による腎梗塞です…」


腎動脈解離の既往がある?

この病気っていうのは,太い動脈の皮がめくれて,そのせいで他の臓器が影響し,下手したら死に至る病.この人の"腎梗塞"の意味は,"腎動脈"の皮が剥がれたせいで,血管が詰まってしまったことが影響し,2つあるうちの片一方の腎臓が死んでしまった状態ということ.38歳でなったことがあるのは,流石に若い感じがする…

違和感はそれだけだけど,でも首の痛みとの関連性がよくわかんない.

検査だって,私これが初めてなんだけど.


「角田先生,検査ってどれがいいですかね?」

「好きにすればいいよ」


投げやりすぎるだろ!!!!


「じゃあ頸部CTを入れたいのですが」

「何を疑って?」

「ないとは思いますが,腎動脈解離の既往があるので大動脈解離とか?」

「んーまあそれならいいかな.ならここに説明を書いて」


言われた通りにオーダーを入れる.

あと,カルテを書かないと.あとはバイタルもみて書かないといけないのに,確認忘れちゃった!

バイタルは,血圧,体温,脈拍,呼吸数,酸素飽和度(SpO2/サチュレーションとも呼ばれる)のこと.身体につけたモニターに体温以外は全て載っている.


…いや,もうまずは病歴とかを書いて進めないと!


そんなことをしていたら,救急隊の人が入ってきた.


「浄北救急隊です〜どこにお連れしたらいいですか?」


ストレッチャーという,ベッドに患者さんは乗せられながら,救急隊のおじさん達がゾロゾロ入ってくる.患者さんは若そうで,「お腹っ!痛いっ!」と叫んでいる.


あ,あ,あ,

新しく入ってくるなんて聞いてないし,なんならさっきの頸部痛のおじさんのカルテもまともに書けてない.検査もCTだけでいいのかもわからない.次の腹痛の人の検査も,どうすれば…


角田先生はこれも知らぬ間に来ていた眩暈できた男性の対応をしていた.

加藤先生は外科の仕事の方に行ったのか,目の前にいない.


「纐纈先生,見られるのはあなたしかいないですよ!」


救急の看護師にも言われる.

頭が真っ白になる.


…一度,深呼吸だ.

腹痛の人を見るのは時初めてだけど,本で見た.採血検査で入れる項目とか自信ないけど,それでも見るべき項目はなんとかわかる.


「わかりました!」


ゴールデンウィークには研修医枠が一人になる.なんとかやるしかない!!



_________


「やっと一息ついた…」


気を利かせてくれた角田先生が,近くの寿司屋の出前を頼んでくれて,休憩所に海鮮丼を準備してくれていた.

気づけば21時.


あれからもひっきりなしに患者さんは来て,救急外来に来た人で,救急外来のベッドの8割を埋めていた.


正直,ここまで大変だとは思わなかった.

昔聞いたのは,来る件数は大分少ない方だよ,とは聞いていたし,他の研修医の準夜勤でも2〜3件だったって言ってた.私,6〜7件だけど?


初めてのこのタイミングで,カルテなんてまともに書けるわけもなく.

あーあ,初めに来てた頸部痛のおじさんのバイタル書けてないな…


そんなことがちらつきながら,海鮮丼を食べているその時.



「大変!泡吹いてる!!!!痙攣してる!」

「セルシン1Aすぐに用意して!造影CTいくよ!」

「死んじゃう!心臓が止まる!!!」



_____たった,1分程度の出来事だった.

その声を聞いた瞬間,私は海鮮丼を置いて救急外来に走った.


誰…?誰のことなの…?


AEDの音声指示が鳴り響く中,その中心にいたのは,


さっきの頸部痛の,おじさんだった.

次回は9月9日更新です.

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