↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
30/31

29話 明らかな差別

<登場人物>


*浄南病院研修医1年目*

・纐纈桜:主人公.A大学出身.北山田高校出身.

・箕浦健史:A大学出身,桜と一瞬恋愛関係になりかけたが桜に振られた.北山田高校出身,桜と同じ塾出身.

・秋間拓弥:A大学出身,高校時代桜と塾も一緒だった.西又高校出身.

・藤原琴海:B大学出身,北山田高校出身.言い方がキツくて桜は苦手.

・大輪田祐之:C大学出身,西又高校出身.第一印象よりは気さくだけど内弁慶.


*浄南病院研修医2年目*

・長瀬菜子:やる気なし系で病院で韓国ドラマ見るくらいの人.

・角田遊星:髪を脱色しているほどチャラい.人情厚い面もあるが桜はCPA事件をきっかけに余計に嫌いになった.

・安曇眞彦:資格大好き人間.司法試験合格している.面倒見がいい.

・山田恭介:態度も体格もデカい人.面倒見がいい.野木先生と仲が悪い.

・佐藤柚紀:通称ゆき先生.桜の飲み友達.腎臓内科志望.


*浄南病院上級医*

・野木先生:外科の先生.桜を無視する系のパワハラ系上司.院長のコネ持ち.

・芝浦先生:呼吸器内科の先生.丁寧に教えてくれる.

・七森先生:腎臓内科の先生.桜を見守っており,優しい.


*その他*

・山下君:桜の幼馴染.よくゲームで一緒に遊んでる

・川端さん:ゆき先生と一緒に飲む友達.浄南病院の受付をしている

________あの喘息の患者さんの一件があってから,自分なりに咀嚼してから,私は研修医を総括する事務の人にメールをした.


…本当は直接話すべきなんだろうけど,事務さんは私達よりも早く帰るし,私が救急ローテ中ってこともあって,救急から離れられないし,どうしようもない.


そのメールは,本当に長く,そして内容は重いものだった.


『12月31日の件について


私は,大晦日の当直はこのままではできそうにはありません.


野木先生から,下記にわたることをされ,患者さんに迷惑をかける可能性が高く,私にはその責任は負えないと判断したからです』


そう始めた文章には,今までのことを全部書いた.


項目に分けて,もう今までの酷いことから全て,耐えられないってことを.


病院としては,問題になる方がまずいって判断するはず.


これでも動かないのであれば,私,続けられるのかわからない.



こんなメールを書いてる私の心理状態なんて,良い訳もない.ずっと,胸の辺りが重く感じた.





________そんなことをしてても,時間は過ぎていく.


メールに関して,返信が来た.


2日後だった.


『時間を頂き,事情を詳細に確認させてください』


日時は来週の木曜日になった.


_____私のこの気持ち,本当に届いて欲しい.



前回の救急ローテとはまた違う,なんともいえない気持ちがずーっと残っていた.





________そんな,事情聴取の日の2日前,


そう,2回目の火曜日の午前中が,来た.





「あ,纐纈さん.私,野木ちゃんから一緒に救急やってって言われたから,私に仕事振っていいよ」


…私と一緒にいたのは,



藤原さんだった.



…待って,『野木ちゃん』?どこまで仲良くなってるの.それも先輩,男性相手に『ちゃん』付けなんて,私にはできないよ?


それに,直接頼まれて救急をやりに来たって?ええ…



確かに仕事はこれで楽になるけど,そういうことじゃない.


ただ単に,自分と話して楽な人を連れてきて,私との関わりを減らすための策略じゃん.


なんなら,私の立場は?


ねえ,私って,何のためにいるの?


藤原さんのPHSの音が鳴る.


「はい〜,え,脳出血が来るんすね,わかりました!」



…絶対,野木じゃん.


私には死んでも連絡をしなかったのに,藤原さんには積極的にするんだね.


私にだってプライドがある.


この,救急ローテをやっている研修医としての,プライドが.


藤原さんの仕事だって,私のものだったはずだったのに.


「藤原さん,脳出血くるの?」

「私やるから触んなくていいよ」


…あ.そっか.


心の中がヘドロのようなもので埋まっていく感じがした.


________これが差別だって言わずに,何だっていうの.


私の気持ちは?


藤原さんも藤原さんだよ.本人に悪気はなくとも,『自分は好かれてるから触るな』ってことでしょ?


私の立場は?


握り過ぎた拳のせいで,爪の痕が残った.





何もいう権利がない,ただの空っぽな私が,"救急"という場所で,転がっていただけだった.





____私の事情聴取についての詳細な話が入ってきた.


『研修医担当の先生と院長も来てもらいます.時間は17時半で』


研修医担当の先生_____それは,外科の部長でもある.



外科の部長にも,私は良い思いは持ってない.


そりゃそうだ,私は追い出されて困ってても,私に怒るばかりだった人.





今まで,野木のことをどんだけ訴えても,何も変えてこなかった人.



野木自身は来ないみたいだけど,私にとってはムカつく人に対して,この話をしないといけない.



……もし,もしだよ?


これで,私の色んなことに対しての悲鳴を無視されたら,私はどうなるの?


逃げ場はないの?助けてくれる人なんて,いないの?


誰も助けてくれなかったら,私って,どうすればいいの?




_____ああ,この世に生きているから逃げられないってなるかな.




今いる研修医寮は,5階.


ベランダの方をじっと見る.


ベランダからは浄南病院が見えていて,夜だけど入院患者がいるから煌々と光っている.


車の音が,する.


暴走族かもしれない,そんなバイクの音.


「飛び降りたら,どうなるだろうな…」


5階からだったら死ねないな,大怪我になっちゃうな.


…でも,病院に行かなくて,働かなくて良くなるかな.


下を歩いてる人にぶつかるかな.


うちの病院だと対応できないってなると,他の大きな病院に運ばれるかな.


そしたら,他の病院で働いてる同級生に,バレちゃうな.




…これ以上のことを考えるのはやめた.

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。