25話 "治療"というもの
<登場人物>
*浄南病院研修医1年目*
・纐纈桜:主人公.A大学出身.北山田高校出身.糖尿病内分泌内科に決める.
・箕浦健史:A大学出身,桜と一瞬恋愛関係になりかけたが桜に振られた.北山田高校出身,桜と同じ塾出身.
・秋間拓弥:A大学出身,高校時代桜と塾も一緒だった.西又高校出身.
・藤原琴海:B大学出身,北山田高校出身.言い方がキツくて桜は苦手.
・大輪田祐之:C大学出身,西又高校出身.第一印象よりは気さくだけど内弁慶.
*浄南病院研修医2年目*
・長瀬菜子:やる気なし系で病院で韓国ドラマ見るくらいの人.
・角田遊星:髪を脱色しているほどチャラい.人情厚い面もあるが桜はCPA事件をきっかけに余計に嫌いになった.
・安曇眞彦:資格大好き人間.司法試験合格している.面倒見がいい.
・山田恭介:態度も体格もデカい人.面倒見がいい.野木先生と仲が悪い.
・佐藤柚紀:通称ゆき先生.桜の飲み友達.腎臓内科志望.
*浄南病院上級医*
・野木先生:外科の先生.桜を無視する系のパワハラ系上司.院長のコネ持ち.
・芝浦先生:呼吸器内科の先生.丁寧に教えてくれる.
・七森先生:腎臓内科の先生.桜を見守っており,優しい.
*その他*
・山下君:桜の幼馴染.よくゲームで一緒に遊んでる
・川端さん:ゆき先生と一緒に飲む友達.浄南病院の受付をしている
私,糖尿病内分泌内科に進みます_____
あの時,言ってしまった!!!
他の科見てからでも良かったのでは!?なんて,今更思ってしまってるけど!!!
…ま,いっか.
A大学からの帰り道.
内科に進むことをしっかり意識したこともあって,私はちゃんと勉強する必要が出てきた.
それはいいし,今から本屋に行くつもりだけど…
…私,ひょっとしなくても,早く決めすぎてる!?
で…でも!仕事の内容からしても私は別に後悔は…
し,してないもん!!!
____そして,血液内科のローテも,あと3日で終わろうとしていた.
…ガチで,入院患者さんゼロ!?
一人で科を回している関係上,不在の時期に誰も患者さんがいないようにされていて,その前後も患者さんがほぼいないそうな.
それも,緊急で入ってくる患者さんも,科の特性上あまりいないし…
この時間は,ほとんど本を読んで終わっていた.
本も読み疲れて,少し医局にある自分の机で伏せて寝ていた.
そんな時,安曇先生に突然話しかけられた.
「纐纈先生,来週から循環器内科に回るって話でしたよね?」
「は,はい,そうです」
私の返事に,何かの本を取り出しつつ私の元に来た.
「来週,私も回ってるから,よろしくね.あと,ローテの時に読みやすい本を教えておくから,良かったら貸すよ」
そして取り出されたのは,割と最近発売された循環器の本だった.
「え,いいんですか!?良さそうだったら私も買います!」
「いいと思うよ.私はこれで理解できたし,結構しっかり色々書いてあっていいよ」
パラパラとめくる.確かに読みやすそう.
あとでAmezonでポチるか.
「安曇先生がいて,私,心強いですありがとうございます…!」
「先輩としてこれくらいはね」
本当に,安曇先生には感謝しかない.
___そして,循環器内科が5週間のローテだった.
安曇先生に教えてもらった本を片手に,カテ室(カテーテル検査や治療を行う部屋)に赴く.
今日は,初めの日であり,朝にカンファがある日.
「纐纈先生には,Stanford Bの大動脈解離の人と,下壁梗塞の人,心不全増悪の人の3人を見てもらおうかな」
「はい!」
どの病気も,もちろん国試で勉強した疾患だからわかるけど,具体的にどんな治療をするのか,という細かいものは習わない.例えば,大動脈解離の人には痛み止めと安静,酸素とかって話は勉強するけど,いつまでなのか,酸素を流す基準は?とか,どれにしても勉強しない.
とりあえず買った本を読む.
とはいえ,本を読めばすぐに治療がわかるか?っていうと,そうじゃない.
イメージだと,例えば数学の公式を覚えても,その後の応用編になると手に負えなくなるみたいな,そんな感じ.
国試の時に読んだ本とは違って,薬の名前とか量とかのことが書いてあるけど,実際の医療の場面でどう使われてるのかは結構意見が分かれるところでもあるし…
研修医という立場上,方針も自分では決めてはいけない.全部,主治医の先生と相談が不可欠.
「あの,先生…」
循環器内科の先生達は厳しい人が多いから,聞くにしても,理解をある程度して聞かないと,「本で調べて」と言われるだけ.だから,本で調べてもわからないところだけ聞こうと思ってる.
…思ってるんだけども.
「どうした?」
「あの,大動脈解離の人なんですが…」
「ああ,あの人ね」
わからないところをリストアップする.
もう既に行われている治療も含めて,箇条書きにして書いてるけど,あまりにも多い.
「…まあ,大動脈解離なんてStanford Aはうちの科の範囲じゃないし,Bは寝てるだけだから,そこまで細かく考えなくていいよ」
…え!?質問の回答これだけ!?
余計に治療がわからなくなっていく.
…まあ,私の今後必要な範囲を超えてるし,もう諦めよう.
_____循環器内科のローテは全部で5週.このうち,安曇先生と被るのが2週.
後になって思うのが,1つ上だけの先輩に,質問を色々するのは本当に困るからやめた方がよかったなって思ったけど,この時は循環器内科の先生に聞くよりも聞きやすい安曇先生に色々教えて貰っていた.
「安曇先生…わからないことが多くて…」
「循環器の先生には聞いたかな?」
「答えにならない返答されたり,説明もよくわからなかったり…」
私の言葉にうーんとしながら,例の本を持ってきた.
「とりあえず,ざっくりと勉強するのなら,この本だけでいいと思うんだけど.確かにいきなり臨床に生かすのは難しいと思うし,症例を見ながら同じような患者さんに当てはめるっていうのが1番いいと思う.
あとは,今の患者さんにはいなさそうだけど,不整脈とかも救急で見逃さないように勉強するのもいいかもね.私は心電図検定とか受けようと思って.」
…流石資格集めが趣味の先生なだけある.
心電図検定,ね…
本当は症例に合わせて教えて貰いたかったけど,循環器の先生を見てると難しいよね.
『心電図検定』_____この検定が,妙に胸に残った.




