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24話 見学,自分の方向性

<登場人物>


*浄南病院研修医1年目*

・纐纈桜:主人公.A大学出身.北山田高校出身.

・箕浦健史:A大学出身,桜と一瞬恋愛関係になりかけたが桜に振られた.北山田高校出身,桜と同じ塾出身.

・秋間拓弥:A大学出身,高校時代桜と塾も一緒だった.西又高校出身.

・藤原琴海:B大学出身,北山田高校出身.言い方がキツくて桜は苦手.

・大輪田祐之:C大学出身,西又高校出身.第一印象よりは気さくだけど内弁慶.


*浄南病院研修医2年目*

・長瀬菜子:やる気なし系で病院で韓国ドラマ見るくらいの人.

・角田遊星:髪を脱色しているほどチャラい.人情厚い面もあるが桜はCPA事件をきっかけに余計に嫌いになった.

・安曇眞彦:資格大好き人間.司法試験合格している.面倒見がいい.

・山田恭介:態度も体格もデカい人.面倒見がいい.野木先生と仲が悪い.

・佐藤柚紀:通称ゆき先生.桜の飲み友達.腎臓内科志望.


*浄南病院上級医*

・野木先生:外科の先生.桜を無視する系のパワハラ系上司.院長のコネ持ち.

・芝浦先生:呼吸器内科の先生.丁寧に教えてくれる.

・七森先生:腎臓内科の先生.桜を見守っており,優しい.


*その他*

・山下君:桜の幼馴染.よくゲームで一緒に遊んでる

・川端さん:ゆき先生と一緒に飲む友達.浄南病院の受付をしている

____今日は,私の母校,A大学の附属病院に行く日.



内科に行くと決めた私は,とりあえずアポを取って,見学の日を決めていた.



その時に2つの科を1日で見学できる,ということを聞き,これは2つ回らないとだな,なんて考えてた.


その上で候補に上がってくるのが,呼吸器内科,血液内科,腎臓内科,糖尿病内分泌内科,神経内科.


心筋梗塞のカテーテルで頻繁に呼ばれる循環器内科は嫌すぎるし,消化器内科はカメラばかりで,画面酔いしそうだし忙しいから初めから候補に入れてない.


で,残った5つだけど,呼吸器内科はローテしてて楽しかったし,見学は確定.


血液内科は,うちの病院の先生が何やってるかもわからない程度にはちょっとよくわかんないし,パス.


腎臓内科は透析とかで忙しそうだし,一旦パス.


神経内科は脳梗塞で忙しそうだし,意味わかんない疾患が多そうで,これもやめておこうかな.


こうやって消していって,残るは糖尿病内分泌内科.


女性率が高いらしいし,実際そこまで緊急で呼ばれる疾患は少ないからいいかもしれない.


そう思って,2つ目の見学先を決めた.




なんで大学病院の見学をしないといけないのか.それは,医師の面倒くさい事情があるから.


地域や診療科によりけりだけど,医師が勤める病院って,初めのうちしか決めることができなくて,「ここに行け!」と指示されたところに行く感じだから,結構転勤が多い.


その指示する役割が,『医局』と呼ばれる所.大学がメインで作られる組織みたいなもの.


この地域は医局に入らないと,今後の病院勤務がまともにできなくなるから,医局に入る以外の選択肢がない.


この辺りだと,A大学が1番強くて,他にB大学,F大学,G大学がある.


その医局ってのもかなり難しくて,例えば浄南病院だと,呼吸器内科と血液内科はF大学の医局,他の内科はA大学の医局,みたいに入り乱れてる.


A大学の医局を考えてるのは,自分の卒業大学の方が多くの有名な病院があって,将来的に困らない気がしてるから考えてるって感じ.



こんな事情だから,大元の病院が雰囲気が良かったり,どんな感じの進路があるのかを見るのにはかなり有用ってこと.




____というわけで,大学病院に着いたんだけど…


「纐纈さんですね,こんにちは」

「こんにちは,今日はよろしくお願いします!」


午前の見学は,呼吸器内科からだった.


呼吸器内科の教授は今年変わったばかりみたいで,私の知らない先生だった.


すごく穏やかな先生だな…


「実際に行ってる病棟業務でも見ましょうか」

「はい!」


案内してくれる医師15年目くらいの先生についていく.


連れて来られた場所は,内視鏡室だった.


「見たことあるかもしれないけど,ブロンコね」


ブロンコ___それは気管支鏡検査のこと.簡単にいうと,肺に繋がる管にカメラを入れて見たり,組織を取ったりする検査.


この処置は,何度見ても自分でできない気がしてくる…


画面酔いはこっちでは特に起こらなかったけど,正直今どこにカメラがあるのかとかどうしたらわかるの!?って感じ.


カメラが体にぶつかるだけで血が滲むところに,どうやって入れられるのか____


「何度見ても難しそうです…」


そんな言葉を私が零したら,


「みんなできるようになるし,大丈夫!」


とか,にこやかな笑顔が返ってきた.




_____そして,昼食の時間になった.


教授の奢りで,学生時代によく通ってた食堂でご飯を食べる.


「どうだった?呼吸器内科は」


そんなことを言われ,思わず本音が漏れそうになったけど,


「学ぶことが多そうで,すごいなと思いました」


とか,答えた.


本音は『あんなのできるわけないじゃんか!?忙しそうだし大丈夫かな!?』だった.


教授がにこやかで,すっごくいたたまれない気持ちになる…


そんな,午前中だった.





午後は,糖尿病内分泌内科.


ここは,糖尿病をメインに,他の疾患,例えば甲状腺とかを見る科.


医局にいる先生の隣で,仕事の様子を見ていく.


その先生は,今日が病棟の担当だった.


「はい,6階の方ですね,ID教えてもらってもいいでしょうか….はい,はい…」


私のことなど,全く目に入らないようだった.


でも,落ち着いたら,私に説明してくれた.


「まず,インスリンってどの程度知ってます?」

「すいません,国試で習ったくらいなので,インスリンってものがあるってことしかわからなくて…」


そう私が言うと,自分の本棚から参考書を出してきた.


「これね,こんな感じで種類があって,その中でもこれだけの種類があって,使い分けは…」


こんなにインスリンの種類ってあるんだ.


使い方の違いすら,私は知らなかった.


でも,やってることは,呼吸器内科よりも"座学"感が強くて,聞いていて楽しかった.


「実際にこの血糖値だと,こんだけインスリンを変更すると,いい感じに血糖が下がってくれたりします」

「なるほど…」


簡単にメモを取りつつ,理解できないところは今度調べるか,くらいで考えてた.


先生の雰囲気は,正直呼吸器内科の方がよかった.


でも,先生じゃなくて,仕事の内容の良し悪しが今後続けていくのに大事な気がする.




___私,糖尿病内分泌内科に決めた.




帰り際,教授と対面する機会があった.


「どうでしたか?」


そんな問いに,私は教授の目をしっかり見て,宣言した.


「私,糖尿病内分泌に惹かれたので,専攻させていただきたいです!」


私の宣言にびっくりした様子ではあったけど,最終的には「待ってますよ」と返事してもらえて,このまま私は帰った.

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