22話 一筋の光
<登場人物>
*浄南病院研修医1年目*
・纐纈桜:主人公.A大学出身.北山田高校出身.
・箕浦健史:A大学出身,桜と一瞬恋愛関係になりかけたが桜に振られた.北山田高校出身,桜と同じ塾出身.
・秋間拓弥:A大学出身,高校時代桜と塾も一緒だった.西又高校出身.
・藤原琴海:B大学出身,北山田高校出身.言い方がキツくて桜は苦手.
・大輪田祐之:C大学出身,西又高校出身.第一印象よりは気さくだけど内弁慶.
*浄南病院研修医2年目*
・長瀬菜子:やる気なし系で病院で韓国ドラマ見るくらいの人.
・角田遊星:髪を脱色しているほどチャラい.人情厚い面もあるが桜はCPA事件をきっかけに余計に嫌いになった.
・安曇眞彦:資格大好き人間.司法試験合格している.面倒見がいい.
・山田恭介:態度も体格もデカい人.面倒見がいい.野木先生と仲が悪い.
・佐藤柚紀:通称ゆき先生.桜の飲み友達.腎臓内科志望.
*浄南病院上級医*
・野木先生:外科の先生.桜を無視する系のパワハラ系上司.院長のコネ持ち.
・芝浦先生:呼吸器内科の先生.丁寧に教えてくれる.
・七森先生:腎臓内科の先生.桜を見守っており,優しい.
*その他*
・山下君:桜の幼馴染.よくゲームで一緒に遊んでる
・川端さん:ゆき先生と一緒に飲む友達.浄南病院の受付をしている
麻酔科ローテが,やっとの思いで,終わった.
本当に苦痛の2ヶ月___外科も含む___だった.
もうこれ以上思い出したくない…
そんな嫌なローテの次は,
元々気になっていた,放射線科だった.
私はとにかく座学が得意.
頭を使うことは,受験時代にもわかってたことだけど得意.
逆に手技が苦手なのは,自分でもよくわかってたけど,麻酔科で名実ともに証明されてしまった.
放射線科は主に読影といって,CTやMRIの画像を見てモノを見つけるっていうことをやってる.画像を見つつ頭を使うことではあるし,面白そうとは思ってた.
でも,読影だけじゃなくて,放射線治療やカテーテル治療も病院によっては行わないといけない.
秋間は放射線科を専攻したいって昔から言ってたけど,あの人の場合は放射線治療(癌に対して放射線を当てて治療する)がやりたいらしくて,むしろ読影やカテーテル治療は嫌いだって言ってた.
…まあそう考えると,やりたいことばっかりやるのは難しいなと思ったり思わなかったり.
ただ,やりたいことだけやるってことが無理だってわかってるし,もしよかったら放射線科もいいのかもしれない.
…なんて,ぐちゃぐちゃ言ってるけど,今はそれよりも大切なこと.
放射線科の部長から出されてるローテ前の予習問題を解くこと!
そのためにも,医学書が売ってる本屋に行かないと.
____私の家の近くには,大きな本屋があった.
時々,近くに行く時は必ず医学書コーナーに立ち寄ってる.
薬の本とか,救急の本とか.欲しいなと思い始めたらキリがないし,ある程度勉強することを絞らないと,オーバーワークになる.
とりあえず,CTの本で読みやすそうな本,ないかな…?
今回部長から出されたものは『CT値とは何か?』というもの.
勉強してる人からすると,そのふんわりした課題は,なんと答えればいいかがわからなかった.
CT値っていうのは,CTの画像の色の値みたいなものではあるんだけど,それをどう説明すればいいのか?
実際の値(水だと0)がどんなものを表すかとかなら,それこそ国家試験の時に習ったから,それを見れば詳細もわかるんだけどな…
…あ,この本読みやすい.
CTの読み方の本だった.大体はなんとなくわかることばかりだけど,知らないことも書いてあるし,すごく読みやすい.
全部を読むことを目標にするか!
そのまま,その本をレジに持っていった.
________そして,その日が来た.
「纐纈桜です,よろしくお願いします!」
放射線科の部長の先生は,かなり厳しそうだった.
あの大輪田が「あの人怖いわ」とか言ってたし,ちょっとドキドキしながら対面.
「何かあれば安藤先生に聞いて.忙しいから.
毎日課題を与えるから,解いて後で答えを確認するから,やって」
「はい!」
「じゃあ早速予習の内容だけど…」
私が最終的に困って出した答えが,『X線の吸収値によって決まる数字』だった.
先生の言いたいことがよくわからなくてこの答えになったけど…
「これじゃない!じゃあ骨だとCT値は幾つなんだ!?そういうのが欲しかったのに!!」
「は,はい!勉強しなおします!」
その答えでよかったんかい!
___部長のキャラの濃さは,十分に感じられた.
でも,言い方のキツさに反して,私は嫌な気持ちにならなかった.
この差って,なんなんだろうな…
よくわからないけど,安藤先生に話しかけないと.
「あの,安藤先生,今日から2週間放射線科をローテします纐纈桜です」
読影で忙しそうな安藤先生は,のんびりとこっちを見てきた.
「纐纈先生,よろしくお願いします.
ちなみに,放射線科は考えてますか?」
うんと,専攻する気があるのかってことだよね?
「放射線科に興味あります!」
「なら,この症例の画像を見て,今日14時までに解けるだけ解いたら,また答えや解説をするから」
そう渡されたのは,10例くらいある症例の羅列.主訴と簡単な病歴,見てほしい画像の日付だけ書いてある.
「わかりました!」
私の心は,踊っていた.
________うーん,この症例って…
色んな可能性とか,疾患とかが頭に浮かびながら黙々と問題を解いていく.
問題がたくさんある.部長と安藤先生からの問題が用意されている.
さらに,解説までしてくれる.
この上ない喜びだった.
私の持っているCTに関する本を持ちつつ,調べて裏紙に読影結果を書いていく.
今まで見たことのない画像とか,たくさん見える.
「すごく,楽しい…!」
一人,地下の読影室でカルテと睨めっこしていた.
そんなこんなで,12時には既に全問を解いていた.
___意外に暇な時間が多くあるぞ?
そういえば最近,救急の本とかもあまり読めてない.
救急の本を自分なりにまとめたりしようかな.それならいい感じのノートも買いたいな…
そんな風に思ってたら,安藤先生が近づいてきた.
「先生,どう?」
「全問できました!」
「ええ!?もう?」
めちゃびっくりするじゃん.
みんな,こんなもんじゃないの?
「なら,答え合わせを,早いうちにしておきますか」
そう安藤先生が言いながら,私がどう読影したのか口頭で説明した部分に補足するように解説をしてくれた.
「___え,先生,すっごくできるね.びっくりしたよ」
本当にそう言ってる!?
私,今までそんなことなんて言われたことなかった.
「そうですかね?」
「今までの研修医の中で1番できてるし,センスあるよ」
そんなこと言われたら,照れちゃうじゃん.
「嬉しいです!」
「放射線科に入りなよ,本当に」
ベタ褒めされると,本当に麻酔科との落差が激しすぎて風邪を引きそう.
正直,私としても放射線科が今までで1番楽しかった,
ありなのかもしれないな,放射線科.




